ねこ
猫は好きなんですけど祖母が嫌いらしく、我が家の付近には猫が居ません…。
どっかに猫いねーかなー
いつもの帰り道。
今日は気づいたら恭が居なかったため、龍一人での帰宅である。
「何で恭ちゃん放って帰るかなぁ…」
ぶつぶつと文句を言いながら龍は鞄を振り回す。
「むー、むー、む~?ふっふ~ん♪どーうしてテーストはいーやなの~♪ボークはこんなに出来る子よ~♪っておよ?」
唸っていたはずが、途中から楽しくなってきたのか調子っ外れの歌を適当に歌っていた龍の視線が塀のとある一点で止まる。
「ねこっ!」
しなやかに伸びをしたのは綺麗な黒色の毛に青の目をした猫。
目を輝かせながら近づく龍をチラリと見た猫はそのまま昼寝へと戻っていく。
「うわー、こっち来ねぇかなぁ…煮干しとか鞄にー…入ってるわけ無いか…。」
ガサガサと鞄の中を引っ掻き回して見たものの、猫と遊べそうな物は何もない。
それでも諦めきれない龍は何とかして気を引こうと鞄に付けていたキーホルダーを揺らしてみるものの、すげなく無視される。
「んー…抱っこするには塀が高い……うーん………。」
無い知恵を絞りに絞っていると、不意に起き上がった猫が走り出す。
「わわっ!待って待ってタンマ!!」
慌てて鞄を掴み直し、猫の後を追いかけると、公園へと駆け込んでいくのが見える。
「あ、ここ俺ん家の近所じゃん!」
場所を改めて見直して龍は拍子抜け。
とりあえず中へと猫を追うと、猫は勢いもそのままに公園にあるベンチに寝転んでいる何かへとダイブする。
「んぐっ………。」
龍が追ってきた黒猫だけでなく、茶とらに白猫、果ては三毛猫にまで覆われている影からくぐもった声がする。
「うえっ?!ちょっ!大丈夫ですか?!」
慌てて走り寄ると、見覚えのある人物が起き上がった。
「あぁ、いつもの事なんで大丈………って龍?」
「恭ちゃん?!?!え、何してんのってかどうなってんの?!」
「あー………昼寝してたら猫に襲われた。まぁ、いつもの事だしな。」
「本当に恭ちゃん何やってんの…ってかその猫に好かれるスキル下さい!!」
「………寝るか?」
「答えになってない!!」