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メイドコボルトは聖剣の主  作者: 未羊


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第7話 メイドコボルト、目的を果たす

 到着した街を見て、ククルは大はしゃぎである。


「うわぁ、ここが街なんですね。なんだかとってもにぎやかで、私、楽しくなってきちゃいます」


 フードをかぶりながらも、くるくると回って実に楽しそうに笑うククルである。その姿は、本当に子どもというくらいにはしゃいでいた。


「せっかくだし、俺がこの街を案内してやるよ。一人で歩くと迷子になるだろうし、悪い連中にも絡まれるだろうからな。それで、どこに行くんだい?」


 あまりにも無邪気なククルの姿に、ジャックはつい笑ってしまう。

 だが、先程の様子から目を離すのは危険と感じたようで、街の案内役を買って出ていた。


「うわぁ、本当ですか? いい人に出会えて、私ってばすっごく運がいいですね、うふふふ」


 ジャックの顔を見ながら、それは嬉しそうに笑うククルである。ククルのこの笑顔はなんとも破壊力が強すぎる。

 ところが、ジャックはおかしそうに笑うばかりで、なんともないようだった。


「まったく、すごいはしゃぎようだな。こういう場所は経験がないのか?」


「はい。私は今のお屋敷に勤めてそこそこになりますが、働くようになる前は小さな集落で暮らしていましたから。このような場所は初めてで、すっごくわくわくしてるんです」


 手を後ろで組みながら、ククルはそれはまぶしいばかりの笑顔で答えている。


「ははっ、なんか妹を見ているみたいな気分になってくるよ」


「ジャックさんって、妹さんがいらっしゃるんですか?」


「ああ、四つ離れた妹が一人な。今は遠くの街に住んでいるが、君みたいな感じでころころとした表情が可愛い子なんだよ」


「そうなんですね。きっと可愛らしい方なんでしょうね」


「ああ、とても可愛いよ」


 にこやかにしているククルとは対照的に、ジャックは可愛いといいながらもどこか表情を曇らせていたようだ。

 コボルト族とはいえど、ククルはその表情の変化を感じ取ってしまっていた。


「あ……。ごめんなさい、私ちょっと調子に乗り過ぎちゃいました。と、とりあえず、私はご主人様のお言いつけを早く済ませませんと!」


 ジャックの気持ちを察したククルは謝って話題をさっさと切り替えていた。さすがメイドというか、気遣いはばっちりである。


「いや、気にしないでくれ。俺が最初に話題に出したんだからな。……それじゃ、行くとしようか」


「はい」


 気を取り直して、ジャックはククルに街を案内することにしたようだ。


 案内をされるにあたり、ククルは改めて頼まれた物品のメモを取り出している。羊皮紙に黒のインクで書かれたメモには、何品か書かれているようだ。


「これが買い物のリストか?」


「はい。あの、分かりますでしょうか」


 ククルはジャックに尋ねている。


「ああ、それならこっちに来れば全部そろうな。ついてきてくれ」


「はい」


 ジャックはどうやら思い当たるところがあるらしく、ククルについてくるように伝える。ククルははぐれないようにしながら、必死にジャックの後を追いかけた。


 そうしてやって来たのは、街にある大きな建物だった。

 建物の入口には袋と丸いものが描かれている。


「ここは、話に聞く商業ギルドでしょうか」


「よく知っているな。そうだ、ここが商業ギルドだ。街にある多くのものはここに集まってくるからな。だから、そのメモの内容なら、ここで全部そろうだろうっていうわけだよ」


「なるほど、さすがですね、ジャックさん!」


 ククルは両手をしっかりと握りしめ、しっぽをぶんぶんと振りながら、耳も小刻みに動かしている。よっぽど感動しているのだろう。


「それじゃ、受付が空くまでそこに並んでいてくれ。俺は君を助けた際に飼ったフォレストファングを冒険者ギルドに見てもらわなきゃいけないからな」


「えっ、ちょっと、ジャックさん?!」


 誰も知らない場所に一人残されてしまい、ククルはしょぼんと耳としっぽを垂れさせてしまう。

 しかし、ここで用事を済ませなければ、魔王城に戻ることはできない。一人にされたからといって、落ち込んでばかりもいられなかった。


(よしっ。元々私は一人で用事を済ませるつもりだったんですもの。このくらいわけないですよ!)


 足を内またに構えながら、両手の拳を握って、列に並びながら気合いを入れ直していた。

 周りを見ると知らないものばかりで、ククルはつい目を奪われてしまいそうになる。


「おい、嬢ちゃん」


 急に声をかけられて、ククルは全身の毛を逆立ててしまう。


「は、はい?」


「ぼーっとすんな。列に並んでいるからって安心していると、どっからともなく物をかっさらわれかねんからな」


「は、はい! き、気をつけます」


 あまりにきょろきょろしていたために、後ろに並んでいたおじさんから注意をされてしまった。

 いきなり声をかけられたこともあって、ククルの背筋はピンと伸び切ってしまっていた。


「さっき一緒にいたのはジャックだろ。あいつが連れてきたやつに何かあっちゃいけないからな。とにかく周りを警戒しておくんだ、いいな」


「はい、ありがとうございます。ご親切にどうも……」


 見た目が完全に毛むくじゃらなコボルトだというのに、ジャックと一緒にいたためか親切にされてしまっていた。

 どうやら、あのジャックという男はこの街では信頼されている人物のようである。

 そのおかげでククルは問題にさらされることなく、無事に頼まれていた物品を購入することができたのだった。

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