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メイドコボルトは聖剣の主  作者: 未羊


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第45話 メイドコボルト、次の依頼を受ける

 治癒魔法を使ってヒーラとラーラ姉妹の母親の病気を治したククールだったが、まったく落ち着かない生活を送っていた。

 それというのも、治癒魔法の使い手は教会へと連れていかれるという話を聞いたせいだ。

 今のククールは聖剣の力で獣人に偽装はしているものの、教会が相手となればこの変身が見破られる可能性は高い。なので、どうにかして秘密を守り抜かなきゃならないと、気が気でない状態なのである。


『主、少しは落ち着いたらどうなのだ』


 朝食を食べ終わって部屋の中でカリカリとしているククールを見て、聖剣は思わずこんな声をかけてしまう。

 だが、聖剣がこんなことを言えば、ククールは頭に来たせいか聖剣に鋭い視線を向けている。


「誰のせいでこうなったと思ってるのよ。勝手に獣人の姿にした上に、二人に分裂させて……。挙句がこの仕打ち! ああ、私は普通にメイドをして兄弟たちの面倒を見たいだけだったのに、どうしてこうなったのよ……」


 天井を見上げるようにして、ククールは嘆いている。

 そもそもククールが望んでいたのは、本当に平凡な生活だ。魔族とはいえど、争いごとは正直なところ苦手なのがククールなのである。

 嘆いているククールの姿には、聖剣も困ってしまっているようだ。


『……主、本当に申し訳ない』


 ここまでギャン泣きされては、聖剣も反省せざるを得なかったようである。ククールに謝ってしまっていた。

 泣きやんだかと思えば、再びククールは聖剣を鋭い目で見ている。こういう時は、コボルトっぽい感じになるククールなのである。


「とりあえず、冒険者ギルドに行きましょうか。とにかく、教会に目を付けられる前に、何か対策をしなくちゃ……」


『本当に面目ないな』


 ククールは大きくため息をつくと、冒険者ギルドに向けて出かけていく。


 冒険者ギルドにやってきた。


「あっ、ククールさん」


 ククールの姿を発見した受付の女性が声をかけてくると同時に、ククールに向かって手招きをしている。

 ギルドに入るなりこんなことをされては、一体何なのだろうかと気になってしまう。

 ククールはよく分からないといった表情をしながら受付へと向かっていく。


「はい、昨日の依頼の達成報酬ですね。来たら渡すようにとジャックさんから伺っています」


「あっ、そういえばそうだったわ」


 ククールは昨日のラーラの依頼のことを思い出していた。よく思えば報告していなかったのである。

 ということは、ジャックは昨日のあの後、冒険者ギルドにやって来て話をしておいてくれたということだ。ククールは素直にジャックに感謝する。

 とはいえ、正直言って、この報酬を受け取ることにククールは躊躇した。というのも、ラーラたちの家族の現状を見たからだ。

 母親が病弱でかなり医者にも診てもらっていただろう。そのような苦しい状況の中で、自分に対して依頼を出すようなことしてきたのだ。


「ククールさん、気になさらないで下さい。これはギルドのシステム上仕方のないことなんですから」


 受付の女性に言われても、ククールは戸惑っているようだった。


「もらったお金をどう使おうが、私たちに口出す権利はありません。さっ、受け取って下さい」


 ここまで言われてしまえば、ククールは受け取らざるを得なかった。受け取らないことで受付の女性に迷惑がかかってはいけないと思ったからだ。やはり、魔族というのに考え方が少し特殊な感じである。

 受け取りにサインもして、ククールは報酬を受け取っていた。


「それで、ククールさん。何か依頼を受けていきませんか?」


 受付の女性はにこにこと笑いながらククールに話しかけている。女性の圧に、ククールは思わず引いてしまう。


「え、えと……何かいい依頼ありますかね?」


「それはありますよ。では、ご一緒させていただきましょう」


 女性は立ち上がると、依頼が貼ってある掲示板へとやってくる。ククールの隣に立ちがなら、依頼を一つ一つ説明している。

 どうして自分がここまでしてもらえるのだろうか。ククールはそのことに疑問を感じていたが、説明中なのでとりあえず黙っていた。

 結果、フォレストシープの討伐依頼を受けることにしたのだった。


「これを受けるんですか?」


「はい。もこもことした毛皮が取れそうなので。あと単純にお肉が欲しいですし」


「はははっ、分かりますよ。フォレストシープの毛は糸に加工ができるんです。庶民からだと手出しはしにくいのですが、いい服の材料にもなりますからね」


 受付の女性はにこやかに話している。

 だが、ククールは同時に疑問も浮かんできた。


「石級に上がったばかりの私でも受けられる依頼なのに、どうしてその素材が街の中に出回っていないんですかね。ここで過ごしてみた限り、トールソン様くらいしか持っている人を見たことないんですけど」


 この質問をした瞬間に、受付の女性の表情がなんだか曇ったような感じがした。これは聞いてはいけないことを聞いてしまったと、ククールは首を横に振る。


「分かりました。深くは詮索しません。とりあえず、この依頼でお願いします」


「かしこまりました。では、受託処理をしておきますね」


 こうして、ククールは新たな依頼を受けて、冒険者ギルドを出ていく。

 獣人のふりをしてお世話になっている街ではあるが、どうやらククールには分からないことがまだたくさんあるようだった。

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