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メイドコボルトは聖剣の主  作者: 未羊


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第21話 メイドコボルト、新生活を始める

 ククールと名乗ることになった獣人型のククルは、そのまま魔王城近くの街に住むことになった。

 コボルトのククルは、街での買い物を済ませると魔王城へと戻っていった。


「ああ、大丈夫かしらね、私ってば」


 街の入口で見送りながら、ククールはもう一人の自分のことを心配していた。


「自分のことなんだから、だいたいわかるだろう?」


 ジャックからはそう言われるものの、ククールは本当に心配でしょうがないといったところである。

 自分だからこそ、長所と短所はしっかりと把握しているわけだし、なによりも魔王にあってはいけないという条件を魔王城内で満たせるかどうかという問題があるからだ。


『心配するな。我の魔法は完璧だ。それに、どちらも本物の主である以上、他の魔法とは違って魔王とはいえ解くことはできんし、解けることもないのだよ』


「まったく、誰のせいでこんなに気を揉んでいると思っているのかしらね」


 聖剣のなんともお気楽な発言に、ククールはぎろりと鋭い視線を向けている。

 普段は優しいククールが不満そうに怒ると、なかなかに怖い感じになるものである。


『むむむ……。我は主の不安を取り除こうとしてだな……』


「誰も頼んでないし、余計にややこしくなっただけじゃないのよ。ああ、もう。なんだか段々と心配になってくるわ……」


 ククールは自分の両手を見ながら、わなわなと震えていた。


「心配になるのは分かるが、自分が自分を信じてやれなきゃいけないと思うがな」


「ジャックさん、他人事だと思って気楽なことを言わないで下さいよ。魔族の中でコボルト族がどういう位置づけなのか、考えても見て下さいよね」


 ジャックのもっともな意見にも、ククールはそれは鬼気迫る表情で言い返していた。本当にコボルトとは思えない頭の回転の早さである。

 周りからあれこれ言われても、すぐに理解して反論ができるとは、誰が思っただろうか。

 この頭の良さには、トールソンも驚かされるというものである。


「それで、私はどこに住めばいいんですかね」


 街にいつくことになったククールだが、ひとつ問題を思い出してトールソンに迫っている。

 そう、住居の問題だ。聖剣の主として街に滞在するのはいいが、元が魔族であるので、人間社会の基盤がまったく存在していない。

 住居もそうだが、お金だってありゃしないのだ。魔王からの命令で持たされたお金は、分離したコボルトのククルが全部持って帰ってしまった。つまり、ククールはまったくもっての無一文なのである。

 この問題について、ぐいぐいと迫ってくるククールに、トールソンもたじたじである。


「分かった分かった。だったら、うちにの空いている部屋を貸そうじゃないか。それでいいかな?」


「分かりました。それでお願いします」


 結果、ククールは領主邸に住むことになった。冒険者をするにもちょっと腕前が足りないので、領主邸で使用人の仕事をしながら、鍛えてもらうという流れである。


「いいなぁ。俺だって領主邸に住んだことないのによ」


「根っからの冒険者なんだから、ジャックさんは仕方ないでしょうに」


 ジャックが羨ましがっているが、これまた頭の回転の良さでククールはぴしゃりといい伏せていた。

 この頭の回転の良さと獣人となった姿のスタイルの良さで、ククールはなんともクールビューティーに見えてくる。


「とりあえず、領主邸に戻るとしようか。ククール似合う使用人の服があったか、部下に確認をさせねばな」


 無事にククルを見送ったこともあって、ククールたちは一度領主邸へと戻っていく。

 その最中、もう一人の自分のことが気になるのか、ククールはちらちらと魔王城の方向を振り返っていた。


 そうして、領主邸に戻ったククールは、用意してもらったメイド服に着替えることとなった。

 今まで着ていたコボルトサイズの服と違い、ずいぶんと大きくな服に思わず喜んでしまっていた。


「うわぁ、こんな大きなサイズ、初めて着ましたよ。コボルトって大人になっても小さいですから、他のメイドたちが着ている大きめのサイズって憧れてたんですよね」


「そうなのか……」


 喜ぶククールの言葉に、ジャックは微妙な反応を示している。


『まったく、主は単純ですな』


「うるさいわよ。勝手に主に選んで、勝手に姿を変えさせて、勝手に二人に分裂させて……。聖剣って私の役に立ってるって言えるの?」


『ぐぬっ!』


 ククールの真っ当な指摘に、聖剣は大ダメージを受けている。


「とりあえず、この姿で生活となったからには、聖剣を使いこなせるようになるわよ。だけど、魔王様は討たないわよ。あくまでも平和を守るために振るうわ」


『わ、分かった。そこは主に任せることにする』


 ククールの決意は固く、さすがの聖剣もそこは譲るしかなかったようである。

 魔王を討つことを使命とする聖剣を納得させるとは、本当にククールは大したものである。


 こうして、獣人ククールとなったククルの新しい生活が始まった。

 二人となったククル。彼女たちにはこれからどのようなことが起こるのだろうか。そして、再び一人に戻ることはできるのだろうか。

 奇妙なククルの冒険の先行きは、まったく不明瞭なのだった。

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