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コソコソと話す声とあざ笑うかのような笑い声。
チラッとこちらを見てはその繰り返し。
たまにカシャッとスマホのシャッターの音が聞こえて、それを見てクスクスと笑い合う子たち。
全てが私に向けられた悪意としか思えない。
私は耐えられなくなって教室を出た。
「やっと空気が良くなったわ。」
わざと大きな声であの子が言った。
それに同意するようにキャハキャハ笑い始める周囲の子たち。
私は急いで保健室へと向かった。
「また来たの?」
保険医が少し呆れたように告げた。
私は俯きながら無言で頷いてみせた。
「放課後まで居させてください。」
「奥のベッドは空いてるから使っていいよ。」
保険医の言葉に私はお礼を言って、案内されたベッドに横になった。
同時に涙が出た。
卒業するまでこんなことが続くのかな。
鼻をツンとする薬品の香りは何故かとても安心する。
最初はこんなんじゃなかった。
学校に行くのが楽しかった。
一緒におしゃべりしてくれる友達もいた。
けど、気づいたらこんな状態になってた。
きっかけなんてわからない。
私が何をしたのかもわからない。
何故嫌われてるのかわからない。
始まりは、お気に入りのシャーペンがなくなったところからだった。
シャーペンがなくなって、翌日には教科書がなくなって、その次はお弁当がなくなった。
必死に探すとゴミ捨て場に無惨に捨てられていた。
悔しくって悲しくって担任に相談した。
担任は他の子に聞いてみるといって、私と仲の良い子たちに話を聞いたらしい。
そしたら、翌日から無視されるようになった。
それも担任に相談したら、今度はクスクス笑われるようになった。
しばらくしたら隠し撮りされたり、私を汚物扱いしたりするようになった。
「されてるってちゃんと見たの?君の勘違いじゃないか?」
担任はそう言って、私に関わらなくなった。
私を見捨てた。
結局、めんどくさくなったのだろう。
誰も私を助けてくれない。
私はずっと耐えるしかないのだ。
放課後になり、私は教室に荷物を取りに向かった。
教室にはまだあの子達がいた。
あの子達は私を見るとクスクスまた笑いだし、
「授業も受けないなら、学校来てる意味なくない?
もう来なきゃいいのにね〜。」
「それ不登校だから高校いけなくなっちゃうんじゃない〜?」
「勉強もしないなら高校行く意味ないから別に気にする事ないでしょ。」
わざと聞こえるように話してくる。
もう嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。
誰か助けてよ!!!!!!
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「なぁ、本当にあの子、ワルワル人なの?」
中学女子の日常を見て、僕は恐る恐るモルに尋ねた。
「ワルワル人で間違いないね。」
モルは断言した。
「いやいやいや!!!あれ、被害者でしょ!!どっちかって言うとワルワル人は首謀者の方でしょ!!」
モルのワルワル人センサーによると、いじめられてる女の子はワルワル人ということらしい。
全然、悪さしてないじゃん。
「人の和を乱す。立派な悪事でしょ。」
「けど、あー言うのって、あの子じゃなくてもターゲットにされるもんでしょ?誰かを仲間はずれにする、女ってそういうのあるじゃん。」
「君の大好きなまどかちゃんもそういうことするの?」
「しないけど…。」
僕は渋々、教室から泣きながら逃げ出した女の子を追いかけた。
女の子は学校から出るとトボトボ帰宅し始めてるようだ。
「今がチャンスだよ!怜一!!」
モルの声でやっぱり渋々と僕は女の子の前に現れた。
「人間の世に紛れて悪さをするワルワル人、成敗してやる!!!」
女の子は虚ろな目で無反応に僕を見る。
それ、やめて〜〜〜〜〜〜〜〜!!
僕は居た堪れなくなり、思わず素で2歩退く。
「えっとね?ワルワル人でしょ?なんで普通に人間社会で中学生やってるの?」
女の子は僕の問にゆっくりと話しだした。
「私達の故郷がなくなってしまったからです。」
???どういうこと?
「故郷がないから新しい場所で人間に紛れて生活しようということで、こちらの次元に移動してきました。」
???どういうこと?
「けど、魔法戦士で倒したワルワル人はみんな時空の歪みに引っ張られて帰還してるよね?」
「よくわからないけど、時空の歪みに引っ張られたということは、故郷があった場所に戻されたということだと思います。」
???どういうこ…「怜一、ちょっとしつこいよ。」
モルにストップをかけられた。
女の子はモルを見ると顔を真っ青にしてモルモル人!っと悲鳴を上げた。
モルは、怯えた女の子に飛び蹴りを食らわせた。
女の子は今までのワルワル人と同じようにぐふっと苦しみ、ワルワル人へと変貌する。
そして、時空の歪みに引っ張られて行った。
残された僕は状況が分からず、モルを見た。




