6話
議論が迷走を続ける中、部屋の空気は重くなっていた。誰も結論に辿り着けず、声だけが交錯する。炎は「生きている」と叫び、アーカイブは「データが不自然だ」と繰り返し、ひまわりは「ペットかもしれない」と天然の一言を放ち、星屑は冷静に「証拠はない」と切り捨てる。月影だけが黙り込み、視線を落としていた。
やがて月影がゆっくりと顔を上げた。
「……翔真から、最後に手紙を受け取った人がいると聞いたら、信じますか?」
全員が息を呑んだ。炎が声を荒げる。
「手紙? そんな話、聞いたことない!」
「公式には発表されていません。でも、確かに存在します」月影の声は低く、しかし揺るぎなかった。
星屑が身を乗り出す。
「その手紙には、何が書かれていたんですか?」
「“笑顔を守る”。そして、“未来へは、みんなで歩いてほしい”」
ひまわりの目から涙がこぼれた。
「……やっぱり、ファンのことを考えていたんだ」
「でも、それならなぜ“未来へ”を歌わなかった?」アーカイブが問いかける。
「歌わなかったのではなく、歌えなかったのかもしれない」星屑が静かに答える。
炎は拳を握りしめ、声を張り上げた。
「いや、そんなの認めない! 彼は生きてる! 俺たちを試してるんだ!」
「試しているんじゃない。託しているんです」月影が遮った。
「彼は、自分の笑顔を守れなくなったとき、私たちにその役目を渡したんです」
沈黙が落ちた。五人は互いに顔を見合わせ、言葉を失った。翔真の死は事故でも陰謀でもなく、彼自身の選択と意志の中にあったのかもしれない。
星屑がノートを閉じ、深く息を吐いた。
「……真相を探すことより、彼の言葉をどう受け止めるかが大事なのかもしれません」
「そうだね」ひまわりが涙を拭いながら頷いた。
「でも、まだ謎は残っている」アーカイブがファイルを抱え直す。
「彼はなぜ、最後に“未来へ”を歌わなかったのか。その答えを見つけなければならない」
炎は黙り込み、拳を下ろした。いつもの勢いは消え、代わりに深い迷いが顔に浮かんでいた。
「……もし彼が本当に託したのなら、俺たちが応えなきゃいけないんだな」
月影は静かに頷いた。
「それが、翔真の望んだ“未来へ”なんです」
部屋の空気は変わった。笑いと混乱の渦から抜け出し、五人は初めて同じ方向を見つめていた。翔真の死の真相はまだ遠い。だが、彼の言葉が彼女たちを繋ぎ、次の一歩へと導いていた。




