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メイドコボルトは聖剣の主  作者: 未羊


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第44話 メイドコボルトは報告する

 ラーラたちに感謝されながら、ククールはジャックとヒーラと一緒に領主邸へと移動していく。

 本来ならば冒険者ギルドに寄って依頼の達成報告をするところなのだが、それどころではなくなってしまったのでやむを得ない。

 治癒魔法を使えるというのは、はっきりいって一大事である。

 たとえ小さな傷を治す程度のものであっても、治癒魔法の類が使えるなら教会に報告しなければならない。義務ではないのだが、分かった時に教会からいろいろといわれるので黙っていられないのだという。

 ジャックたちからそういう事情を聞かされたククールは、ますます頭が痛くなってきてしまっていた。

 普通の獣人であればさほど問題はないのだろうが、いかんせんククールは魔族のコボルトだ。しかも、魔王城で働くメイドなのだから、余計の事大問題となるのである。

 領主邸へと向かうククールの足はとにかく重いし、ため息もまったく止まる気配がない。この様子を見たジャックとヒーラは、どうしたらいいものか顔を見合わせてしまうくらいだった。


 だが、そんなことを言っていても、領主邸へとたどり着いてしまう。

 ククールにとって、この領主邸が今現在の家なのだから、戻らざるを得ないのである。そう、否が応でも、領主への報告をしなければならないのだ。

 領主邸を見上げながら、ククールはその眉間にしわを寄せていた。

 再び大きなため息をついたかと思うと、ククールは背中に背負っている聖剣をひと睨みしていた。こんなややこしい事態になったのは、すべて聖剣のせいだからだ。

 だが、ここでいくら聖剣に恨み節をぶつけようとも、ククールは領主邸に入っていかねばならない。結果、重い足取りのまま、領主邸の中へと入っていったのだった。


 領主邸に戻ると、三人はそろって領主の部屋を訪れる。

 仕事をしていた領主だが、ククールたちが戻ってきたとなると、手を止めて三人を部屋の中へと招き入れる。

 その時のククールたちの表情を見たトールソンは、何かを察知して人払いをしていた。さすがは領主、こういう時は頼りになるというものだった。

 部屋の中では、領主であるトールソンと、ククールたちが向かい合うように座る。メイドであるヒーラは立ったままだ。

 妙な雰囲気を感じ取ったトールソンが、一体何があったのかを問うが、三人そろって一様に口が重い。どう話していいのか分からずに、互いに顔を見合っている。

 これには困ったトールソンだが、どうやって話を聞き出そうかと考え込んでしまう。

 悩むトールソンの姿を見て、そもそもメイドとして主を困らせてはならないという考えを持っていたククールが覚悟を決めたようだった。

 ちらりとジャックとヒーラへと視線を向け、大きく頷く。

 ひと言トールソンへと声をかけると、ククールは今日あったことを、すべてトールソンに話した。

 冒険者ギルドに行くと、自分宛ての依頼が来ており、それを受けてヒーラの妹であるラーラと一緒に薬草を摘みに行ったこと。

 街に戻ってくると、ラーラの母親の状態が急に悪化したこと。

 駆けつけて様子を見たククールが、苦しむ様に見かねて治癒魔法を使ったこと。

 そのすべてをトールソンへと詳細に報告したのだ。

 ククールからの話を聞いたトールソンは、治癒魔法を使ったという報告を聞いて、目を丸くしてしまう。

 それというのも、獣人族なら魔法は使えても不思議ではないのだが、ククールは元々がコボルト族だ。コボルト族は魔法を使うこともできないくらいに弱小の魔族であるために、魔法を使ったこと自体が信じられなかったからだ。

 信じられないトールソンは、ジャックとヒーラにも証言を求める。ところが、二人ともククールと同じ証言をするばかりである。つまり、コボルト族であるククールが魔法を使ったのは、間違いないというわけだった。

 ここまで聞いても信じられないトールソンは、さらにククールに詳細について尋ねている。

 どこまで話していいのか迷ったククールだったが、トールソンたちは聖剣についてもよく知っているため、隠し事をせずにすべてを話すことにした。そもそもコボルト族は嘘はつかないし、隠し事も下手だからしょうがない。

 ククールから告げられたさらに詳しい内容に、トールソンたちはさらに驚くしかなかった。

 魔法を使えないはずのコボルト族であるククールが、治癒魔法というとんでもない魔法を使えたのは、その背中に背負っている聖剣が原因だというのだ。

 だが、ククールは聖剣の主に選ばれたわけであるために、聖剣の力を引き出せても何の問題もない。

 とはいえ、聖剣の力を借りて治癒魔法まで行使できるとなれば、これは隠す通すにしては扱いづらい内容である。さすがのトールソンも、再び唸り始めるしかなかった。

 ククールが平穏な生活を望んでいるとはいえ、このようなことを隠し、それが教会に知られた時にはどのようになるのか。トールソンはそこが怖かった。

 そこで、ジャックとヒーラに尋ねてみたが、二人ともククールの意思を尊重したいという返答をしてきた。

 それを受けたトールソンは、悩んだ結果、ククールのことはひとまず自分たちだけの秘密にすることに決めたようである。


 ひとまず、教会に連れ去られるという事態を避けられたククールだったが、まだまだ心休まる時は遠いようである。

あえてセリフなしで書いてみました

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