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努力義務だと思うから一応述べておきますけど、未成年者の喫煙は、日本だと法律で禁止されてますからね!!いいか!?選挙権すらねぇ少年少女は絶対に吸うなよ!!
タバコは、20歳以上になるか、異世界転生してから楽しみましょう。
ラディの脳裏に一つの質問がよぎった。
「…あの」
「なに?」
いつの間にかラディの手を握っていたマリエットが反応した。
「マリエットは…、その…」
「?何よ、もったいぶって」
「その…、私と…し」
「しご…、ぅ…」
しかし、質問の内容を失礼と思ったのか、自信を無くしたのか、…それとも、夜が自分から正常さを奪っていることに気がついたのか、ラディの声は、段々と細く、聞き取れないほどに小さくなっていった。
「…ごめんなさい」
マリエットは、またラディが勝手に落ち込みだしたかと、軽くため息をついた。
…おもむろに、彼女は、肩を落とすラディを余所に、レザージャケットの内ポケットからシガレットケースとマッチを取り出した。
その後、咥えたタバコに火を点け、使い終わったマッチ棒はダーツの矢のようにピッと焚き火に投げ込み、そして、ふかし始めた。
ラディは、その一連の動作を、胸の小さな高鳴りと共に見つめていた。
…マリエットの吐く息が、ラディの周囲を漂い、取り囲む。
タバコの先端から飛び上がった細かな灰が雪のように舞って、聖骸布の上に着地する。
そして灰は、僅かで、極小だが、しかし確かに、聖骸布の上に薄暗い染みを作る。
ほんの少しの面積だけども、聖骸布がタバコによって汚される。ラディの持ち物が、マリエットによって汚される。
…嬉しい。
その汚れこそが、ラディに、マリエットが自分の傍にいる事実を実感させる。
マリエットが自分を束縛している事実を自覚させる。
頬が、妙なにやつきを覚える。
身体の芯から滾る悦の感覚に耐えられなくなる。
理性が遠のく。
…これは多分、すごくダメな考えなのだろうけど。
だけど、もしも、もしも、マリエットが私の口を灰皿の代わりに使ってくれたのならば。
私の肌で、タバコの火を消してくれたのならば。
そんな些細なことで、マリエットが少しでも私を役に立つ便利な物だと思って、手離さないよう振る舞ってくれるようになるのならば。
私は、すごく、すごく幸せになるに違いない。
…いつの間に、私はこんなにはしたなくなってしまったのだろう。
でも、この想いは絶対に手放したくない。
もう、私は何者でも良いから、ただ、ずっと、マリエットによって自由を奪われていたい。
ラディは、タバコの煙たい臭いを嗅いでモワモワとした頭で、ほわほわと、そんなことを考えていた。
…それがまた、彼女に喜びを噛みしめさせた。
そう考えられることが、思えることが、彼女は幸せでしょうがなかった。
「…」
顔を俯かせて幸せそうな顔をするラディを横目で見て、マリエットはそっと言った。
「…吸う?」
ラディの前に、指の間にタバコの一本を挟んだマリエットの手が差し出された。
「…どんな味ですの?」
「味?うーん…」
「よく分かんない」
マリエットは少し笑った。
「…分かんないけど、ちょっと甘い気がする」
そしてラディは、少し黙ってから、答えた。
「…吸う」
ラディは逆手で髪を耳にかけて、マリエットの手元に顔を近づけた。
その動きに合わせて、マリエットも指を彼女の口元に近づけた。
「うん、そう…、私の指に軽く口をつけて…」
「そう…、先っぽに唇を当てるくらいで…」
「咥えないで…、タバコのキワで息を吸う感じ…。そう、上手…」
…初めて吸うタバコの煙は正直じゃない。
吸った息は、思うように肺には入ってくれず、喉元で滞留し、そしてラディはむせてしまった。
