日常の展開
「んん〜、この月見っていうのはおいひいでふ」
「食いながら喋んなお嬢様だろ」
「良いんです。ここでなきゃこんな振る舞いできないので」
ハンバーガーを頬張るアカと呆れるコロ、そこにはもはや熟年の空気すらあった。
齢20にならない人生で10年以上の付き合いなので、この空気感はなんら不思議ではない。
「(お邪魔かな)」
空気を読んだスイガクはひっそりと席を立とうとした。だがその両腕はがっしりと掴まれ阻止される。
「どこ行くんだよ。お前が居なくなってどうすんだ」
「ダメですよ。スイガ君がいなきゃ」
「ええ……? でも邪魔でしょ」
腑に落ちないという顔で言った一言は、2人の胸に突き刺さる。
その衝撃たるや、2人の脳裏には大量絶滅を引き起こした隕石の如きインパクトをもたらしていた。
「あ、あわわ、あわわわわ……がくっ」
「か……は……」
驚くなかれ。今の一言でコロは泡を吹き意識を消失。アカは呼吸の仕方を忘れて窒息しかけていた。
「ちょっ……!? 大丈夫!?」
瞬く間に死に体になった友人2人をどうすれば良いか分からず。スイガクは手を握る。
流石に普段はダウナーなスイガクでも、この事態には驚いていた。これで少しでも事態が良くなってほしいと祈っていた。
「はっ!?」
「はー……はー……」
二度と戻って来られない場所半歩手前くらいから帰還した2人である。
有り余るスペックでもって事態を理解し、最善手を導き出した。
「お前が邪魔なんてことはない。絶対にないから、もう言わないでくれ。良いな?」
「お願いですから。たとえどんな状況でも邪険にすることはないと誓うので。ね?」
「え、あ、うん。もう言わない」
胸を撫で下ろす2名を見てスイガクは思う。
「(2人とも持病でもあるのかな?)」
自分の言葉がこの事態を引き起こしたとは万が一にも思っていないのだった。




