日常の出会い
「あれ? スイガ君どうしたのこんなとこに」
「課題やってたけどコロが花を摘みに行った」
スイガクをスイガ君と呼ぶ女生徒が通りがかる。この女生徒はスイガクの名前を聞き間違えたのだがそれをそのまま呼び続ける猛者である。
「あー、コロちゃんか」
「そう。だから暇になってぼうっとしてた」
「あはは、スイガ君はいっつもそうでしょ」
「まあ、それもそうなんだけど」
他愛も無い会話をなんとなく続けていると、小走りでコロが戻ってきた。先ほど1人始末したとは思えないほどの自然体である。
「やー、なかなか混んでたぜ」
「こんにちわコロちゃん」
「げ、アカかよ」
「その反応はちょっと心外かな」
「何言ってんだ。お前がいて厄介なことが起こった回数を数えろ」
「回数? コロちゃんは今まで刈ってきた雑草の数を覚えているの」
「あーはいはい。一色グループの跡取りにゃあ学生レベルのゴタゴタは数えるものですらねえってか」
一色グループとは、超デカイ会社である。世界の1割は一色の傘下にあるとまことしやかに語られているほどだ。
その跡取りと噂されているのがこの無色アカである。言動の端々に滲み出るお嬢様感もとい金持ち感がその理由である。
「アカさんはなんでここに? 普段は車で直帰でしょ」
「ふふふ、それがですね。今日はたまたまリムジンが不調で」
「そうなんだ。大変だったね」
「ええ。大変でした」
嘘である。
リムジンに細工をしたのはアカであるし、一台が不調なくらいで送り迎えがなくなるなどあり得ない。
今の状況はアカが計画して作り出したものであった。
「そしたらスイガ君と会えましたし。あながち悪いことばかりでもないようです」
「何言ってんだか、予知通りだろ」
「な、に、か、言いましたか」
「なんでもないでーす」
アカには秘密があった。
厳密に言えばアカの一族には、だ。
雑な表現をすれば超能力者となる。
手を触れずにものを動かし、未来を予知し、透視も可能である。
「(スイガ君の前で同じことを言ったら、契約切りますからね)」
頭の中に声を飛ばすことなど朝飯前。イメージを飛ばすこともお茶の子さいさいである。
今アカが送ったイメージは首が飛んだコロである。アカの一族はコロの仕事相手でもあった。
「分かった、分かった、余計なことは良いませんよ。赤ずきんの機嫌を損ねると大変だからな」
「赤ずきん?」
「ななな、なーんでもないですからスイガ君!!」
慌てふためくアカ。
赤ずきんとは、最近話題になっている人物であり。人助けをしては去っていく謎の女性であるという。
「(スイガ君にバレたらどうするんですか!!)」
「ぴゅー、ぴゅー」
「下手くそな口笛ですね!!」
目の前で水面化も攻防を繰り広げる2人。それを見てスイガクはこう思っていた。
「(仲良いなあ)」
スイガクが彼らの秘密に自分から気づくことは永劫ないだろう。