鼻の奥がツンと痛くなって、目が煙たくてピリピリと痛くなって、涙目になってしまった。
その様子に、マリエットはプッと噴き出した。
「あはは。初めてはそうなるよね。…それで、味は分かった?」
「いえ…、何にも分かりませんでしたわ…」
「…吸うのはもう止めとく?」
「…いえ」
「もう少しだけ、吸いたいですわ…」
…結局、何回吸ってみても味は分からなかった。
ラディにタバコは難しかった。
でも、ラディはタバコが好きになった。
それは、たった一本のタバコを交互に吸う時間がたまらなく愛おしかったからであり、何よりも、マリエットの臭いが肺をまとう感覚が心地良かったからであった。
「マリエットは…」
初めて吸ったタバコのせいで、脳がクラクラしてしまったラディは、小鳥が枝に乗って休むのと同じ要領で、マリエットの肩に頭を乗せながら、か弱い、ふんわりした声で話しかけた。
「マリエットは、仕事…、好き?」
マリエットはラディの頭に頬を寄せて、ラディの柔らかでしなやかな髪の感触をのんびり味わいながら、しかしハッキリと答えた。
「好きよ」
「史跡に触れることは、不思議がいっぱいで楽しいわ。知れば知るほど、分からないことが増える」
「それが、楽しくないわけないわ」
そして、マリエットは続けた。…それは、ラディに対して、どれだけ伝わるかが分からない話であったが、マリエットは話そうとする口を押さえきれず、話を続けた。
「…ラディも知ってるかもしれないけど、大陸に出回る歴史書の内容は本当に薄いのよ。大体のモノが、直近の歴史しか記していない。その上に、解釈の指標はシテの神学校が定めたものしか記載されていないわ…」
「それ以前の歴史…つまり、魔族による大陸侵攻…300年戦争の勃発以前からフランガロによる『新大陸』の支配までの歴史は、多くの歴史書、つまり、神学校が発行するガロ信仰の宣伝紙には神話的に描かれている…。全く以て非合理的なものが、唯一無二として描かれている…」
「そりゃあ、この世には『魔法』なんて、超自然的なものが存在するけどね…?でも、だからって、世界から完結性と必然性が奪われるわけはない…。奇跡的な、蓋然的な出来事だって、細分化して、分類すれば必ず道理を伴う自然的な真理に成り得るはずなのに…」
「…シテの大聖堂地下にある禁書庫にはね?隠された歴史の全てが記された書物があるの。…でも、私の思うに、そこにも多分、嘘が書いてあるはずだわ…。集められる限りの情報と、今のガロ信仰が行っている蛮行の例に従えば、禁書だって為政者が仕組んだ罠で、真実からは程遠い偽物の歴史のはず…。ギルドはまだ、ここまでの推察に至ってないけども、私は既に、それを十分に暴いたわ…。神学校が言う、フラン家の呪いや、王家の威光なんてものが存在しないように、至高神としてのガロもまた、仕組まれた偶像のはず…。…まぁ、これは暴いたって言っても、やっぱり私の予想の範疇でしかないんだけれども…」
「まぁ…、その…、色々話したけど、その先に真の歴史を埋めていくことは本当に難しいわ…。歴史は、遺跡や遺物を分析して得られた情報を基に、パズルに取り組むように、組み合わせて読み解くしかないから…。真の歴史は、決して誰かの幻想の中に紡がれるものではないから…」
「だから…、私は仕事が好きよ。特に、歴史を歪めようと暗躍する、王家や、フーシェや、…フラン家みたいな奴らがいるって分かってるからこそ、燃える。犯罪者になっても解いてやろうって気になる…。真実を白日の下に晒してやろうって気になる…」
ここまで冗長に話して、マリエットはようやく熱から冷めた。そして、ラディにとっては凄くつまらない話をしてしまったと自責した。
「…滅茶苦茶熱く語っちゃった。ごめんね」
「何話してるか、分かんなかったよね」
しかしマリエットは、反省しながらも、最後に言いたいことを付け加えた。
