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第9話:王宮に行っても、お昼寝の時間はありますか?


王宮の厨房を支配したカレーの宴も一段落。

幸せそうにお腹をさする王様や騎士たちを横目に、私はふにゃりとその場に座り込んでしまいました。

「ロンさん……。アオ君……。流石の私も、ちょっと疲れちゃいましたぁ……」

私は重たいまぶたをこすりながら、上目遣いで二人を見上げました。

「あの、お昼寝しても……いいでしょうか……?」

無邪気な瞳を潤ませてお願いすると、最強の竜二頭に、かつてないほどの激震が走りました。

「……ッ!! ジャンヌ、貴様……そんな顔で俺を見るなと言っただろうが!」

ロンさんは、あまりの尊さに顔を真っ赤にして片手で顔を覆いましたが、すぐさま私をひょいとお姫様抱っこしました。その手つきは、壊れ物を扱うよりもずっと慎重です。

「ああっ! 卑怯だぞ黒竜! ジャンヌ、俺の翼(布団)の方が絶対に寝心地がいいって! ほら、王宮の庭に最高に日当たりのいい場所を見つけたんだ!」

アオ君も慌てて寄ってきますが、ロンさんの冷たい視線が彼を射抜きます。

「黙れ、アオ。ジャンヌは今、静寂を求めている。……ジャンヌ、俺のコートの中で寝ていろ。誰にも邪魔はさせん。……たとえ王が来ようが、この国を滅ぼしてでも眠りを守ってやる」

「……ロンさん、国を滅ぼしちゃダメですよぉ……。あ、アオ君、マントの端っこ、少し貸してくださいね……」

私はロンさんの腕の中で、アオ君が差し出したフカフカの毛皮(※自慢の鱗から生成したもの)を抱きしめました。

「ふふっ、あったかいです……。お二人とも、おやすみなさい……」

スースーという可愛い寝息が聞こえ始めると、現場は一瞬にして「聖域」と化しました。

「……おい、アオ。足音を立てるな。羽音一つ立てたら……貴様の鱗を全部剥いでやる」

「わかってるよ! 兵士ども! そこをどけ! ジャンヌ様がお休み中だ! 息を止めてろ!」

ロンさんとアオ君は、寝ている私を囲むようにして、王宮の中庭に陣取りました。

周囲を固める近衛騎士たちは、「あ、あの伝説の竜たちが、まるでお守りみたいに……」と、遠巻きに拝んでいます。

結局、その日の王宮は「ジャンヌ様がお昼寝中につき、一切の私語と騒音を禁ずる」という臨時法令が出されたかのように、しんと静まり返ったのでした。

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