現文の谷セン
「はい、今日は山月記の続きです。えー、教科書の120ページを開いてください。今日は4日ですからー、出席番号4番、大原くんですね。5行目から段落の終わりまで読んでください。」
「はーい、えーっと―」
大原が読む中、自分には関係無いとばかりに龍は後ろを向く。
「音読ってめんどくせーよなー。」
「ん。」
「はい、そこまででいいです。大原くん座ってください。」
だらけていると、何時の間にか読み終わったらしく、一旦聞こえ続けていた音が途切れる。
とりあえず身体を龍が前に戻し、教室が一瞬静かになる。
「えー、ここから今日は学んでいくわけですが、あ、それよりも皆さんは既に気づいているでしょうが、私の車が…」
「うわ。でたよ車自慢。また長いよこれ。」
教室中が一気にげんなりとする。特に龍は顕著だ。
「ねー、恭ちゃん。ダルすぎる。」
同意を求めようと龍が振り向くと、そこにはいつもとは全く違う目をした恭。
「龍、今から俺には一切話し掛けるな。いいな?現文こそが至高の時間。」
「要するに?」
「俺はレベル上げに邁進する。邪魔すんな。」
「うえー。谷崎の自慢話をずっと聞き流すのも暇なのにー。何かしよーよー。」
「だから話し掛けるな。俺に構うな。何なら龍、寝ろ。」
「ういっす。」




