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はいそっ  作者: 相野仁
十一話
114/114

3

 全員が無事信任され、新・生徒会が発足することになった。

 生徒会室に行けば紫子さんと百合子さんのふたりがいて、三年生ふたりと内田先輩の姿がない。

 

「今日からこのメンバーで生徒会をやっていきます。よろしくお願いします」


 新・生徒会長のあいさつとともに俺たちは拍手をする。

 寂しく思っているヒマはなさそうだった。

 百合子さんがワタワタとお茶を淹れている。

 意外といえば意外だった。

 すごいお嬢様だから、お茶を自分で淹れたことなんてないと思っていた。

 彼女の姿を見ていると、紫子さんが笑う。


「あの子、生徒会に立候補すると決めてからあわてて練習をしはじめたのよ。まだまだ未熟だと思うけど、許してあげてね」


 なんだ、そうだったのか。

 そんな百合子さんは淹れたお茶をまず俺のところに運んでくる。

 そして水倉先輩、藤村先輩と置いていき、紫子さんと自分の分を最後にした。

 

「ど、どうぞ」

 

 百合子さんに促されてお茶を飲む。

 美味いことは美味いけど、何だか物足りない。

 いつの間にか、俺の舌が肥えてきたんだろうか。


「初めてとしては上出来ね」

 

 紫子さんがそう評価する。

 水倉先輩も藤村先輩もそんなはっきり物を言うタイプじゃないもんなあ。

 百合子さんはというとちらちら俺のほうを見てくる。

 俺の感想を聞きたいってことなんだろうな。

 

「美味しい。百合子さんが淹れてくれたと思うと、美味しさが三倍くらいアップだな」


「よかったです」


 百合子さんは恥じらいながらも喜んでくれた。

 イケメンが言いそうなセリフ、ずいぶんとサラリと出てくるようになったと我ながら感心する。

 英陵での暮らしも無駄じゃないってことだろう。

 こういうところが上達してどうするって話だが、ないよりはあったほうがいい。

 人間関係を円滑にするコミュニケーション能力も大切だからだ。


「生徒会の仕事を教えてもらえればと思うのだけど」


 紫子さんの方は早くも仕事をする気満々だった。


「相変わらずね、紫子さん。今日はゆっくりできる日なのに」


 水倉先輩が微笑む。

 ふたりはけっこう親しいのかなと今のやり取りで感じた。

 

「そうは言っても、わたくしたちは分からないことばかりだからあまり余裕はないでしょう」


 紫子さんはちょっとイラついているのか、少し早口になっている。

 正直かなり意外だった。

 もっと落ち着いた感じの女性だとばかり思っていた。


「そんなこと言っても、ほらあなたのことを知らない殿方がびっくりしているわよ?」


 水倉先輩がお茶目っぽく指摘し、俺の方をちらりと見る。

 つられて見た紫子さんの頬がさっと赤くなった。

 どうやら俺がいたことを失念していたらしい。

 

「こほん」


 ごまかすように咳払いしたのが何だかかわいらしく感じる。


「責任感があって仕事への意識が強いのは素敵なことだと思いますが」


「そ、そう?」


 フォローすると紫子さんは安心したようだった。


「ええ。上に立つ人って責任感あったほうがいいですよね」


「そうよね」


 紫子さんはうなずき、百合子さんが拍手する。

 先輩たちは苦笑していた。


「フォローが上手なのは素敵なことだけど、この場合あなたも大変になるのよ?」


「いいじゃないですか」


 水倉先輩に俺は笑顔を返す。


「みなさんだって俺に教えてばかりなのは大変だったはずなのに、いつもよくしてくれました。俺だって新しい仲間に、みなさんにしてもらったことを返していきたいと思います」


 みんなが黙ってしまった。


「あなたの勝ちね」


 紫子さんが小声で言う。

 勝った負けたという話じゃないと思うが、微笑むだけで何も言わなかった。

 俺はたくさんのものをみんなに受け取ってきた。

 俺がこうして過ごせてきたのは、周囲の支えがあったからだ。

 今度から、少しずつ返していければなと思う。

 来年になれば新入生たちも入ってくる。

 後輩たちのためにも、入学してくるかもしれない千香のためにも頑張っていきたい。

 ここからが新しい日々のスタートだ。

 よし、やるぞ!


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― 新着の感想 ―
[気になる点] このページだけではないですが、話の所々で桔梗院になったり、桐生院になったりしているので一度見直した方がいいと思います。 [一言] 続きが気になるので、更新楽しみにさせていただきます。
[一言] この後も気になって仕方がないです。 続編書いて欲しいです。お願いします。
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