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僕がモルと出会ったのは、今から4ヶ月近く前のことだ。
変わり映えのない毎日に、変化のない交流関係。
17歳の僕は、いわゆる陰キャと呼ばれる部類だった。
勉強も運動も顔も身長さえも凡てが平均。
学校では似たようなジャンルの友人たちと他愛ない会話をしてふざけあって過ごす。
たまに隣のクラスの高見まどかちゃんを遠目から眺めるのが楽しみだった。
まどかちゃんは、別に学年1かわいい女の子ではない。
学年で3番か4番目ぐらいにかわいい子だ。
それでも僕がまどかちゃんに惹かれるのは、彼女の誰に対しても分け隔てなく向けてくれる笑顔だった。
まどかちゃんは笑うと涙袋がぷくりと膨らみエクボができる。
丸顔だからか余計に赤ちゃんのように純真無垢な屈託のない表情だ。
それがとても可愛らしく、もちもちの触り心地の良さそうな肌を連想させてくれる。
去年の今頃、僕と同じクラスだったまどかちゃんのその笑顔を間近で見て以来、まどかちゃんは僕のオアシスとなっている。
ただ見つめているだけでよかった。
ちゃんと自分の立ち位置は分かっているつもりだし、何より釣り合わないことは明白だ。
まどかちゃんも含め、彼女の周囲の子たちも運動部や派手な容姿の子だったりと陽キャばかりで、いわゆる一軍と呼ばれる集団だったのだから。
ヒエラルキーの段階で釣り合っていないのだ。
だから身の程知らずな願いなど抱くつもりなどなかった。
そんな僕の意識を変えたのは、ごみを捨てに向かっている際、旧校舎の裏へと走っていくモルを見かけたためだ。
最初は子犬かと思って、つい追いかけてしまった。
校内に犬が迷い込んだとなれば、陽キャ共がはしゃぎ出すだろう。
その様子を見ているのは何となく不快だった。
まあ、まどかちゃんも嬉しそうにしてくれるならまだましだけれども、あいにくまどかちゃんは今日はお休みである。
僕はひっそりと校内から子犬を出そうと追いかけた。
が、追い付いた先で見たのは、かわいい子犬ではなく、青色のエイリアンと2本立ちするモルモットだった。そのモルモットが青色のエイリアンを足蹴にしている。
めちゃくちゃシュールな光景だった。
僕は、ひっそりとその場を後にしようとしたが、待て!と呼び止められて、足を止めた。
「僕たちの事、見えてるんでしょ?」
「見えてません。」
「はい、ウソ~!!それ、見えてるときのリアクションー!」
え…何このノリ……。うざっ!?
「僕たちが見えてるってことは、君には特別な力があるんだよ。世界を救う力がね。誇っていいよ?」
モルモットがどやる。
中二病をほぼほぼ完治している僕からしたら、何一つ惹かれる話ではないです。
そういう痛い話はお腹一杯ですから。
そもそも痛すぎて食欲さえ起きませんけど~。
まぁ違う意味でモルモットに対してひかれる感情はあるが、どやってる当人は気付くことは一生ないだろう。
僕は反応をせず、無言でゆっくりともと来た道へと歩き始めた。
「停まれや!そこの……えっと、特に特徴のない人間!!」
なんか、普通に見た目の罵倒されるよりも傷ついた……。
いや、それは嘘。
罵倒される方が精神的にきついか。
そもそも僕は見た目を罵倒されるほどの特徴もないようだが。
僕は、足を止めてしまう。
「世界を救うことのメリットを教えてあげる。まず、正義のヒーローになれます。」
中二病、おつ。
「だから、停まれって!!」
僕はため息混じりにモルモットの方を見る。
「メリットその2!人間目線からしたら、魅力的な僕と一緒に居られる~。」
おつ、おつ、お疲れさま~。
「め、、メリットその3!!!全て終えたら、何でも願い事が叶います!!」
僕は再び、足を止めた。モルモットは食いついたと嬉しそうに目を輝かせる。
「億万長者にだってなれるし、イケメンに生まれ直すこともできる。この世の全ての知識を手に入れることもできちゃう。」
「その代償は?」
「代償?ないよー。ただ、願い事次第で僕らのコキ使いレベルが変わるかな。」
コキ使いレベルって何ぞや。
モルモットは僕をじーっと見る。そしてニヤリと口角をあげた。
「好きな女の子がいるんだ~。……まどかちゃんって言うの?まどかちゃんの心も鷲掴み出来るよ~。」
こいつ…僕の心を読んだのか…!?
一気に信憑性が強まっていく。
「それなら、悪さをしているワルワル人を地球から追い出すだけで手を打とうかな。」
「ワルワル人?」
「そう、人間に混じって地道に地球侵略をしていこうとしてるせこい連中。さっき僕が倒したのもワルワル人だしね。
どう?世界平和も出来て一石二鳥でしょ?」
なんか、あれなら勝てそうだな。
僕はこくりと頷いた。