3話
沈黙が落ちた部屋に、紙をめくる音が響いた。アーカイブがファイルを閉じ、星屑の方を見た。
「……星屑さん、さっきから何か言いたそうですね」
星屑は眼鏡の奥で視線を揺らし、ノートを握りしめた。
「……実は、翔真とDMをしていたことがあるんです」
その言葉に、全員が一斉に声を上げた。
「えええええ!」
「DMって、あのDM!?」
「公式じゃなくて、本人から?」
炎が机を叩き、身を乗り出す。
「どういうことだよ! 俺たちがどれだけ送っても返事なんて来なかったのに!」
机が大きく揺れ、ひまわりが慌ててクッキーの袋を押さえた。
「ちょっと! 机壊れる!」
「壊れてもいい! 真実を知りたいんだ!」炎は拳を振り上げ、熱を帯びた声を響かせる。
ひまわりは目を輝かせて身を乗り出した。
「どんな内容だったんですか? “おはよう”とか“おやすみ”とか?」
「そんな単純なものじゃありません」星屑はノートを開き、慎重に言葉を選んだ。
「彼は……“笑顔を守る”って、何度も書いていました」
アーカイブが息を呑む。
「それ、SNSの最後の投稿と同じ……」
「偶然じゃない。彼は本当に、私たちに何かを残そうとしていた」星屑が静かに続ける。
炎は納得できない様子で机を叩いた。
「いや、そんなの信じられない! 証拠はあるのか?」
「あります。スクリーンショットを保存しています」星屑はノートの間から一枚の紙を取り出した。印刷された画面には、翔真のアカウントからの短いメッセージが並んでいた。
ひまわりが震える声で言った。
「……本物だ。翔真のアイコン、見覚えがあります」
「でも、なぜ星屑さんだけに?」炎が疑いの目を向ける。
「それは……私が彼の投稿にいつも長文で返信していたからかもしれません。彼は、読んでくれていた」
場が騒然となる。アーカイブは冷静に分析を始めた。
「つまり、翔真は特定のファンにだけメッセージを送っていた可能性がある。これは、彼の死の真相に関わるかもしれない」
炎は立ち上がり、声を張り上げた。
「いや、これは陰謀だ! 彼は生きてる! 俺たちを試してるんだ!」
「机が壊れる!」ひまわりが再び叫び、場が一瞬笑いに包まれる。
月影が静かに口を開いた。
「……翔真は、私にも同じ言葉を残しました。“笑顔を守る”。それが彼の最後の言葉でした」
全員が息を呑む。星屑と月影、二人の証言が重なった瞬間、翔真の死の影が濃く立ち上がった。
ひまわりが涙をこぼしながら言った。
「翔真くんは、本当に私たちのことを考えていたんだ……」
「でも、それならなぜ“未来へ”を歌わなかった?」アーカイブが問いかける。
「それが謎だ。彼は何かを隠していた」星屑が答える。
議論は再び熱を帯び、笑いと涙が交錯する。五人は互いに顔を見合わせ、次に語られる秘密を待っていた。