「…でも、たとえ話の内容が分からなくても、この仕事が楽しくて、人生をかけて熱中できることだって、それだけは伝わってくれてると嬉しいな」
そう言って、彼女はラディに微笑みかけた。
…マリエットの予想した通り、話は、ラディにとって余りにも難し過ぎた。だから、彼女は内容を一切理解出来ていなかった。
情報は、右耳から左耳にかけて、通り抜けていった。マリエットの話が生み出した結果とは、無であった。
…話の内容なんかよりも、ラディは、話している間に鋭く前を見ていたマリエットの眼を見つめていた。
それは、意志の眼であった。
強い眼であった。
生者の眼であった。
彼女はそれを見つめていたから、だから、難しい話の後でもふんわりとした幸せに包まれていた。
「かっこいい…」
弱い自分を覆い尽くす程の強烈なエネルギーを放つマリエットに、彼女は更に惹かれざるを得なかった。
彼女はもう、惚れて、絆されて、しょうがなかった。
…ただ、そうやってマリエットに惹かれるほどに、ラディは何だか自分がちっぽけな存在に思えてきた。
「マリエットには…、夢があるのですわね…」
夢。
弱い自分には無いもので、強いマリエットには溢れているもの。
「夢?そんな大層なものじゃないわよ」
「ただ単に、楽しいからやりたいことってだけよ」
「それでも、凄いことですわ…。素敵なことですわ…」
「私には、そういうものがありませんもの…」
ラディは心の内が寂しくなって、マリエットのジャケットの袖をキュッとつまんだ。
「ねぇ…、やっぱり、あの言葉は訂正してもらえないかしら…?」
「あの言葉?」
「えぇ…」
「私のことを『強い』って言ったこと…」
「嫌よ」
マリエットは即答した。
そして言った。
「夢はともかく、やりたいことは誰にだってあるわよ」
マリエットの声色は少し鋭さを持ち始めた。
「ラディにだってあるはずだわ」
「いや、無いはずがないわ。ラディは多分、やりたいって考えていることを『馬鹿げたことだ』って自分で決めつけて、見ないふりをしているだけよ。それか単純に何も考えていないから、見えるものも見えていないだけか」
「だから、ラディも心の内をちゃんと見てみたら、絶対にあるはずよ。やりたいことが」
マリエットは力強い、しかし優しい口調で言った。
「私の…やりたいこと…」
マリエットのジャケットをつまむ手と反対の手を胸に当てて、ラディは目を閉じた。
意識を内側に向ける。心の内を見る。
…タバコのせいで、いつもよりも頭がふわふわする。ただでさえ考えることが苦手な脳が、更に軟弱になる。
しかし、しっかりと自分の内に問うてみると、春先にぽつぽつと土から顔を出すつくしのように、深い考えに練磨されていない無邪気な考えが微かに現れ始めた。
「あ…」
そしてラディは、一つ、初めて殺される前に考えていたことを思い出した。
「レジティ…」
ラディはおもむろに呟いた。
「レジティ?アンタの妹の名前だっけ?」
「知ってますの…?」
「当り前じゃない。有名人よ?」
「…あぁ、つまり、アンタのやりたいことってのは、生き別れた妹に再会することなのね?」
ラディは首を小さく横に振った。
「そうじゃなくて…、私は、レジティのことを…」
「殺したいですわ…」
「えっ…!?」
マリエットは予想外の一言に動揺して、つい、ラディにもたれる自分の身を正し、僅かだが、彼女から距離を取ってしまった。
「えっ…いや、えっ…?」
お菓子を食べたい、くらいのテンションで呟かれた殺人の意思に、マリエットは驚いて言葉を詰まらせた。
そんな彼女に対して、ラディは、ぽわんとした雰囲気のまま、小首を傾げるだけであった。また、マリエットから急に距離を取られたことに、悲しそうな顔をするだけであった。
マリエットは、動揺しながら尋ねた。
「ラディ…、妹を殺したいって一体どういう…」
