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3話 ミーアは思い出しました!

 美亜がお空に召された日、雲の上で待っていたのは、綺麗な女神様だった。

 

「ようやくここに来てくれたわね。最早レベルの限界突破、世界記録かと神の不甲斐なさを感じていた所よ。あ、私は神よ。あなた達を幸せに導くのが仕事。やっと仕事をさせてくれるようで嬉しいわ」

 

 よく喋る女神様だった。

 驚く美亜に、マシンガントークをかますと、女神様は目の前の大きな天秤に乗った、光る何かを測り始めた。

 

「236万ポイント!!はぁ!?……こんなに溜め込んで。あなた、自分があの世界にどれだけいたか、分かってる? もう、とうにレベル九十九歳は超えてるのよ。しかも、魂だけになってからもポイントを、コツコツ貯め続けるから、交換するものがなくなっちゃったじゃない。さあ、こっちにいらっしゃい。今からそのポイントの使い方を一緒に考えましょう」

 人間の姿に戻った美亜の肩を抱き、女神は雲のソファーにふわりと座らせる。

 

「ポイント?」

 首を傾げる美亜に、親切に説明してくれる女神様。

 

「そうよ。ポイントは……そうね、今の世で流行ってる、『いいね!』みたいなもの。人や動物やなんかの生き物から与えられるの。普通それは、ラッキー!とか言いながら、幸運としてちょっとずつ消費しちゃう事が多いのだけど、あなたの場合、スキルとして消費したようね。あ、スキルってのは、強い願いの事よ。近くにいる神が気付けば、願いをその人の特色として授けてくれるの」

「すごいですわ!神様って割と近くにいらっしゃったのですね」

 嬉しいと顔を綻ばせるミーアに神様は頷くと、透明なボードを開き、何かを読み上げ始めた。

 

「それで、獲得スキルは、と……疲労回復、肩こり緩和、血行促進……あなた、温泉の素かしら?」

「久我邸のお風呂はとても人気でしたのよ!」

「それは……変わったポイントの使い方をしたのね。あとは、滋養強壮、栄養補給って……栄養ドリンクかよ……」

「コーヒーを飲むと、皆様元気になるって、大評判の店になったのですよ!」

「そう、良かったわね。まだあるわぁ……治癒に浄化に安眠……」

「宿屋の時は……」

 女神は美亜の口を、サッと片手で止めた。

「大丈夫、想像出来るわ……なるほど、座敷わらしね。何コレ、消費ポイントは異様に高いものばかり。だけど、それを誰彼構わず使ったおかげで、更にポイントを稼ぐ結果になったみたいね。呆れた」

 

 ちょん、と小さくなる美亜。

「ごめんなさい」

「別に責めてる訳じゃないのよ。いいわ、まずは、転生先を考えなきゃ。これだけあるのだから、選り取りみどり……ああ、でもあなたは時空の魔女の魔法にかけられていたわね。厄介な魔法よ、これは私では解けないの。神は人間同士の諍いには関与出来ないからね。だからあなたの転生先は、その魔法を解ける可能性のある者がいる場所にしましょう。そして……ちゃんと面倒を見てくれるくらい裕福な家庭。そこそこ自由に遊べる伯爵家くらいがいいわね。うーん、それでもポイントを使いきれない。全然余るわね。……仕方ない、大量消費の為、私が願いを一つ叶えてあげるってのはどう?何か望みは?」


 美亜は顎に人差し指を当て、うーんと考える。

「あ、あのね。私、お花や畳、もっとたくさん触れたいわ」

「それはね、あなたが幽霊だったから触れなかっただけよ。今回は転生だから、肉体は標準装備。だからその願いはノーカウントね。転生先では普通に触れるわ。他にはないの?」

「う――ん。あ!私、皆を幸せにしたいですわ!」

「そんなスキルあったら、私がとっくに使ってるわ。思った以上にあなた、ふわっふわね。だけど……分かったわ。それっぽいのをガッツリつけておいてあげる。希望がないのなら、それの限界突破枠を初期状態から付けておくってのはどう?普通は死ぬほど鍛錬してもなかなか手に入れられないものよ。あなたのその性格だと、スキルレベルマックスは一瞬でしょうからね、これくらいしないと、またポイントが溜まり続けるでしょ?ふっ……これ、魔女も浄化出来そうな勢いね。これでも125万?。残り111万は繰り越すしかないわね……これも例外よ。今度の転生先では、魔力として使えるようになるから、今度こそは自分の幸せの為にしっかりとポイントを使いなさいね」

「今度こそって……私、ずっと幸せだったのに、不思議な事を言うのね」

 ポカンと見上げる美亜を見て、女神様は頭を抱えた。

 

「ダメだわ、この子。ふんわりし過ぎてる。このままだと、新しい体でもポイントを溜め続ける事、間違いなしね。そうね……アラートをつけましょう。いい?ポイントが増減する時は鳴るから、それを目安に使い方を考えるのよ。くれぐれも溜めすぎない事」

「溜め過ぎたらダメなの?」

「繰り越しは今回だけの処置よ。次は流れちゃうの。あなた、せっかく皆から貰った好意をブラックホールに捨てるつもり?」

「それは……とても申し訳ないですわ」

「そうよ、だから使いなさい。さあ、そろそろ時間。行ってらっしゃい。しっかり幸せになるのよ」

 

 女神様に立たされ、背中を押される。

 美亜は綺麗なお辞儀をし、手を振った。

「はい!皆様からもらった大切なポイント。無駄にはしません!」

 

 美亜は心意気も新たに、新しい世界に踏み出したのだった。

 

◇◇◇


「ポイント!忘れていましたわ。あの時111万?とかでしたわね。今はどの位かしら?」

 流石にもう残ってないだろう、とミーア が首をひねると。

 

『ポン!現在ポイント、112万8652!』

 頭の中に無機質な女神様の声がした。

 

「増えてますわ――!!」

 その時、お日様が上がったのか、ミーアはふわふわと姿を変え始める。

「時間を忘れてました……わ……」

 その声は霧となって消え……。

 

 今までミーアがいた場所には、たんぽぽの綿毛の様な真っ白な猫が、ちょこんと座っていた。

 月下病の不思議な所は、身につけた衣服ごと姿が変わる事。

 

「ミャ――」

(お掃除道具、片付けなきゃ)

 ミーアは、目の前に置きっぱなしの大きな雑巾に、タシッ!と爪に引っ掛け、引っ張る。

 でも、疲れがミーアを襲い、睡魔が訪れ……。

 

 この所、礼儀作法(カミラ流)やダンスの練習(プリシラの真似)で忙しい夜を過ごしてたから……猫になると、とても眠くなる……の。

 ミーアは睡魔に抗えず、体を丸めて目を閉じた。

 


 朝の見回りをしていた執事アルバートは、廊下の隅に丸まる白猫を見つけると、そっと抱えあげ、伯爵の目に触れないよう、カミラの部屋へと運ぶ。

 だが、途中、ふと見た廊下の窓の外。門の前に停る真っ黒い馬車に気付き、眉を寄せた。

 

「あの馬車……引いているのは魔獣でしょうか」

 馬のように見えるが、あれは角を切った魔獣で間違いないだろう。

「スタンリー家。厄介な。ミーア様に害がないといいのですが……」

 その表情は険しい。だが……。

「はぁ、全く。こんな日までお手伝いする事はないのに。優しい妖精さんにも困ったものだ」

 ミーアを見るその瞳は優しく、普段のかしこまったものとは全く違うものだった。


『ポン!ポイントプラス 2!』

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