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展開の裏

スイガクがいなくなろうとした時、アカとコロの反応はあまりにもおかしい。


事実、周囲の人間は救急車を呼ぶ寸前であった。


2人とも非凡そのものであり、滅多なことでは取り乱さないように見える。


実際、コロは紛争地帯であろうと鼻歌混じりで歩けるし。


アカは全身を鎖で縛られて北極海に投げ出されても泣き言一つ言わない。


そういう覚悟を、経験を積んでいる。


だが、彼らが積んでいない経験が一つある。


それすなわち、友との交わり。


特異な環境に、特異な能力。


身内にさえ恐れられる彼らに同年代の友達などできようか。


いやできない。


できたとしてもそれは裏で何かが動いている。


コロは友達だと思っていた者に殺されかけること3度。


アカは擦り寄ってくるもの全ての身辺調査を欠かさず、全ての事情を把握している。


結果として、彼らが身につけた常識が。


【自分に友人はできない】


である。


そう思って生きてきた。


そう信じて過ごしてきた。


孤独は、寂しさは、疎外感は、自分の隣人なのだと。


そう信仰して生きてきたのである。


が、その信仰を揺るがす存在が突如生えてきた。


スイガクである。


休日にベンチで無防備に眠っているスイガクから財布を盗んだ者がいた。コロは気まぐれでそれを取り返した。スイガクは感謝し、食事を奢ると申し出た。


また何かの仕込みかと疑った。


疑いながら、なんとなしに食卓を共にし、一緒に遊んだ。


その間に無数の探りを入れ、なんなら50回ほど致命傷を与えようとしてみた。


だが、一切の怪しい点なし。疑いようもなく潔白、正真正銘ただぼんやりしがちな同級生であった。


コロはスイガクの存在に困惑した。


こいつは一体なんなのか、まさか、こいつは。


友達、になる奴なんじゃ……


淡い期待を抱いたコロの予感が確信になるのに時間はそうかからなかった。


アカには月に1度絶不調のタイミングがある。明確な前兆はなくいきなりやってくる気だるさと目眩、頭痛は気絶してもおかしくない強度である。


だが、アカはこれを他人に悟られたことがない。


全力で取り繕い、誤魔化し切ってきた。


しかしスイガクはそれに気づいた。


「気分悪いんでしょ? 保健室まで歩ける?」


アカは自分の秘密がバレた事に戦慄し、政敵が雇った存在かと疑った。


だが、どれだけ身辺を洗っても何も出てこない。出てきた特異なことは両親祖父母が他界しており親戚の家に住んでいることくらいである。


アカとは何も利害関係がない。政敵とも繋がりはない。


それらを棚上げにしても、気づいたとして強請ることはあれど助ける理由など。


ただの、親切?


私に?


一切なんの思惑もなく、手を差し伸べたとでも?


そんな馬鹿なこと。


興味を持ったアカはスイガクに近づき。数週間の試しを経て馬鹿なことが事実であったと確信した。


以上の経緯をもって、スイガクはボッチ人生を送ってきた2人の超人に友人認定されたのである。


それは、彼らにとって唯一無二の存在であり。


何者にも代え難い。


ゆえに、スイガクに気を遣わせた事は2人にとって衝撃だったのだ。


「ただ1人の友人に嫌われたかもしれない」


この事を考えただけで卒倒寸前までなるほどに。


この事実を踏まえて2人がスイガクに抱いている感情を簡単に言えば、超ヘビー友情と言う他ないだろう。












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