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7話


男は森の奥へ進んでいる


2人の男女が遠くの木の上からそれを監視する

枝から枝に移動する際にも一切音はしない

片方はその卓越した技術から、

もう片方は風属性の魔法による衝撃の軽減している


「お、あそこかな。」


「そうみたいだね。」


男は1本の木の裏側へ回り、消えていった

それを見てその部分が見える角度へ移動する

すると木の幹に中へ通じているであろう穴が隠されていた

近くを通るだけではまず分からないだろう

何故なら普段は樹皮で出来たカーテンがかけられていて、注意深く観察しないと違和感に気づけない


「んじゃ、ここで張り込みをするね。辺りの地形と他に出入口がないかも確認しないと。」


「ん、よろしく。」


リアはその場に残り、細密に地図を描く。裏口の数と場所、そして拠点を出入りする人間の数と顔を把握する


ラグは町へと戻る。ギルドは拠点は馬車で3日以内の場所と予想していたが、実際はもっと近く1日程度で済んだ。


馬車というが、この時代の道など都周辺以外舗装されていない上揺れが酷く自転車で走るぐらいの速度だろう

それに比べれば僅かな距離であれば身体機能を強化して走った方が早いというものだ。実際にそれを行う者は少ないだろうが


6時間程度走れば町につくことが出来た。全開ではないが長時間走っているので多少は疲れる。魔力の消費もある。

少し休憩してから人を探しに向かう



それは少し前の日のこと


「情報屋?」


「ええ、秘密裏に張り巡らされた部下を使って情報を集め、それを武器に商売をする輩です。」


「まぁ、短時間で今回の依頼を終わらせるにはそういうの人達の力を借りないとダメかな。」


「それもありますが、例の盗賊団がいつまでもこの町の近くに潜伏しているとは限りません。」


「高飛びするというわけか。」


「はい。そうなってしまえばかなり状況は悪くなるでしょう。」


「確かに。で、そいつらはどこにいるんだ?」


「分かりません。」


「は?」


話振っといて何だこの人は。やる気あんのか。


「諜報員自体は至る所にいるでしょうが、その情報を買える場所は不定期に変わると言われています。その人たちに会うしかないでしょうね。」


「ふむ。」


「心当たりはありますか?」


「あるにはある。」


恐らくだが…


「では会ってみてはどうでしょう?思いがけない情報も聞けるかもしれません。」


「私そういうの苦手だからパスでお願いします。」


「じゃあリアは拠点の様子でも伺ってるか?」


「うん。そっちの方がいい。」


ここでずっと黙っている男に話しかける


「あんたはどこまで組織のことは知ってる?」


できる限りこの男から情報を引き出せればいいのだが…


「いや、入ったばかりでボスの顔すら見たことがないさ…」


これでは厳しいだろう


「…お前はこれから数日の間、盗賊団の拠点に戻って普段通り活動しろ。その間、俺達のことは話さずにな。」


「え、でも捕まった2人のことはどう報告したら?」


狼狽えている。当然だ、捕まった上に今度はこれから一掃されることを黙ったまま仲間と行動しろと言うのだ。精神面の負担も相当なものだろう


「金品を奪った後に逃げたとか適当に嘘ついとけ。」


「断るというのなら即刻自警団に送っても構いませんよ?」


「うう…」


結局男は1つの文句も言えずに拠点のまで行くことになった。




「なあ、そこのお前。」


ラグは若い男の方に後ろから手を回す

若いといっても外見ではラグの方が少し下だが


「!?」


男は心底驚いているようだ。何故ならその男にとっては人生で初めて自分の尾行に気づいたことのある元標的だったからだ。


「ちょっと話があるんだけど、そこの路地に入ろうぜ?な?」


歌舞伎町のヤクザにも負けず劣らずの強引な連れ込み

唐突に身に迫る恐怖に、為す術もなく男はドナドナされる


「なぁ、多分だけどお前情報屋だろ?」


「そ、そうだとしたら?」


冷や汗をだらだらにかきながら相手を刺激しないように返答する


「いや〜ちょっと買いたい情報があるんだよ〜ほら、巷で噂になってる、盗賊団ってやつ?あいつらの詳しい情報をさ。」


「こ、ここではなんですので場所を移しませんか?今手元にあるわけでもないので。担当の人に話をつけますので。」


「ん。分かった。」


2人は町の中でも滅多に人のこない一角へ歩いていく


そこで屈強な男が2人ついている建物があった。家というよりはまるで廃屋。片付ける前のラグ達の家は高価な建築をされていたが、こちらは木造で経年劣化によって今にも崩れそうだ

