7話
夜が更け、レンタルスペースの窓から見える街の灯りが少しずつ減っていった。机の上には散らかったファイルとノート、そして食べかけのお菓子が残っている。五人は椅子に腰を下ろしたまま、言葉を失っていた。長い議論の果てに、ようやく同じ方向を見つめ始めたからだ。
星屑が静かにノートを閉じた。
「……翔真の死の真相を探すことに意味があるのか、ずっと考えていました。でも、彼の言葉をどう受け止めるかが大事なんですね」
ひまわりは涙を拭いながら頷いた。
「“笑顔を守る”。それが彼の最後の願いなら、私たちが守らなきゃ」
アーカイブはファイルを抱え直し、少し照れたように笑った。
「私はデータばかり追いかけてきたけど……結局、数字じゃなくて人の心なんですね」
炎は深く息を吐き、拳を下ろした。
「俺はずっと“生きてる”って叫んできた。でも、彼が残したものは生きてる以上に強い。俺たちが応えなきゃいけないんだ」
月影は窓の外を見つめながら、静かに言った。
「翔真は、自分の笑顔を守れなくなったとき、私たちにその役目を渡した。だから、これからは私たちが守るんです」
沈黙が落ちた。だがそれは重苦しいものではなく、温かな余韻を含んだ沈黙だった。五人は互いに顔を見合わせ、微笑み合った。
「来年も、同じ日に集まりましょう」星屑が提案した。
「もちろん!」ひまわりが笑顔を取り戻す。
「そのときは、もっと大きな部屋を借りよう」アーカイブが言う。
「そして、翔真の歌をみんなで歌うんだ!」炎が力強く言った。
「……それが、彼の望んだ“未来へ”ですね」月影が静かに締めくくった。
五人の心に、翔真の笑顔が蘇る。事故でも陰謀でもなく、彼の生き方そのものが彼女たちに残されたのだ。
外の街灯が消え、夜が深まる。だが部屋の中には、確かに光があった。翔真が残した言葉が、五人の胸に灯り続けていた。




