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第一章『勿忘草』 九節『女子寮2』

こんにちは、こんばんは。しらすおろしぽんずです。この作品を手に取っていただきありがとうございます! また土曜昼と言いながら夕方近くになってしまいすみません。今回は白亜視点での前節とその素こそ先のお話です。前書きを書くときはそこまで長くしたくないので今回はこれだけで! では、また。

九節『女子寮2』


 やっぱばあちゃんにはまだまだ敵いそうにねえな。そう思いながら隣のレナグの方を見る。こいつにも敵わなねえな。「だって普通緊張するだろ!」と心の中で突っ込むほどにはそう思う。


 というのも、こいつとミクリアの関係性に疑問を持っているからだ。

ミクリアは俺とララにとって大切な友達だ。ミクリアもそう思ってくれていると思う。でもあいつだけは少し違うような気がしていた。別に仲が悪いわけじゃない。

 

 むしろレナグからしたらめちゃくちゃ仲のいい友達だろう。しかしミクリアはそうは思っていない。ミクリアはレナグと話しているとき明らかに言葉が詰まっている感じがする。もともとミクリアは言葉足らずなしゃべり方をするし、テンポもゆっくりでほんわかした感じだ。しかし、レナグと話すときはそのテンポが必ず速くなるのだ。本当に少しだけ。あれは、その、やはり恋、なんじゃ…


 そんなミクリアが失恋で落ち込んでいると知ったら、レナグにもダメージが行くのではないだろうか。


 薄暗い寮の中、実際にどうなのか気になりレナグに声をかけ、恋バナをしようと試みる。


「やっぱり築百万年の建物は違うな」


「あのな、この学校はな、『五心色』様が生まれた時にお創りになったの。マンセル暦は始まってもう一千万年以上経ってんの。だからみんなめんどうなって、何色の年かでしか呼ばなくなったぐらいなんだから。これ常識な」


 ち、軽く話しかけただけなのになんでこんなにも馬鹿にされなきゃいけないんだ。そう思い俺は言い返す。


「一夜漬けのくせに」


 そう言ったらレナグは悔しそうな顔をした。俺はちゃんと聞いていたのだ。モネ先生がレナグに言っていたことを。話を変えようとレナグが部屋の番号を聞いてきた。ったくこいつはこの前ララが間違えて持って行った俺らの模擬刀取りに来たの忘れこと、もう忘れたのか。


 ん、待てよ。ララ、ミクリア、模擬刀、あ……同室。


 やべえ! 今は会える雰囲気じゃねえ!


「お、おい待てよ」


 部屋に躊躇なく向かおうとするレナグを一度止めようとする。しかしレナグは止まることなくドアをノックする。


「おおい、ミクリアー。いるかー?」


 そう声を上げるとドアが半開きになり中からミクリアが出てくる。そして突然の俺たちの来訪に驚いているような気もしたがとりあえず気になるのは、やはり頭の葉っぱだ。いったい何をしてんだか。


 そしてレナグとミクリアが話し始めるとその会話の店舗の悪さとかみ合わなさに、また驚かされる。


 慌てて仲介に 入る俺。しかしその瞬間身動きが取れなくなる。


 今までに見たこともないようなララの姿を見てしまったからだ。


 レナグとミクリアは空気を読んで部屋を開けてくれた。ここからは俺がちゃんとケジメを付けねえとな。


「よお」


「……」


 ララは黙ったままだ。目の周りが真っ赤に腫れている。俺は気づつけてしまって申し訳ないという気持ちとこっちは悪くないという気持ちが心の中でせめぎあう。今のところは申し訳なさが優勢だ。


「あのさ、ララ。昼間は…ごめん。俺」


「—いいよ。わかってるもん。自分だってやりすぎてるってことが。でも、でもただわかってほしかったんだよ。私がさ、白亜のことどれだけ大切に思ってかみたいなことをさ」


 見苦しく言い訳をしようとした自分に心底嫌気がさす。自分に対する厚意を踏みにじって自分だけを見て、自分よがりな想像で勝手に納得して勝手に会いたくない、話したくないとか。ここまで自分が絶対になりたくない人物像に近づいたのは初めてだ。


「ちゃんと好意を伝えないとさ、白亜がいつの間にか知らない人になっていそうで怖かった。だから…。でも迷惑。ごめんね」


 ララとは同郷で、同じ町のはす向かいの家で育った。窓を開けると少しだけ遠くから手を思いっ切り振ってくる気の強そうな女の子。当時、まだ五歳だった。子供ながらに思っていた。あの子と友達になれたらなと。


 —でもその気持ちを無視していた。断られるのが怖かったからではない。仲良くなって、でもしぜんとまた他人に戻っていくのが怖くて。でもとうとう声をかけられてしまった。小学校(初等教育学校)の時だ。やはり仲良くなった。


 でも毎日を重ねていくうちに。失いたくない、そんな思いが募っていった。そしていつの間にか逆にこっちがララの気持ちを考えず離れようとするようになっていった。

そんな俺のくそみたいな自己中的考えが、ララを傷つけていた。いつも綺麗に編んであるロングヘアも今はくしゃくしゃになっている。


「ララ、あのさ——」


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