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第8話:カレーは平和の象徴。……おかわりは、並んでくださいね?


王宮の厨房は、今やかつてない熱気に包まれていました。

カレーの香りは、換気口を伝って王宮全体へ、そして鼻の利く王様や大臣たちの元へと届いてしまったのです。

「ジャンヌ、また妙な箱(アイテムBOX)から不思議な瓶を取り出したな? それはなんだ?」

ロンさんが、不思議そうに私の手元を覗き込みます。

「これですか? これは『福神漬け』というんですよ。カレーにはこれが欠かせない気がして……念じたら、いつの間にか箱の中にあったんです。うふふ、便利ですねぇ」

そう、私の【みたすもの】スキルは、私が「あ、あれが食べたいわ」「これを作りたいわ」と思った瞬間に、どこからともなく最高級の食材や調味料をBOXに補充してくれるのです。

「……ジャンヌ殿!! その、天界の香りがする煮込み料理を、私にも一口……いや、一皿いただけないだろうか!」

厨房の入り口には、さっきまで玉座で威厳を保っていたはずの王様が、スプーンを片手に駆けつけていました。その後ろには、よだれを垂らした近衛騎士たちが列をなしています。

「あら、王様。こんにちは。ええ、もちろんですよ。おかわりはたくさんありますから、皆さん、順番に並んでくださいねぇ」

「……おい、人間ども。ジャンヌを疲れさせるな。並ばない奴は、俺がこの炎で直火焼きにしてやる(ゴゴゴ……)」

「あーあ、王様まで来ちゃったよ。ほら、そこどけ! ジャンヌの特製カレーは、まずは俺たちが毒味……もとい、完食する予定なんだからよ!」

ロンさんとアオ君が、物凄い剣幕で王様たちを牽制します。最強の竜二頭に睨まれて、王様も「ひ、ひぃ……」と震えながらも、カレーの誘惑には勝てず、お行儀よく列の最後尾に並びました。

やがて、王宮の広場には長い、長い行列ができました。

「はい、どうぞ。熱いですから気をつけてくださいね」

私が一人一人にカレーを盛り付けていくと、一口食べた人々は皆、その場で膝をつき、天を仰ぎました。

「おお……これが……これが『竜殺し』の慈悲……!」

「辛いのに、なぜか涙が止まらない……。なんだか、故郷のお母さんを思い出します……」

いつの間にか、私は「恐ろしい女戦士」ではなく、**「胃袋を救うカレー聖女」**として拝まれるようになっていました。

「……ジャンヌ、もうBOXに食材がないのではないか? 少し休め。あとは俺たちが……」

ロンさんが心配して声をかけてくれましたが、私のアイテムBOXを確認すると、そこには「デザートのラッシー用ヨーグルト」が、山のように補充されていました。

「大丈夫ですよ、ロンさん。まだ『みたすもの』がいっぱいありますから。……あ、ロンさん、そんなにカレーを凝視して……また、あーん、してほしいんですか?」

「……っ!! ……そ、そんなことは言っていない! ……だが、まあ、貴様がどうしてもと言うなら……」

ロンさんがまた耳まで真っ赤にして口を開ける横で、アオ君が「ずるいぞ黒竜! 俺にもあーんしろ!」と叫び、王宮の厨房は今日も、平和で騒がしい香りに包まれるのでした。

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