しかし、その男達の前を2人は気にすることなく廃屋へ入っていく

こちらをじっとみていたが特に何もしてこなかった


中に入ると1つの部屋に出た。奥にはどこかに通じる扉があり、外観とは裏腹に綺麗に片付いていおり、一言で言えばアンティークな家具、この時代なら高級そうなものばかりが揃えられていた


中央のテーブルにはかなり高齢であることが一目でわかる男性が座っていた。


「おや、どうかしたのかな?クロ。」


「客です。例の冒険者です。」


「ほう、この方が…。どうぞコチラに。」


笑顔を向けながら着席を促されラグは席につく。その間老人から視線を離すことはなかった。見つめる眼光、漂う雰囲気から理解した。かなりの切れ者だと。


対して老人もラグの歩く動作の一挙一動とオーラから感じとる。

15かそこらの幼い見た目に惑わされるな。これは化物だと。


クロと呼ばれた男は老人の背後に立つ

少しの静寂の後に老人は口を開く。


「すまない。うちの若いのが迷惑をかけたようだ。」


「いいさ。こうしてあんたに会えたんだ。それで十分だ。」


「クロはうちの中でも技術はかなりの腕前と私も思っております。それを掻い潜るとは、貴方も見かけによらず暗い部分をお持ちなようで?」


「買いかぶりすぎさ。単に経験不足だっただけじゃないのか?見失ってからのボロがひどい。ミスをしたことが無かったんだろう。」


お互いに含みのある笑い顔をしている


「ふ。確かにクロは若い、ですがそれが弱みに出るような鍛え方はしていませんよ。」


「そうだな。探知魔法に引っかからないのは大したもんだ。」


初めての相手に、店の雰囲気に、先程から少し威圧しているというのに全く動じない、場馴れしているのは間違いない。


「で、何を聞きに来たか教えてもらえるだろうか?」


「そうだな。盗賊団、でどうだろう。」


「まぁそれが出てくるのは分かっていたことだ。クロ。」


「はい。」


クロはドアを開け奥の部屋に入り、しばらくすると出てきた。

ラグと老人、老人の手元に資料を置き、背後に戻る


「さて、何から教えようか?」


「まずは最近の動向についてはどうだ?」


「それなら…」


男は羊皮紙をめくる。


「急いだ方がいいな。恐らくだが10日後には町を出るだろう。そのための準備をしている兆候がある。」


「まるで捕まることが分かっているみたいじゃないか。」


「そうだろうな。しかし、すまないが肝心の首領に関してはほとんど情報が無い。何しろ表には出てこないらしい。」


「ふむ?つまりそれが首領がなぜこのタイミングで動くのかが分からないということか?」


「そうだ、策略に詳しいのか、偶然なのかも分からない。何しろ数年前からこの盗賊団は活動しているというのに、過去に捕まった者は誰も首領の顔を見たことがないらしい。」


あの男もそんなことを言っていたな。

首領に会える人物を限定しているのか、複数の幹部が首領の指示だと言って組織を操っているのか。真相は分からない、


「…推測が色々とあるが、つまりはその首領は警戒した方が良さそうだ。」


「その通りだ。他に何か聞きたいことはあるか?」


これは重要な質問だ。よく考えて発言しないと


「異なる世界からこの世界へ人がやって来ることはあるのか?」


「む。唐突だな。」


「いや、単に気になっただけだ。そういった人達がいるという噂を聞いただけだ。」


これはブラフだ。そんなことが起こりえない世界なのだとしたら怪しまれるだろう


老人はこちらをじっと見てくる


「…稀にだが、存在するようだ。私は会った事がないがね。資料には残っている。しかし公表するような事でもない、実際の数は知ることは叶わないだろう。」


「…分かった。もう聞きたいことは無い。それでお代だが。」


「いや、尾行が気づかれてしまったというこちらの不手際、

初回サービスということで今回は無用にしよう。」


「気前いいなあんた。」


ニヤリと笑い、不穏な発言をする


「恐らくだが、貴方はもう一度ここに来ることになるだろう。何故かそんな気がする。」


「?…じゃあ失礼するよ。」


困惑した表情をしてラグは部屋から出ていく。



クロと2人きりになった老人は一息つく


「クロ、あれは人間の形をしたなにかだ。」


「…どういう意味でしょう?」


「いずれわかるさ。」


またいつもの冗談かと、クロは気にしないことにした




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