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異能旅語  作者: No Name
Prolog 旅の始まり
1/10

普遍的な青年

No Nameです。


この度、本サイトで小説を投稿する事に致しました。拙い文章ではありますが、ご愛読して頂ける読者様が増えるよう、努めて参ります。


尚、前書きと後書きにつきましては、必要な場合のみ記載する形とさせて頂きます事を、予めお伝えします。


それでは、どうぞ。

「そこががら空きだぞ!」


「ぐぁっ!…なんの!」


俺は、父さんから一撃をもらった。稽古とはいえ、しっかりとした痛みが身体を伝う程に重い一撃。実際では、命取り。そう思うと、まだまだ未熟だなと痛感する。


後ろを取れば、まるで見えているかのように捌かれる。馬鹿正直に斬りにいけば、攻撃を受け止められる。トリッキーな動きを織り交ぜれば、まだまだな自分の身体が最後まで追いつかない。


どうやら、まだ父さんの背中は遠い。


「よし、今日はこれくらいにしておこう。これ以上は明日に響くからな」


父さんが稽古の終了を告げる。それまで緊張しいだった身体が、あっという間にヒョロヒョロと地面に座り込んでいた。


「お疲れ様、ティセロ」


そして、その稽古を遠巻きに見ていた母さんがタオルと水分を持ってくる。ここまでの光景が、うちでの日常。渡される水を衝動のままに、ゴクリゴクリと一気に飲み干したくなる。しかし、我慢である。父さん曰く、「水分はこまめに摂った方が良い」だとか。それを思い出し、こまめに少しずつ喉に流し込む。


うん、良い。運動後の水は、身体に沁みる。稽古でなくなっていく活力が、どこからともなく湧き出してくるような感覚を覚える。この瞬間の水分、無限にいけるかもしれない。


……いや、それは言い過ぎか。


「ティセロ、ある程度水分摂ったら家で休みな。その感じ、結構疲れただろ?」


「そうだね、そうするよ」


草っ原で仰向けに大の字でいた俺に、そう言う父さん。疲れが溜まりに溜まってる俺とは違って、父さんはなんて事ないと言ってのけそうな様子。スゲェ。


稽古を重ねる度、父さんへの憧れが募る。俺の相手をそれなりの時間こなしても、街の手伝いを頼まれても、父さんは大体ケロッとしている。それでいて、何事にも手を抜かない。物事には常に全力を尽くして取り組むその姿勢も、俺が憧れを抱く理由でもある。母さんから聞いた事があるが、結婚前からそうだったらしい。寧ろ今以上だった、とも聞く。その姿勢は、母さんが父さんを好きな理由の一つでもある。


それ以上に父さんを尊敬している理由は、多角的な思考と視点だ。冒険者をやっていた父さんは、ギルドに対しても意見を言っていたらしい。依頼をこなす上で、依頼とは違う形であるにも関わらず、こうすべきと考えた通りに依頼をこなして、ギルドと揉めた事がしばしばあった。そんな時も、臆する事無く自身の内を述べたのだとか。その結果、生態系や依頼者にとって都合のいい結果に傾いた事の方が多かった。


普通であれば、権力に臆せざるを得ない場面だったはずなのに、それでも正しい事を貫けるその姿を聞いて、俺はいつの間にか父の背中を追いかけていた。


「ティセロ?」


「あ、すぐ行く!」


気付けば、色々と考え込んでしまっていた。汗をかいた状態で外に居続ければ、体調を悪くしてしまう。そう思った俺は、母さんに返事を返して家へと向かった。





「ふぅ、疲れたなぁ」


家に戻って汗を流した俺は、部屋のベッドで寝転がっていた。ベッドの心地良さは、時によっては悪魔だ。本来ならこの時間は勉強の復習に充てているのだが、このままベッドで眠ってしまいたいと思っている自分がいる。


そんな気持ちをどうにか押し殺し、俺は身体を起こした後に机に座る。棚にしまっていた本と大陸図を並べ、それらについて纏めているノートを横に開く。


クレイア。この世界の名前。巨大な1つの大陸と幾つかの島で構成されている。


その中でも俺が住んでる街であるアロンは、ウェローン島にある唯一の集合体だ。この島のアロン以外の地は、何も開拓の手が施されていない自然が広がっている。因みにウェローン島とは、大陸の北北東側にある島。島だけでいえば他にも、北側にヴァール島があり、東側にシーマス諸島、西南西には未だ名前の無い島が1つ確認されている。


大陸はというと、中央にラウンテという国がある。そこは大陸随一が沢山あり、国力や兵力、施設をはじめとして1番発展していると言っても過言では無いだろう。


大陸の北半分には3つの国が広がっており、右から順にファトズマ、バイル=ガル、ファンテンスという国が存在している。一方で南半分には、左側にメイニィという準国家が存在している。右側は国が無く、開拓もされていない非常に危険な大地が広がっているとされている。確か、ケイズっていう名称だったはず。


外交については、隣接していたり距離が近い国同士が主で、そうでない場所とは関係が希薄である。ヴェローンなどの島国は海を隔てている為、関係が希薄な場合は特に希薄具合が顕著だ。最近では、遠距離の行き来が容易になるような体制を整えようとする国も増えているのだとか。


「ん〜、覚える事が多いなぁ」


ウェローンには公的な教育機関が存在せず、教師資格を持ってる人が塾の様な形で教えたりしている。俺はというと、母さんがラウンテにある王都セウンディルの学園で教師をしていた事もあり、母さんに教えて貰いながら自分で勉強している。


因みに、母さんはエルフである。ファトズマとメイニィ以外で人間以外が教師になる事は難しく、それでも教師資格をもぎ取った母さんは、正真正銘天才である。特に、母さんの専門分野である魔術については知識深く、全魔の(イディオフィア・)天才(オゥラ)の1人なのだとか。


両親共に凄く優秀なので、時折プレッシャーを感じるのは、ここだけの話。


「ティセロ〜、ご飯よ〜」


「今行く!」


復習をしていると、母さんから呼ばれる。どうやら、夕食が出来たらしい。そういえば、お腹が空いてきたな。


区切りもよかったので、俺は下に駆け足で降りる事にした。

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