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日常の依頼


ドローロが向かう先は街の中心、2階建ての建物だ。


冒険者への依頼を集約、そして管理する組織がそこにはある。正式名称はあるが、一階が酒場を兼ねているために酒場(バル)と呼ばれている。


「おはようございます」


 バルの中では既に出来上がっているものや、依頼が張り出された掲示板を物色するものがいた。


「今日も定刻ですね。皆さん不規則に来られる中で時間を守られるのはあなただけです。見習って欲しいものですね」


受付の女性はそう言って笑いかけた。その次に続く言葉をドローロは何度も聞いているために先にぶった斬る事にした。


「バルの職員にはなりませんよ」

「むー、良いじゃないですか。ここの職員って結構人気なんですよ。あなたぐらいきっちりしている人じゃないと務まりませんし」

「そのかわり国家諜報部の仲間入りでしょう? そんなことしてたら命がいくつあっても足りないです」

「でもでも、もったいないですよう」

「今の生活で十分ですから」

「はーい……それじゃあいつもの奴ですね」


 ドローロにとって見慣れた依頼だった。薬効のある草の収集に、周辺に現れる低級の敵を討伐する依頼。


「おいおい、そんな雑魚依頼を受けてんのかよ!? それでも男か?」


 見慣れない男だった。


 この街に定住している者ではなく、最近流れてきた者であろう。男はヘラヘラと笑いながらドローロに近づき、胸ぐらを掴み上げた。


「なあガキ、せっかくだから教えてやるよ。この世界がどれだけ危険かをな」


 男は拳を振り上げる。


「すみません。これでも歴は長い方で、危険があるのは分かっているつもりです」

「……」


 無言で男が受付に視線を飛ばす。返ってきたのは肯定の頷き。それと早く手を離せという意志だった。


「悪かった。ついこないだお前くらいのやつが依頼で死んだ。お前も同じかと思ってな」

「心遣いありがとうございます」


男が手を離す。露悪的な表情は失せ、歴戦の空気を纏っていた。


「邪魔したな。死ぬなよ」

「それでは機会がありましたらまた」


ドローロはいつもの依頼へと向かった。




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