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メイドコボルトは聖剣の主  作者: 未羊


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第10話 メイドコボルト、大ピンチ

「領主様、ジャックです」


「おお、ジャックか。入れ」


「はっ、失礼します」


 部屋までやって来たジャックは、領主と挨拶を交わしている。

 その部屋の外では、ククルがびくびくとして待っている。


「ジャック、衛兵から聞いているが、誰か連れてきたみたいだな」


「はい。森の中でフォレストファングに襲われている獣人族のメイドを助けました。ここに連れてきております」


「そうか。なら、入ってもらいなさい」


「はっ」


 スムーズな流れで、ククルは部屋の中へと入ってくる。

 背中には剣を背負い、外套を羽織ってはいるものの、見た感じの姿は確かにメイドの獣人のようである。そのなんとも言えない姿に、領主は思わず固まってしまう。


「獣人族といったな。ちょっと毛深すぎやしないかね」


「背が小さいので、まだ子どもだと思われます。子どもの獣人なら、このくらいであっても不思議ではないと思います」


 疑問を投げかける領主だが、ジャックは自信たっぷりに答えている。もはや確信しているといってもいい態度である。

 ところが、領主はどうにも納得いかずに、執事を呼んで誰かを連れてくるように伝えていた。


「俺の報告が信じられませんか?」


「念のためだ。獣人族は幼少時には毛深い個体もいるが、どう見ても、それとも違う気がするのでな」


 領主は疑り深いようだった。これにはククルはびくびくとしている。


「おっと、怖がらせてすまないな。私はこの街の領主でトールソンという。君の名前を聞いてもいいかな?」


 声をかけられて、ククルは全身の毛を逆立てていた。それだけ驚いたということである。これだけ疑われれば、そうなるというものだ。


「えっと、私は、ククルと申します。お貴族様のお屋敷で、メイドをしております」


 両手を体の前で軽く握り、深く頭を下げている。

 ククルの姿を見て、トールソンはちょっと驚いているようだった。


「あ、あの……、どうかされましたでしょうか」


 片目を開けてちらちらと様子を窺っていたククルは、首を傾げているトールソンを見てしまい、つい声に出てしまっていた。


「いや。しっかりとした受け答えができているし、言葉遣いもしっかりとしている。ちゃんと教育されたメイドであることは間違いないだろうし、魔族であるコボルトとは思えないな」


「あの、コボルトってそんなにひどいものなのですか?」


 トールソンの感想を聞きながら、ククルは頭をあげて質問をしてしまう。


「ああ。コボルトっていうのは、君みたいに流暢に話すことはできないんだ。片言の単語をぽつぽつと話すから、意思疎通ができることはできるが、会話はしづらいんだよ」


「そ、そうなんですね」


 思わずほへーっとなってしまうククルである。すっと気持ちが緩んだのか、さっきまで逆立っていた毛がすっかりと落ち着きを取り戻していた。

 トールソンの話を聞いて、ククルはコボルトの集落にいた頃のことを改めて思い出している。


(うん? そうだったかなぁ……。不自由を感じたことがないから気にしてなかったわ)


 だが、魔王城に来てから一生懸命働いていたせいか、どうやら集落にいた頃のことはあまりよく思い出せないようである。つい、首を捻ってしまうククルである。


「どうかしたのかな?」


「あっ、いえ。なんでもございません」


 トールソンに怪しまれて、ククルはぶんぶんと首を横に振っている。


「領主様、お待たせいたしました」


「おお、ライブリーか。よく来てくれたな」


 そこへ、どうやら執事が呼びに行っていた人物がやって来たようだ。よく見ると呼びに行った執事よりもさらに年を取った人物のようだ。

 だが、ククルはこの人物を見た瞬間に、ひしひしと警戒を強めている。


『主、感じ取っておるようだな。こやつは鑑定持ちの人物ですぞ』


(あ、やっぱりなんだ。鑑定っていうことは、私たちの正体が見破られるってことなのかな?)


『我の偽装も、人間には通じにくいですからな。おそらく分かってしまうでしょうな』


(ひーん!)


 ここまで必死になって獣人ということでごまかしてきたというのに、その嘘がばらされるとなると、ククルは心の中で思いっきり泣き叫んでいた。それでも表に出さないあたり、メイドとしてしっかり教育されてきたということなのだろう。

 さすが魔王城のメイドである。教育水準だけは超一流だ。

 泣きそうになっているククルの前に、ライブリーという名の老人が立つ。


「それでは、この者の鑑定を行います。覚悟はよろしいですか?」


「は、はい……」


 恐怖に顔を引きつらせながらも、ククルはライブリーの呼び掛けに首を縦に振っていた。

 泣きそうになっているククルに対して、ライブリーの鑑定魔法が発動する。

 しばらくすると、ライブリーの表情は驚きに包まれていっていた。


「どうしたのだ?」


 ライブリーの様子に驚いて、トールソンが何があったのか問い掛けてしまう。

 その直後、ライブリーは声を震わせながら、トールソンに対して驚きの報告をし始めた。


「この者、魔族でございます。コボルト族でございます」


「な、なんだと?!」


 ライブリーの発言に、トールソンとジャックの二人は信じられないといった表情で叫ぶのだった。

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