第5話:あ、お友達ですか? よろしければ、一緒にステーキ食べませんか?
あらあら、まあまあ!せっかくの美味しい「あーん」の時間が、とんだお邪魔虫……いえ、お友達に遮られてしまいましたね。
街の外から響く地響きのような咆哮。ギルドの窓ガラスがガタガタと震え、冒険者たちが「ひ、ひぃぃ! また別の竜が来たぞ!」とパニックになっています。
「……ちっ、あのトカゲ野郎。しつこい真似を」
ロンさんは、口の中に残ったステーキの余韻を惜しむように飲み込むと、黄金の瞳に鋭い殺気を宿しました。
せっかくのジャンヌさんとの甘い時間を邪魔され、彼は今、最高に機嫌が悪いです。
「外、とっても騒がしいですねぇ……。ロンさん、あの方はどなたですか?」
私がのんびりと尋ねると、ロンさんは吐き捨てるように答えました。
「昔、縄張りを争ったことがある青竜だ。図体だけはデカいが、脳みそまで筋肉でできているような馬鹿だ。……ジャンヌ、ここで待っていろ。一瞬で消し炭にしてくる」
「まぁ、危ないですよ。……あ、そうだわ」
私はふと思いついて、食べかけのステーキが入ったお皿……ではなく、キッチンにまだ残っていた**「予備の特大ステーキ(鉄板ごと)」**を両手に持ちました。
竜殺しの肉体のおかげで、重たい鉄板も羽のように軽いです。
「私も行きます。お友達なら、ご挨拶しなくっちゃ」
「……おい、ジャンヌ!?」
ロンさんの制止も聞かず、私はギルドの扉をおっとりと開けました。
街の広場の中央には、翼を広げれば街区を覆い尽くさんばかりの、青い鱗の巨大な竜が鎮座していました。
「グオォォォ! 黒竜よ、隠れていないで出て……ぬ? なんだ、そのちっぽけな人間……むぐっ!?」
叫ぼうとした青竜さんの口に、私は**「はい、どうぞ!」**と、特大ステーキを鉄板ごと放り込みました。
ちょうど喉元を狙ったわけではなく、ただ「食べてくださいな」と差し出そうとしたら、勢い余って口の中に吸い込まれていったのです。
「もぐ……もぐもぐ……。……!? な、なんだこれは……美味い、美味すぎるぞ!? 聖域の恵みより美味いではないか!」
青竜さんの瞳が、ロンさんの時と同じように(あるいはそれ以上に)キラキラと輝き始めました。
「ふふっ。美味しいですよねぇ。ロンさんのお友達なら、私の友達も同然です。仲良くしましょうねぇ」
私がニコニコと青竜さんの鼻先に手を伸ばすと、背後から猛烈な勢いでロンさんが飛んできて、私を背中に隠しました。
「……おい、青竜! 貴様、俺の主をそんな目で見るな! その肉を食ったらさっさと帰れ!」
「な、なんだ黒竜……その姿は。……いや、それよりこの肉をもっと寄こせ! この『人間様』がくれるというなら、俺は今日から貴様の敵をやめて、この女の靴磨きにでもなってやる!」
「断る! ジャンヌの世話は俺一人で十分だ!」
最強の竜二頭が、私の目の前で「ステーキ」と「私のお世話係」を巡って、人間の姿で言い争いを始めてしまいました。
「あらあら……。ロンさん、お友達が増えてよかったですねぇ」
街の人々は、伝説の竜二頭をステーキ一枚で手懐けた私を見て、もはや恐怖を通り越して、拝むように膝をつき始めるのでした。