「…私、処刑で殺される前に、レジティにいっぱい馬鹿にされましたわ…。それで、凄くムカつきましたの…。縛られて、目隠しされて、何も見えない中で、目の前にいたあの子に向かって『殺してやる』って何度も叫びましたわ…。だから…」
「だから、ラディは…、その、妹に復讐をしたいの…?」
「うん…」
ラディはコクンとうなずいた。
それは、おもちゃが欲しいと駄々をこねる子供に、このおもちゃが欲しいの?と尋ねた際に返されるような、純粋で、いじらしい、可愛いらしいうなずきであった。
「…あぁー」
マリエットは言葉に迷った。
実のところ、マリエットはラディがやりたいと言ったことを全力でサポートしたいが為に、彼女に何かやりたいことはないのかと強く尋ねたのであった。
しかし、その答えは流石に擁護できない行為であった。
マリエットはどうしようかと困惑した。
色々と考えてみた。
その末に、とりあえず、これだけは言うべきだろうということを伝えることにした。
「ラディ」
マリエットは表情を真剣なものに変えて、ラディに言った。そのために、幼子のような彼女はビクッとして、オドオドとし始めた。
「な、なんですの…?」
しかし、マリエットは真面目に続けた。
「ムカついたから殺すって、それはダメよ」
「えっ…?」
途端、ラディは意表を突かれたという反応を示した。
この国ではスープも手で掬って食べてくださいと、自分の中には存在しない常識を伝えられて困惑したかのような反応を示した。
「なっ、なんで…?」
「いや、なんでって…、そんなのダメだからに決まってるじゃない」
ラディは、言っていることがよく分からないという表情をしながら、マリエットの顔を覗き込んでいた。
純粋で、無垢で、何も知らない赤ん坊のような様子で、マリエットの顔を覗き込んでいた。
そこで、マリエットは推察した。
…只今に現れた、隠しきれないほどの異常性。これこそが、かつてラディが必死に隠そうとしていた"悪女ラディカ"の狂気なのだろう。
ついこの間に決別したはずなのに、床下に住み着いたゴキブリのように、しぶとく、しかし確実に現れる良識の欠如こそが、彼女が只今に囚われている呪いなのだろう。
彼女にまとわりつく、ツタであり泥なのだろう。
そして、理解した。
ラディの根本的な問題は、純粋無垢と、知識の無さ、そして想像力の欠如だ。
悪いことをする理由は、決して、彼女の本質が悪だからではない。単に、善悪を峻別するための判断材料を持っておらず、また、言動に対する未来を予測できないからに過ぎないのだ。
だから、こんなにも可愛い顔をしながら、他者に殺意を抱けるのだ。
彼女には、色々なことに触れ、そして、考える機会が必要なのだ。
そうして、何が良くて、何が悪いかを自分の力で導き出せるようになる必要があるのだ。
それはまるで、赤子に生まれ落ちた世界について教えるように。
ならば、この言葉を伝えることが良いと、マリエットは判断した。
「…わかった。妹に復讐したいっていう、アンタの気持ちは理解したわ」
「アンタはこれから、それを夢にして、いっぱい頑張るといいわ」
「でも、その前に、ただこれだけ、私が今から言うことを覚えるだけはしてくれる?」
「…!マリエットの言うことなら…、何でも聞きますわ…」
マリエットは素直なラディに微笑みかけた。
「…本当にそうなら、夕飯だって食べてくれれば良かったのに」
そう呟いた後、マリエットは一拍置いて、発した。
「ともかく、これだけは覚えて」
「復讐は悪いこと、良くないこと、やったところで幸せになれないこと」
「これだけ、いい?覚えた?」
「復讐は悪いこと…、良くないこと…、したとこで幸せになれないこと…」
ラディは九九を覚える子供のように、マリエットの発言を何度も復唱した。
そして、マリエットの方を向いた。
「言葉の意味はあまりピンとは来ませんが…覚えましたわ…」
