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【1話】下ネタってあり? 前編

下ネタが苦手な方は即ブラウザバックをお願いします。

「ねえ、下ネタを言う女子高生ってどう思う?」


購買から買って来た惣菜パンを片手に、友人はそう発言した。しばし考えてこう答える。


「いや、それ私に聞く?」


「え、ダメ?」


「ユウが下ネタを私に言いたいけど、私がイケるか分かんないから遠回しに聞いたっていう意図なら私に聞くのはわかるけど、多分世間一般としての認識としてっていう意味の方の質問でしょ」


「うん、多分そう。なんで分かったの?」


「勘」


「わあ、すごい。さすがサキ」


「嘘、ユウが私にそんな気遣いできないでしょ」


「わあ、すごい。さすがサキ」


イントネーションを変えずに言えるあたり、こっちこそさすがユウとしかいいようがない。この図太さ、テキトーさは筋金いりだ。


「いいんじゃない、好きなら。人それぞれだと思うし。ま、節度はないとダメだとは思うけどね」


「節度って?」


「たとえば、こういう話を大声でしないとか」


「なるほどね!」


「さっきから声でかいよ、いつもだけど」


この子は基本的な会話の音量が基本大きい。学校の廊下で話しているから、人通りもあるのに、それをまったく気にはしていない。この会話中にも一人女子生徒が横を通って行ったし。


「あと、私が下ネタいけるとは一言も言ってないよ」


「え、いけ…イケないの?」


「別にいいけど、下ネタって笑いどころがわからないから。何がいいの?」


「え~そうだなぁ…」


友人は手元と口元を動かしながらしばらく考えて黙り込む。明太子パンは匂いがすごい。


「わかった!ちょっと待ってて!」


「え、うん」


包装に入った食べかけのパンをベンチに置き、駆けていった。一人になり、ユウの置いていった残骸のとなり隣で、私は弁当の箸を進める。午前中だけの補講日の昼なので人通りは少しあり、急に静かになった春の廊下に少しの寒さを感じながら、卵焼きをつついてみる。


ユウとは去年同じクラスで知り合った仲だ。席が近く、私が文学部、彼女は演劇部と文化系の部活で、かつ互いにあまり忙しくなかったので放課後フリーになることが多く、よく話すようになった。加えて、部活の日も基本毎週水曜と被っていたことも良かった。趣味はユウがドラマ鑑賞、私が読書とまったく合わなかったが、馬が合うのか、ショッピングやカラオケに二人で行くことがは時たまあった。そんな関係性は、学年が上がり別のクラスになった今でも続いている。


「おまたせっ」


「ん」


「はいこれ」


「ん?」


戻ってきたユウの手には、茶色の紙袋に入った本らしきものが握られている。普段本を読む姿を見たことないユウが何を持ってきたのだろうか。とりあえず箸を箸箱に戻し、それを受け取る。


「あ、ちょっと待って」


ユウが一歩二歩と後退し、廊下の左右を確認する。正面の教室には誰もいないが、その右隣の教室は電気がついていて座っている人が見える。正面の左隣の教室には誰もいないが、その奥の教室から何回か話し声は聞こえたので人はいるのだろう。


「大丈夫」


「ん?うん」


自分の家に帰ってから買った本を取り出すように、中身を取り出す。


「ん…?」


表紙を見て咄嗟に戻してしまった。


「これ…なに?エロ本?」


「同人誌」


「エロ本じゃないの?」


「そうともいう」


いや、そんな平気な顔で言われても。


「ま、とりあえず読んでみてよ。」


「え、ここで!?」


「うん」


「なんで??」


「ん?まずい?」


当たり前だ。


「人いないの確認したし、来たら言うし大丈夫だよ」


「いや、なんでこれを?」


「恥ずかしいの?顔赤いよ」


「っ!いやそういう問題では」


いつもは私が冷静でユウが感情的になる構図が多いのに、今日はおかしい。ペースが乱されている感じがする。意図が読めない。


「お姉ちゃんにもらったの。『私がそれおもしろいの?』って聞いたら『読んで見たら?』って。読んでみるのが理解するのに一番早いよって」


「…」


「だからサキにもそのやり方がいいかな…って」


「…」


どうしよう。


「いや、理屈はわかったけどさ。そもそも何でそんなもの学校に持ってきてるわけ?」


「いや~サキもどうかなーって。気になってね。念のため持ってきてはいたんだ。」


「その念の入れどころは別のところにも入れてほしいよね、持ち物とか課題とかさ」


「ふふっ」


どこから突っ込んで、どこから疑問を解消していくべきか分からない。そもそも今までの会話の流れは狙ってたのか。大方、下ネタという話題を何気なく振ってみたらたまたまいい流れができて、エロ本持ってきたのを思い出したってところだと思うけど。


「ユウはそれ読んで面白さがわかったの?」


「それはサキが読んでみたらわかるんじゃない?」


ユウの顔は楽しそうに口角が上がっている。ここまでユウに手玉に取られている感覚を覚えたのははじめてかもしれない。


「わかったよ、ちゃんと周り見ててね」


私は今になってみれば何を血迷ったのだろうか、そうして学校の廊下でエロ本を読み始めたのだった。

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