第1話「君の名は」
実況「さぁー!始まりました茶道世界最強決定戦第一試合!
場内から割れんばかりの大歓声!
おおっと"カナダの核弾頭"の異名を持つブライト選手が
お茶を泡立てているぞ~!もーのすごい勢いだ~!
完成だ~!すごい泡が立っている~~~!!
これは高得点が期待できそうだ!審判団が協議しています!」
ブライト「ククク…俺の泡立て技術は世界最高峰だ。
2か月前のカナダカップでは大会記録を更新したんだぜ。
この大会は国内だけじゃなく世界に名を轟かせる絶好の機会!
1回戦なんかで負けてられるかよ!」
実況「出ました!作法80点!泡93点!色84点!味81点!
合計点は…338点!いきなり高得点が飛び出したぞ~~~!?」
観客「うおおおお~~~~~!!!すげえ泡だぜ~~~~!!!!」
ブライト「ま、上々か…」
…くだらん。
ブライト「あ"…?」
くだらんと言っているのだ。
カナダの核弾頭ブライト。どんな男かと思えば、この程度か。
お前にはガッカリした。見せてやる、本当の茶道というものを…!
しゃか…しゃか…
実況「おおっと後攻のクリス選手、泡立てを開始しましたが…これは…?
すごくゆっくりシャカシャカしているぞ!?
これでは泡立たないのではないか!?」
ブライト「ヘッ!おおかた俺の泡立てを見て戦意喪失したんだろうよ!」
観客「なんだよー、マジメにやれー!」
……しゃかしゃか。しゃかしゃか。しゃかしゃか。
さ、仕上げだ。シャカァッ!
実況「…?え……!?ああ~~~!!!こ、これは~~!!??
クリス選手の茶碗からもの凄い勢いで泡が噴き出した~~!!
まるでマグマのようだ~~~~!!!!」
ブライト「なんだと!!!??」
ブライトよ。泡立ては力任せにガシガシやりゃあ良いってもんじゃねえ。
お茶に含まれる泡細胞を活性化させることが重要なんだ。
俺は泡細胞を繊細に刺激しながらシャカシャカしていた。
活性化された泡はお茶の中で暴走する。
暴走した泡に刺激された泡細胞が連鎖的に反応してマグマ化したんだ。
それだけじゃあねえ。泡細胞が活性化されたことで味も抜群に良くなるんだぜ…。
見てな。点数が出るぜ。
実況「すごい!すごすぎるぞクリス選手!
得点は…!?あああ~~~~~~~~~~~~~!!!!
作法91点!泡97点!色88点!味94点!合計…な、なんと370点~~!?」
ブライト「バ…バカな…」
フン。じゃあ俺は帰らせてもらう。二回戦の準備があるんでな…。
ブライト「待て…!君の名を聞かせてくれ」
いいだろう。
俺はクリス。クリス・グラボースキー。
人呼んで"茶道インポッシブル"!