「マリエットの言ったこと…、一生忘れませんわ…」
「なら…、よし」
マリエットは、改めて、ラディの肩を抱き寄せた。そして、彼女の頭を優しく撫でた。
動作はゆっくりと、いっぱいの愛情をもって、まるで我が子を安心させるように、静かに、大切に彼女の頭を撫でた。
…少しずつ、少しずつでいい。
私の前では、醜いトコロをいくら見せてくれたって構わない。
矛盾して、間違って、罪を犯してくれても構わない。
その度に、私は必ずアンタに向き合う。
…色々知って、よく考えた結果、やっぱり“悪女ラディカ”でいたいと言うなら、それでもいい。その時は、"悪女"としてのアンタを、私はこの上なく好こう。
…でも、"悪女ラディカ"でいるのはもう嫌だと結論付けたのなら、私はそこから抜け出す手助けをする。絶対にする。
だって、私はどんなアンタでも可愛くて好きだけど、自己嫌悪をやめて、今よりもっと幸せそうに笑うアンタはきっと、もっと可愛いから。
最高に可愛いアンタを見て、私はアンタを最高に好きになりたいから。
だから、絶対にそうする。
たとえアンタに嫌って言われて、拒絶されたって、絶対にそうする。
…覚悟してなさいよね。
マリエットは、いつの間にかスヤスヤと眠ってしまっていたラディの寝顔を見ながら、そう心に決めたのであった。
夜は、たとえ焚き火が無かったとしても、温かくてしょうがなかった。
…それからしばらくして、夜が本格的に暗闇を見せ始めた頃。
「おい!可愛い娘共!…ってなんじゃ。ラディはもう寝てしまったんか?」
今日分の仕事の全てを終わらせたベイが、何故かウキウキしながらマリエットの元にやってきた。
「…ベイの分はそこにあるわよ」
マリエットは、自分にもたれて眠るラディを起こさないように、小さな身動きで猪肉の串を食べながら、ベイの分の串が刺さった地面の方を顎で指し示した。
「あぁ?メシ?そんなことはどうでもええ!それよりもお前、これ見てみろ!」
ベイは興奮気味に、遺物の詳細をまとめた台帳をマリエットの前に出した。
雑が気質のベイが記したとは思えない、綺麗で緻密な文字の羅列と遺物のスケッチ群が、マリエットの瞳に映った。
「…これがどうしたの?」
「分かんねぇか?これ!これじゃよ、これ!壺ん中に転がってた破片についての項目見てみろ!俺が発見した素晴らしいことが書いてあんだろ!」
「ベイ、うるさいからちょっと静かにして。ラディが起きるでしょ」
「あ、すまね」
マリエットは雑なベイに呆れた後、ベイが指し示した部分に目を凝らしてみた。
「…え?」
そして、静かに驚愕した。
「地図…?」
「そうじゃ!そうなんじゃ!地図があったんじゃ!っても、肉眼じゃあ見えない程に小さかったがな!だが『ジャー』の精密なルーペを使ったらハッキリと見えた!」
ベイは先ほど食らったマリエットからの注意をもう忘れて、嬉しそうに叫んだ。
それほどの発見をしたのだから、無理はなかった。
「まぁ地図っつっても、大昔の地名で三角作って一点の座標を示しとるだけじゃがな。だが、これが示す地点は間違いなく未調査の場所!ギルドの調査を網羅して、フーシェの記録を盗視してる俺が言うんだから間違いねぇ!ここには間違いなく、俺たちの知らねぇ何かがあるんじゃ!」
興奮の内容を理解して、マリエットも鳥肌を立てた。
「かつての冒険者達と、フーシェの奴らによって隅々まで調査され尽くしたはずの『フランガロ』に、未発見の何かがあった…」
マリエットは目を輝かせてベイの方を向いた。
ベイも、マリエットと同じ気持ちであった。
「あぁ、そうじゃマリエット!そうと決まったら今すぐ行動するぞ!」
「えぇ…!もちろんよ!」
マリエットは、手に持っていた串を地面に差し戻した後、猛って言った。
「今夜中に依頼の仕事は全部終わらせて、一刻も早く、その場所に向かうわよ!」