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メイドコボルトは聖剣の主  作者: 未羊


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第18話 メイドコボルト、あっさり見抜かれる

「おい、大丈夫か?」


 突然現れたジャックの姿に、ククルはびくっと体を震わせてしまう。


「あっ、お兄さん」


「誰かと思えばラーラか。こんなところで何をしていたんだ。危険な魔物が出るというのに……」


 少女がジャックと話をしている。様子からすると親しいレベルで面識があるようだった。


「ごめんなさい。でも、あのお姉さんが助けてくれたの」


「お姉さん?」


 ラーラがククルを指差しながら話をしている。その指のさす方向を見たジャックは、そこにいた人物に驚いているようだった。


「なんてきれいな獣人なんだ。……おほん、ラーラが世話になったみたいで、助かった」


 ジャックは獣人の姿となったククルに見とれながらも、ラーラを助けてくれた礼を告げている。


「い、いえ。わ、私は悲鳴が聞こえて、放っておけなかっただけですよ……」


 顔を見られたくないのか、ククルはジャックと顔を合わせないようにしながら理由を話している。

 ククルの態度に怪しみながらも、ジャックは話を続ける。


「とりあえず、このフォレストファングは持ち帰って冒険者ギルドで査定しませんとね。さっ、あなたも一緒に行きますよ」


「わ、分かりました……」


 ジャックの誘いを断れず、ククルはやむなくその誘いを受けてしまった。

 フォレストファングをジャックに任せ、ククルはラーラの手を握って街へと向かっていく。

 思ってもみなかった状況になってしまって、ククルは内心ひやひやした状態になっている。


(これって、私ってバレてないよね? ああ、なんでこんな姿の時に出くわしちゃうのかしら……)


 ククルはととても頭が痛そうである。

 それというのも、以前に出会った時のコボルトの姿ではなく、聖剣の力によって変えられた偽りの姿だからだ。

 なので、人をだますことをあまりよしと思っていないククルからすると、勘違いしてくれてそれに乗っかった前回と比べても心苦しいというわけなのである。

 そんな心境であるために、歩くククルの表情はちょっとばかり引きつっている。


「どうしたの、お姉さん」


「な、なんでもないわ。ええ」


 ラーラの純粋な問いかけに、ククルは不自然な笑顔で答えていた。


 街に到着したククルたちは、まずはラーラを家まで送り届ける。

 ジャックがフォレストファングを背負っていたので、ラーラの家族はジャックとククルに、何度も頭を下げて感謝をしていた。

 その中で、ラーラがあの森にいた理由も判明する。母親の体が悪く、そのための薬草を集めに行っていたのだ。

 行為自体は素晴らしいのだが、強い魔物がうろつく森の中を子どもが一人で歩いていたことは感心できたものではない。

 両親からは優しく叱られ、ジャックからも丁寧に諭されたラーラは、二度と一人で森に行かないことを約束してくれたのだった。


「お兄さん、お姉さん、またね~」


「ええ、ラーラちゃん」


 ラーラと笑顔で別れたククルだったが、ジャックと二人になってしまい、なんとも気まずい感じになってしまう。

 どういう風に話しかければいいのか、ククルはものすごく戸惑ってしまっていた。


「なあ、君はどうしてあんなところにいたんだい?」


「えっと……」


 ククルはジャックに質問をされて、どう答えようか迷っている。

 あまり嘘のつけない性格のククルからしたら、どう転んでもジャックをだますことになってしまうため、喋りたくても喋れないといったところなのだ。

 ところが、直後にジャックから思わぬ言葉が飛び出てくる。


「……なんてな。しかし、その姿は驚いたな。どうやったんだい、ククル」


「ふへっ?!」


 そう、獣人の姿となって身長も伸びたこともあり、元の面影がだいぶ減っている状態だというのに、ジャックはククルのことをしっかりと見抜いてきたのだ。これには面食らうばかりである。


「な、なんですか、それ。わ、私は、獣人です。名前は、えと……その……」


 必死に言い訳をしようとするも、自分の名前がすんなり言い出せずに怪しさ満点である。

 ククルのあまりの必死な姿に、ジャックもついつい笑ってしまうほどだった。


「無理しなくてもいいよ。姿が全然違うことには驚いたけど、なによりその剣がね……」


「剣?」


 ククルが背中の聖剣に目を向ける。


『はっ、しまった! 主の姿を変えることに集中しすぎて、我の姿がそのままだった!』


 視線が向けられたことで、聖剣は自分がしでかした大ポカに気が付いたのである。

 そう、前回はごまかそうとして自分の姿だけを誤認させるように仕向けていたのに、今回はククルに意識を向けすぎたため、自分の姿が変化していなかったのである。本当にこの聖剣、やらかしてくれたものだ。


「ちょっと、聖剣?! 何してくれてるんですか」


『うう、すまぬ……』


 ククルにジト目を向けられて、聖剣はただ謝るだけだった。

 その姿を見せられて、ジャックはただ笑うだけである。


「まあ、俺と領主様、それとライブリー様以外は、きっとククルとは気が付かないだろう。何をしに来たのかは知らないけど、前回よりは気楽に歩けるんじゃないのかな」


「そ、そうですかね……。うーん」


 ジャックが笑いすぎであふれてきた涙をぬぐいながら、気楽に構えるようにとククルに話してくる。

 ジャックの言うことだしなと思いながらも、どうやらククルは半信半疑のようだ。

 冒険者ギルドに寄ってフォレストファングを査定してもらった二人は、とりあえず領主邸へと向かうことにしたのだった。

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