第2話:お買い物は、命がけ(周囲の人が)
「あ、ロンさん。あの……視線がとっても痛いです」
私はロンさんの腕の中で、彼の黒いコートにすっぽり包まりながら呟きました。
街の大きな門をくぐった瞬間、道行く人たちが石像のように固まってしまったからです。
門番さんはと言えば、槍をガシャーンと落として、「ドラ、ドラゴンが……人間を食ってる……? いや、竜殺しの姐さんを誘拐したのか……!?」と、お口をあんぐり開けて震えています。
「……黙っていろ、ジャンヌ。貴様がそんな格好をしているのが悪い」
ロンさんはムスッとした顔で私を抱き直すと、街で一番高級そうな服屋さんへ、ズカズカと足を踏み入れました。
「い、いらっしゃいま……ひえっ!?」
店主さんは、ロンさんの放つ「触るな、焼くぞ」と言わんばかりの威圧感に、レジの後ろへ隠れてしまいました。
「店主。この女に、一番まともな服を。……肌が一切露出しない、鉄壁の守りの服だ。できれば、他の男が直視できないような呪いがかかっていれば最高だ」
「ロンさん、呪いは物騒ですよぉ。……あ、店主さん、こんにちは。すみません、なんだか騒がしくて。……わぁ、あちらのふわふわしたドレス、とっても素敵ですねぇ」
私がコートの隙間からひょいと顔を出して微笑むと、店主さんは真っ赤になって「は、はい! すぐにお持ちします!」と、先ほどまでの怯えが嘘のように走り去りました。
数分後。
私は、淡いピンク色のパフスリーブがついた、お花の刺繍入りのワンピースに着替えました。
「どうでしょうか、ロンさん? スースーしなくなって、とっても落ち着きます〜」
私がくるりと回ってみせると、ロンさんは一瞬、息を呑んだように目を見開きました。そして、すぐに顔を背けて、首のあたりまで赤く染めてしまったのです。
「……フン。さっきよりはマシだ。だが……その、似合っていないわけではない」
「あら、ありがとうございます。ふふっ、ロンさんはお世辞が上手ですねぇ」
「お世辞ではない! ……店主、この店にあるマントを全部持ってこい。上から重ねて着せる」
「まぁ、ロンさん。私、だるまさんになってしまいますよ?」
結局、ロンさんの「過保護スイッチ」は止まらず、ワンピースの上に、さらに厚手のストールを何枚も買わされてしまいました。
お支払いの時、ロンさんが懐から出したのは、見たこともないほど巨大な**「金の塊」**。
「お釣りはいらん。取っておけ。……今後、この女が来たら最優先でもてなせ。いいな?」
店主さんが「ひぃっ、はいぃ!」と涙目で金塊を受け取る横で、私は「ロンさん、お大福みたいで美味しそうな金ですねぇ」と、のんびり眺めていたのでした。




