4話
星屑のDM暴露で騒然となった部屋は、まだ熱を帯びていた。炎は立ち上がったまま拳を握りしめ、アーカイブはファイルを抱えて眉間に皺を寄せ、月影は黙って壁際に座っている。ひまわりだけが落ち着かず、紙袋を抱えたまま視線を泳がせていた。
「……私も、翔真に会ったことがあるんです」
ひまわりの声は小さかったが、部屋の空気を一変させるには十分だった。
「ええええ!」炎が叫び、机を叩いた。
「また直接会ったって? どういうことだ!」
「夢じゃないですよね?」星屑が冷静に問いかける。
ひまわりは頬を赤らめ、両手で紙袋をぎゅっと握った。
「ライブの帰り道で……偶然、駅のホームで。人混みの中で転びそうになった私を、翔真が支えてくれたんです」
アーカイブが目を見開いた。
「それは……公式スケジュールには載っていない日ですね」
「そうなんです。だから誰にも言えなかった。でも、彼は確かに私に言いました。“大丈夫? 無理しないで”って」
炎は信じられないという顔で頭を抱えた。
「そんな偶然ばっかりあるか! 俺は十回以上ライブに行ったのに、一度も会えなかった!」
「十回で会えるなら全員会えてますよ」星屑が冷静に返す。
ひまわりは必死に続けた。
「そのときの彼は、少し疲れているように見えました。でも、笑顔はいつもの翔真でした」
「疲れていた……」月影が低く呟いた。
「それが、彼の死に繋がるのかもしれない」星屑がノートに書き込みながら言う。
炎は机を叩き続ける。
「いや、違う! 彼は生きてる! 俺たちを試してるんだ!」
「机が壊れる!」ひまわりが慌てて叫び、場が一瞬笑いに包まれる。
アーカイブは冷静に分析を始めた。
「つまり、翔真はファンの前では常に笑顔を見せていたが、裏では疲れを抱えていた。星屑のDM、月影の言葉、ひまわりの体験……すべてが“笑顔を守る”という彼の意志に繋がっている」
星屑が頷く。
「でも、それならなぜ“未来へ”を歌わなかった?」
「それが謎だ。彼は何かを隠していた」アーカイブが答える。
炎は立ち上がり、拳を振り上げた。
「いや、これは全部仕組まれた陰謀だ! 翔真は生きてる! 俺たちを試してるんだ!」
「机が本当に壊れる!」ひまわりが再び叫び、場が笑いに包まれる。
しかし、月影が静かに口を開いた。
「……翔真は、私に“笑顔を守る”と言った。ひまわりさんには“大丈夫? 無理しないで”と言った。星屑さんにはDMで同じ言葉を送った。全部繋がっている。彼は、私たちに何かを託したんです」
全員が息を呑んだ。翔真の死の影は、ますます濃く立ち上がっていた。




