第12話、大王イカさんの「ひとくちカット」
「アオ君、大王イカさんもカットしてアイテムBOXに収納しちゃいますね。流石にこの大きさでは……お家に入りませんものね」
私がのんびりと大剣を構えると、アオ君は「えっ、あ、ちょ、待て……!」と慌てて後ずさりしました。ロンさんに至っては、「……来るぞ。アオ、伏せていろ」と、悟りを開いたような顔で身を低くしています。
「ではいきますねっ! えいっ!」
本日二度目の「えいっ」。
再び、海が割れ、雲が散り、因果律さえも断ち切るような鋭い輝きが走りました。
――シュンッ!!!
目にも止まらぬ速さで振り下ろされた大剣の残像が消えたとき、そこには山のように積まれていた大王イカの姿はありませんでした。
あったのは、まるでお店で売っているかのように綺麗に整えられた、**「特大のイカの切り身」**の山です。
「わぁ、とっても美味しそうな白身ですねぇ。はい、収納しちゃいますね」
私が【みたすもの(アイテムBOX)】をかざすと、吸い込まれるように数千人分はあろうかという切り身が吸い込まれていきました。
「……おい、アオ。見たか。今、切り身になった瞬間、薄皮まで完璧に剥がれてやがったぞ」
「……ああ。黒竜、俺……もうあいつには一生逆らわねぇ。あの剣、イカを切った後、砂浜の砂一粒すら傷つけてねぇんだ……。精密機械かよ……」
ロンさんとアオ君は、もはや恐怖を通り越して、跪いてお祈りを始めてしまいました。
「あら、お二人とも。そんなに海に向かってお祈りして……大漁のお礼でしょうか? 信心深いんですねぇ」
最強の竜二頭が震えている理由が、まさか「自分の剣技」だとは露ほども思わないジャンヌさんは、ニコニコと微笑みながら言いました。
「ロンさん、アオ君。せっかくですから、このイカさんも使って、『イカ焼き』も一緒に作りましょうか。醤油の焦げた匂い、きっとロンさんも好きだと思いますよぉ」
「「……はいっ、喜んでっ!!」」
最強の従者たちが、これまでにないほどキビキビとした動きで調理の準備を始めたのは、言うまでもありません。




