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第一章『勿忘草』 七節『隊員探し』

七節『隊員探し』



「こ、これどういうことですか?! 去年まで人数制限なんてありませんでしたよね?」


「今年からはマンセルの環が緑の年になる。それに伴って増えた脅威の対処が個人では難しいため人数制限を設けた。言わなかったかね?」


 この人、なぜ嫌味な先生のお手本みたいな性格になちゃったんだ。


「進級適正試験を通過した者か、自分で推薦をし、私たちの選考を通ったものを隊員として認める。期限は一か月後。以上だ。では私はもう行かせもらおうかね」


 それだけぶっきらぼうに言ってすたすたと長い廊下を歩いて行った。本当に何なんだあの先生は。どうやって教員になったのかが全く分からない。


「全くアンセントワート先生は。ごめんね。私たちがここに在学してた頃は笑顔を絶やさないような人だったんだけど。まあ嫌味ではあったけど」


「想像できねえ。お前アンセントワート先生の笑顔ってみたことあるか?」


「もちろんないよ。人の失敗とかで苦笑いしてるとこ以外想像できない」


「そんなにも悪いイメージが付いちゃっているのね…」


 頭を抱えながらモネ先生は憂鬱そうな顔をした。モネ先生はとアンセントワート先生が同期だったとは知らなかった。そう言われてみると同じような年かもしれない。


「あっ! もうこんな時間。私も次の授業あるから行くけど、隊員探しはまじめにしたほうがいいわよ。後で後悔するからね」


 そのことには妙な重みがあった。うなづく僕らを見て先生は手を振りながら走り始めた。そして職員用伝達路の入口でパスキーが認証されずつっかえている。用務員さんに助けてもらってようやく入れた。あの人もたいがい独特だよなあ。白亜もそう思ったような顔をしていた。



「だ~疲れた。今日一日いろいろありすぎだろ」


 遠く続く大きな鏡のような塩湖の水面を揺らして僕らは歩く。一面がオレンジ色に染まってとてもきれいだ。


「今日さ、一日中考えてたんだけどさ。あと二人の隊員どうしよう」


「それな。俺も考えてたんだけど、四年生に友達ってお前いる?」


「からかってんのか?」


「そうだよな。ごめん」


 全く変なことを聞くやつだ。


「でも実際問題、どうすりゃいいんだよ? このままじゃ冒険課程参加することもできずに、終わって、アンセントワート先生にまた、友達作れって言われる日々が始まっちまうぞ」


 それだけは避けたい。何としてもだ。その決意が顔に現れていたのか白亜に「なんか老けた?」と聞かれてしまった。


「まあ、な? 一応一人はいるよな」


「ああ。そうだな。一人な」


 そう僕たちの言う一人とはミクリア・クローバーのことだ。あいつは、白亜とは真逆で一言でいえば超ひ弱と言った感じだが、ある特別な能力を持っている。それが『色』に起因しているのかは本人もわかっていないそうだが。そうなのだと言われても違和感がない。あいつが持っている能力は、それ程に強力で珍しいものなのだ。

 しかし問題もある。そのことを話題にしようと僕は口を開く。


「ただ」


「ああ。ただ、だ」


「素の戦闘力が皆無に等しい」


「それな」


 そう。問題とは能力に対して素の戦闘力がなすぎるという点だ。戦闘力が低いというよりは体がとても弱い。しかしこれは病弱という意味ではない。わかりやすく言うと、ステータスをのほぼすべてを特殊能力値に振ってしまい防御力ゼロといった感じだ。

 一説によると風で飛んできた砂ですら肌に触れると切り傷になってしまうらしい。


「でもなあ、あの能力あったらかなり強いよなあ」


「ああそうだな。特に森の中では無敵だし。でもその前にあいつが参加しないだろ。冒険課程だぞ」


「まあ、そうだよなあ」


「でも一応聞いてみるか」


 寮はだいたい一キロメートルぐらい本校舎から離れたところにある。一キロとは言え通学路は塩湖の上だ。普通に歩くよりは時間がかかる。あたりが暗くなりさっきまでオレンジ色に染まっていた水面はもう深い青色になっている。


「ていうかさ、ミクリアってなんで今休学してんだっけ?」


「え、知らなかったの? 学校中で噂になってたけど」


「なんか噂だけは聞いたけど、あんまり現実とは思えないんだよな。だってなんかやけくそになって自分の能力の実験してたら頭から葉っぱが生えてきて顔が埋め尽くされたとか、それが恥ずかしくて学校中で休んでるんだろ? そんなこと信じろっていうのか?」


「そこだけか。なんでやけくそになったかは知ってるか?」


「知らねえ」


「フられたらしい」


「えっ、告ったの? ミクリアが?」


「そう。あの弱虫ミクリアが」


「まじかよ」


「正確に言うとな、なんか気になってた人に恋人ができちゃったんだってよ」


「なんだそういうことね。あいつがそんな勇気あるわけないもんな」


 一人で納得している白亜に失礼だぞと思いながらいつの間にか塩湖から抜けていたことに気づく。ここまでくれば見えてくるはずだ。


「お、見えたぞ。女子寮だ」


 こんにちは、こんばんは。しらすおろしぽんずです。まずは第七節、ご一読くださりありがとうございます。今回は冒険課程参加のための条件である”四人以上の小隊を組んで参加すること”という項目を満たすべレナグと白亜が名前を出した休学中の友達のミクリアについての話でした。なんとも言えない雰囲気が漂う(まだ登場していないけど)キャラクターでしたね。頭から葉っぱとか、何とか。最初っから設定の多いこのキャラクターですが果たして隊員として小隊を組んでくれるのか、そしてあともう一人の隊員は誰なのか、楽しみにしていただけると幸いです。

それでは、また。


ps

週一更新から毎週、水曜の夜と土曜の昼頃に更新という周期に変更になりましたので一応伝えさせていただきます。

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2025/03/02 16:50 なまけもの
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