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特殊作戦団

 令和7年3月

 北海道の大地に突如として謎の構造物が現れた。

 ギリシャの古代神殿を彷彿とさせる石造りの構造物からは、角の生えた全長2メートルほどのウサギや火を吐く巨大なドラゴン、岩でできた生命体など、まるでファンタジー作品に登場するような未知の生物が次々と現れ、札幌などの都市を襲撃。

 当初は警察が応対するも、暴走を抑えきれずに都市の破壊を許してしまい、数千名を超える犠牲者が生まれた。

 結局この『生物災害』は臨場した自衛隊によって数時間の激闘の末に鎮圧されたものの、人命や畜産への甚大な被害など、その傷跡は深く、日本中が深い悲しみと未知の生命体への恐怖に包まれた。

 その後、この謎の構造物は防衛省の管理下に置かれ、監視を兼ねて陸上自衛隊の基地が置かれた。

 そしてこの構造物はファンタジー作品にちなんでダンジョンと名付けられ、そこから現れた未知の生物たちは大別してモンスターと称されるようになった。


 そして、本日。

 ダンジョンの調査及び攻略に向けて臨時に編成された、俺たち陸上自衛隊特殊作戦団はこのダンジョンの調査を任務とし、未知に突入することとなった。


 令和7年 4月14日 午前8時 ダンジョン前基地


「総員、敬礼!」

 響く号令に、隊員が一斉に敬礼する。

 一切の乱れのない、敬礼。

 全員の視線の先には、本作戦の指揮を執る大石田勝(おおいしだまさる)団長。

 老境にありながら、敢然と立つ姿はまさに歴戦の男である。

 寒風が吹く中、彼は任務を伝えるべく口を開く。

「諸君に告ぐ。

 これから臨むこの任務には大勢の国民の命がかかっている。

 このダンジョンは未知の空間であり、どのような危険が待ち受けて入るのかはわからない。

 しかし、札幌のような悲劇を二度と生み出さぬよう、無辜の国民たちに同じ災いが降りかからぬように、このダンジョンを調査し、原因を突き止める!よいな!」

「はっ!」

 団長の飛ばした檄に、麾下の隊員たちは異口同音に同意。

 ダンジョンと呼ばれる構造物に向けて、俺の指揮する先遣隊は前進を開始する。

 10式戦車を中心に編成された機甲部隊を先頭にアサルトライフルを持った歩兵が続く。

 ザッザッザと足をそろえて進む兵。

 無駄話をする者は誰1人としていなく、全員が未知に挑む緊張の表情に満ちている。

 ギュラギュラとキャタピラを鳴らして前進する戦車隊。

 10式戦車の120ミリ滑空砲で岩の生命体ことゴーレムを吹っ飛ばした実績があるものの、それ以上の強敵が待ち構えている可能性を考慮すると安心はできない。

 ダンジョンの入り口が目前に迫る。

 10メートルはある、奇妙な紋章が描かれた重厚な扉。

 機材を使って力ずくで開けば内部に光が差し、構造が明らかになる。

 予想通りの遺跡のような内装。

 ただ、外見と違って異常に広く、外部と内部の大きさが合っていない。

≪敵影確認!ゴーレム3体!≫

 戦車隊からの通信に全員が身構える。

 奥の扉が開き、現れた3体のゴーレム。

 黄土色の未知の岩石で構成され、所々に鉱物がくっついている。

「グググググ…」

 ダンジョンに響く重低音の鳴き声。

 札幌で遭遇した個体とは違って体は小さいものの、1歩足を動かすたびにドスンドスンと床が揺れる。

「弾種、徹甲。胸部中央」

 迫りくる脅威に機甲部隊を率いる平田清(ひらたきよし)戦車長が冷静に指示。

 砲弾が装填され、胸部中央に照準を合わせる。

「撃て!」

 直後、ダンジョンに轟音が響き渡る。

 放たれた砲弾は刹那の時間を飛び、寸分狂わずゴーレムの胸部に着弾。

 爆炎と共にゴーレムを木っ端微塵に砕く。

「敵影消失」

 レーダーを使って脅威の消滅を確認すると、戦車隊は停止。

 続いて歩兵がエリアを確保する。

≪こちら、先遣隊。第1エリアを確保。ダンジョンの内部は予想以上に広い、陣地構築のため、工兵の増援を求む≫

≪了解、増援を送る。第1エリアの維持及び陣地構築にあたれ≫

 少しして追加の戦力や工兵隊が到達。

 陣地構築を行い橋頭保を確保する。


「今日はここまでだ。ゆっくり休んで明日に備えろ」

 ダンジョン内に仮設された臨時の拠点。

 歩兵小隊長として部下にそう伝達すると、武器を保管庫に置いて休憩する。

「泉丸隊長、ゴーレムの搬送、終わりました」

 討伐したゴーレムの基地への搬送が終わったことを部下の三笠が伝える。

「ご苦労、明日に備えてゆっくり休め」

「了解です。泉丸隊長も、お早目に休んでください」

「気遣い、ありがとう」

 敬礼して、テントに入る三笠を背に、エリアを一通り見まわす。

 エンジン音を轟かせる10式戦車をはじめ、機関銃手などがいつ来るかわからない襲撃に備えている。

「これはまだ始まりに過ぎない、か」

 三笠の言葉を反芻する。

 脳裏に浮かぶは破壊されゆく都市の姿。

 モンスター貫かれた親のそばで泣き叫ぶ子供の声がいまだに忘れられない…

「絶対に仇は取ってやるからな…!」

 こぶしを握り締め、罪なき魂たちに静かにそう誓う。

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