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異能旅語  作者: No Name
Prolog 旅の始まり
4/10

多種多様

「…あの」


復習を終えて、ちょっと休もうかと考えていた頃。突然、誰かに話しかけられる。その声は、どこか弱々しさを感じる。


「あっ、何か気に触りましたか?」


「いえ……船の上で勉強してる姿を見て、ちょっと珍しいなと思ったので」


確かに。というか、1歩間違えたら変でもあるか?まぁいいや。


話し掛けてきた人を見た。翼人、かな?片翼しかないのは、何か訳があるんだろう。詮索されたくないかもしれないし、そこには触れないでおこう。


翼人とは、換言すれば人種のようなもの。この世界には、多種多様な種族が生きている。俺みたいな人間や母さんのような精霊など、様々。


この世界には、種に関する分類が2つある。それが、さっき挙げた”種族”と”属”。種族は主に3つ存在しており、人間・獣魔・妖精がある。属は各種族に2〜4つ存在しているという。確か、獣魔の属が結構多かったと記憶している。


例を挙げてみると、俺であれば、人間という種族の人間という属。目の前の人が翼人だとすれば、獣魔という種族の翼人という属。


因みに、度々研究者や学者間で声が上がる”亜人は人間か獣魔か”という問題については、人間の種族であるという通説が有力なのだとか。亜人は、所謂人間と他種族のハーフ。


人間とのハーフが分類されているならば、当然獣魔と妖精のハーフについても分るいされているのだろう?と、思うかもしれない。が、これは未だに論争に決着がついていないらしい。半霊という属があるが、どの種族に分類すべきかが決まっていないのだ。今では、どちらを名乗っても良い事になっているらしい。


「あの…どうかしましたか?」


「あ、すみません。少し考え事をしてまして」


おっといけない。目の前に人がいるというのに、放って思考に明け暮れるとは。俺の悪い癖だな。こういうのも少しずつ治していかないとな。


そう思っていると、相手の人が自己紹介をしてくれた。俺も自己紹介し返しておこう。


彼女は、チオンというらしい。冒険者をやっていて、純金(ゴールド)階級の冒険者らしい。


「純金以上の冒険者は猛者揃いだ」、いつぞやかに、父さんが教えてくれた事。父さんも純金階級だったので、その言葉に納得していたけど、この人も父さんレベルの強さって事になる。マジか。


曰く、純金以上の階級になると、途端に人数が減るのだとか。大体がその下の純銀(シルバー)以下でストップしてしまうのが現状なのだとか。それだけ、純金以上の人が強いという事なのだろう。或いは、純金昇級の試験が難しいか。


いずれにせよ、この人は強い部類の人だ。何か教われないものか。


「そういえば、どうしてこの船に?」


「依頼内容が、この島での魔物討伐だったので…」


「あぁ、そういう事だったんですね。何かすみません、こちらばかり聞いてばっかで…」


この島の魔物討伐依頼とか、王都にも出てるんだ。てっきり、あの街の人達で手が足りてるものだとばかり。俺が父さんと魔物の討伐に出た時は何度かあったけど、あの街以外の人なんていなかったような。当時は手が足りてたとかか?それとも、単にたまたま出くわさなかったとか?


…分かんねぇな。気にした所でって感じはあるが。


そういや、魔物について復習するのを後回しにしてたっけ。丁度いい機会だし、復習しておこう。この船を降りた後に勉強の時間が取れるかも分からないしな。


俺が言っている魔物、正式な名称を魔性生物(アダヴ・リア)。クレイアに存在する生物の種類としてはもう1つ、真性生物(イヴノ・リア)がある。人間とか獣魔とかは、真性生物に分類される。魔性生物の特徴は、主に3つ。1つは、人間・獣魔・妖精の特徴を持たない、或いは明らかに乖離している事。2つは、本能制御の機能が真性生物以下である事。3つに、魔石である。


3つめについて詳しく説明すると、体内で魔石を生成したり、その魔石をエネルギー源として活動したり、外部に魔石が露出している事だ。魔性生物は、元々真性生物だったという説が通説になっており、その説に則ると、魔石は有り余る何らかのエネルギーを放出する術を見出せなかった生物が魔石という形でエネルギーの放出を試みている、というのだ。


その為、魔石は多量のエネルギーを含んでいて、様々な活用法が開発されてきた。魔術道具や武器といった専門性の高い物から、生活用品等と言った一般的な物にまで波及しているのが、現状。このような魔石を使った道具を、一般的には魔道具と呼んだりしている。今乗ってる船だって、恐らく船体の安定や察知の魔道具が使われている事だろう。


「チオンさんは、これから王都に?」


「はい、討伐の報告をしに行くところなんです」


そうなのかと思っていると、依頼完了証を見せてくれた。……この魔物か。確かに、俺の街でも危険な魔物とされているヤツだ。これを単独で討伐したとすると、本当に父さんレベルかもしれん。


「…チオンさん、1つお願いしたい事があるんですけど……」


「お、お願い?」


「俺、王都に着いたらギルドに所属して冒険者になるんです。もし冒険者になれたら、俺の事を指導してくれませんか!」


「え……えぇ!?」


かなりの声量で、そう叫ぶチオンさん。無理もない。初対面の人に指導を頼まれているのだ。普通なら、断られるか見向きもされないかだろう。それでも、叫んだ後にしっかり考える素振りを見せてくれている辺り、優しい人なのだろう。


そして返って来た答えは、意外なものだった。


「…まだ依頼が残ってるから、その後でいいなら……いいよ」


「!ありがとうございます!」


まさかのOK。感謝が尽きない。ここだけの話、あの街を出た後にどうやって鍛錬しようか悩んでいた。ギルドの人にお願いするにも、他郷からやって来たばかりの新人が突然指導を頼んだとして、取り合ってくれるかも正直怪しいと思っていた。魔物ばかりを相手にしたところで、後々対人戦の課題が生まれるのは、目に見えていたしな。


どんな異能を使うんだろう。どんな戦い方をするんだろう。今から、指導の時間が待ち遠しい。


「お?あれがラウンテか」


そうしている内にラウンテが見えてきた。俺の冒険が始まる場所。何もかもが新しく映る、期待の地。


楽しみだ。

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