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メイドコボルトは聖剣の主  作者: 未羊


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第15話 メイドコボルト、聖剣にやたらと誘われる

 魔王城に戻ってきてから四日が経った。

 ククルは今日も宝物庫の掃除をしている。

 使う道具は、宝物に直接触れないように長柄のはたきを使っている。

 それ以外にも、宝物庫では魔法の使用も禁止されていた。というのも、宝物の中には魔法を吸収してとんでもない効果を発揮したり、魔法を反射して場を混乱に陥れるものまでさまざまあるからだ。

 だからこそ、あまり魔法を使えず、律儀に約束事を守ってくれる使用人が配属されるのである。


「宝物庫の中は、今日も輝いているわね」


 はたきを使いながら埃を叩き落としながら、ククルはそのきらびやかさに感動しているようだった。

 よくよく思えば、配属されてからまだ数えるだけしか宝物庫に入っていないのだ。このような感動を覚えるのも無理もない話である。


『我もこの中では厳重に保管されていた方だが、よく見ると扱いに泣きたくなるものもたくさんあるな。あそこに転がっている鎧など、高名な魔族が着けておったものだぞ』


「いろいろご存じなんですね」


『我も長いからな。歴代の使い手が戦ってきた魔族の持ち物などならすぐに分かる。あそこの杖もそうだ。あれは今から八百年前くらいにいた魔王が使っていた杖だぞ。もっと歴代の持ち物を大事せんかと思うぞ』


「そうなんですね。でも、知ったからといって、私にはとてもではないですけれど、進言できたものではないですよ。どうして知っているのかって話になりますからね」


『むむむ、確かにそうだな……』


 ククルの言い分を聞いて、聖剣は唸りながらも納得していた。

 なんといっても、ククルは小さな村の出身なのだから、そんなに知識を持っているわけではない。むしろそんなものとは無縁の環境だった。なので、知っているというのは明らかにおかしな話なのである。

 こうやって聖剣ともまともに話をやり合えるあたり、本当にククルはコボルト族とは思えないくらいに頭がいい。聖剣の主に選ばれたことといい、ククルは本当に不思議な存在だ。

 ククルが宝物庫の掃除をしている中、聖剣はずっとその背中でどうするのかを考えていた。


(ううむ。やはり、この少女はここで終わらせるにはもったいないな……)


 聖剣は、ククルになにやら可能性を見出しているようだった。

 ところが、今は宝物庫の掃除を一生懸命している最中だ。夜の一人になる時間まではなるべく話しかけないように、聖剣はしばらく黙ることにしたのだった。


 今日一日の仕事を終えて、ククルは自分の部屋に戻ってきた。

 魔王城の中は広いということもあってか、入ったばかりのククルも部屋は個室である。だからこそ、聖剣を手に入れてもここまでばれずにやってこれたのである。


「はあ、久しぶりに宝物庫に入って、ちょっと緊張したわよ」


『うむ、実にご苦労だったな』


 ククルが肩をつかみながら首を左右に振っていると、聖剣は素直にククルを労っていた。


「それにしても、宝物庫って本当に宝物庫なんですね。そんな昔のものがあれこれ眠っているだなんて、思いもしませんでしたよ」


『宝物庫なのだから当然であろう。だが、あの扱いはさすがに許されたものではない。いくら敵対する魔族のものとはいえ、我やそれを扱う者たちと戦ってきた先人たちの持っていたものなのだ。もうちょっと敬意を払ってもらいたいものだな』


 ククルが素直な感想をこぼしていると、聖剣からは厳しい言葉が飛び出してくる。

 そう、敵対者であった魔族が使っていた道具が、ものすごくぞんざいな扱われ方をしていたのだから。これでは宝物庫というよりはただの倉庫、いや物置といっていいところである。

 宝物庫というのであれば、所蔵する物品に対して、もっと丁重になってもらいたい。聖剣はそのように考えているようなのである。

 聖剣は熱弁するものの、ククルはふーんと聞き流すような状態である。どうやら聖剣の考え方は魔族には伝わらないようだった。


『ぐぬぬぬ……。やはり、今の魔王は討つべきであろうな。このようなものの価値の分からんやつに、我と戦った勇士たちの遺物をぞんざいに扱われたくないぞ』


 聖剣はかなりご立腹のようである。


「わ、私にそんな大胆なことをしろなんて言いませんよね?!」


『いや、我の主となった以上は、主にはその責務がある。今は嫌かもしれぬが、いずれは果たしてもらうことになろう』


「いやいやいや、さすがに嫌ですからね?!」


 聖剣が魔王を討とうと再三誘ってくるものの、ククルは一貫して拒み続けている。

 宝物を雑な扱いをされて怒る気持ちはわかるのだが、それはそれ、これはこれといったところである。

 だが、ここまでククルに断られ続けると、さすがの聖剣もいろいろと考えざるを得なくなってくる。


『おお、そうだ。ならばこれがいいだろう』


 何かを思いついた聖剣は、ククルに何かを持ちかけたようだった。

 うるさく聖剣が話し掛けるので、ククルは聖剣の言葉に耳を傾ける。


「えっ、それ本気ですか?!」


『うむ。魔王にさえ出くわさなければ、他の魔族はどうとでもごまかせるだろうからな。さあ、早速実行に移そうではないか』


「そんな、無理ですって!」


 一体聖剣は、ククルに何を持ちかけたのであろうか。

 その夜、ククルの切実な叫びが、魔王城に響いたのである。

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