2話
リアが寝たのを確認してからラグはテントから出て焚き火の前にあぐらをかいた
この状況で警戒を怠るのは最も愚にもつかない行為だろう
とはいえ一切の休息無しでは限界がある
「これ寝れた感じがしなくて嫌なんだよなぁ。」
自信に聴覚嗅覚といった五感を魔法で強化する
これによって何者かが近くを通る際に即座に気づくことが出来る
しかし完全に寝てしまっては魔法を維持することは出来ない
寝る1歩前の無意識状態を継続し続けることによって休息を取りつつ警戒も行える、ようは坐禅のようなものだ
この極地に至るまではかなりの時間が要した
「ん、そろそろか。」
朝日が登り始めた頃リアを起こして、2人は出発した
早朝というのは動物も魔物も人も共通で多くは寝ている時間帯だ、夜行性だとしてもこれから寝始めるため余計なエンカウントを避けるためにはこの時間が最適だろう
数時間歩いているとようやく森を抜けた
そこは広い丘だった
「これ本当にこの道であってたのかな?」
「多分逆な気がするな。」
「だよねぇ、明らかに魔物?が出てくるような場所通ってきたもん。あ、でもここから町が見えるよほら。」
「そうだな、しかしこういう世界で最初に見る町ってだいたい同じような形してたりすること多い気がするな。壁に囲まれてたり中に川が通ってたり。共通点が多い。」
「なんでだろうねぇ。」
「さあな。んじゃそろそろあれ目指して歩くぞ。」
「え〜まだ歩くの〜?」
「仕方ないだろ、一応召喚魔法で呼び出したやつに乗って行くことも出来るだろうけど俺たち別に漫画の主人公みたいな無尽蔵の魔力無いしな。」
「自転車とかバックに入ってないの?」
「こんな舗装されてないガタガタの道で自転車乗ったらケツ蹴り上げられてるようなもんだろ。馬車だろうとこの時代なら大したものじゃないし旅行に使うような物じゃない。」
「不便な時代だねぇ、あぁ、そうそう町が近くなら盗賊とかも出るかも知れないし舐められないように武器持っとこうよ。」
「んじゃ、いつもの頼む。」
「あいさ~」
リアの手元に日本刀と呼べるであろう反りの入った片刃の剣が出現した。
「やっすいなまくらよりは使えるだろうけどやっぱり職人が作ったのには負けるからね。」
「分かってるよ。」
「それといつまでこの服でいるのさ。そろそろ着替えない?」
「そうだな。通気性悪いし動くのに向いてないんだよな。」
2人はバックから服装を取り出した。どうやらこれらは入れられるので常にその世界の時代に合うようにかなりの数の服が詰め込めれている。
「いつも思うけどカッターシャツの上からフード付きのローブってどうなの?」
「良いだろ俺の趣味だ。少なくとも高価な服だと思われるだけで変な格好はしてないはずだ。目立つ色でもない。」
「私より魔法使いみたいな見た目じゃない。」
「魔法使いと思ってたらバリバリの武闘派だったとか面白いな。でも剣携帯してるしな。」
「動きにくくないの?」
「これが軽くてほとんど抵抗にならないんだ。それに暑さ寒さに抵抗あって大抵の環境はこの格好でどうにかなる。そっちこそろそれどうなんだ?完全に現代の服装だろ。」
「現代っていつよ(哲学)それにギリ大丈夫だから多分。」
「ブーツなんか完全にこの時代に存在しないであろう素材使われてるだろ。」
「細かいところは気にしない気にしない。」
「これだから我が妹は…」
「これだから我が弟は…」
変なところでハモる二人
「そろそろ行くぞ。」
「うん。」
着慣れた服装に変わってから移動速度は上がり疲れにくくなった
どこの世界にも相手の実力を感じ取れない人物はいる
剣を携帯することによってそういった者との争いを避けることが出来たのか、町までは商人と思わしき一行とすれ違うだけで特にアクシデントは起こらなかった。
町の入口までたどり着いた
「まぁよくある感じだね。今まで何回もこういう町には行ったことあるし。」
「そうだな。それよりもあんまりキョロキョロしたりするなよ。堂々としておけ。慣れてない者だと思われると秋葉原辺りでキャッチセールスに捕まるぞ。地球色々な場所に行ったけどあそこまでヤバいのはあそこだけだ。」
「ここは秋葉原じゃないし大丈夫でしょ。」
「ま、それもそうだな。」
ここで辺りの会話を聞く
「へいらっしゃい!お安くしておくよ!」
「最近魔物が増えてきているらしいのよ。」
「冒険者が退治してくれないのかしらね。」
どう聞いても日本語だ
「まぁやっぱりって感じだね。」
「何故か文字は別なことはあっても、発音は9割型日本語が世界共通語として流通してるよな。」
「日本ってなんなんだろうね、本当に。」
「俺たちは日本人じゃないからあそこはよく分からん。今でもニンジャとかいるんじゃないか?」
「元は日本人じゃないけど日本で生まれたことはあるじゃん。」
「それ言ったらおしまいだ。」
「ははは。だね。で、これからどうするの?」
「まずは金策だな。お金が無いとどうしようも無い。冒険者にでもなるか?」
「登録の際にお金必要な場合も過去にあったよ。」
「んじゃとりあえず質屋的な場所に行って昔の冒険者票売るか。」
「え、売っちゃうの?」
「あっても仕方ないしなぁ。同じ世界にもう一度行けたとしても何百年後か分からないしその頃には効力もないだろ。」
「確かにそうかもね。でも売れるものなの?」
ラグはおもむろにバックから冒険者票の束を取り出した
そして1つのカードを手に取った
「これなんか純金だし本人の魔力を流さない限りはただのインゴットだしいけるでしょ。」
「それじゃ行ってみる?」
「おう。」
ラグは店の店主にカードを見せる
「これ引き取って欲しいんだけどいくらまで出せる?」
「う〜んこれじゃあ銀貨5枚までだねぇ。」
「そんなわけないだろ。よそ者だと思ってバカにしてんだろ。」
「くっ、7枚だ。」
「おいおい、言っとくけど俺は金の相場はしっかりと把握してるんだぜ?これがどれほどの価値だってことも。あんたはこれを高値で売り捌くんだからもっとあってもいいよなぁ?別にこっちはあんたに売らなくてもいいんだぜ?」
「わかった!わかった!10枚だ!」
「もう一声」
「ぐぅぅ…15枚!これ以上はやらんぞ!」
「毎度あり♪」
銀貨15枚を受け取り店主は悔しそうな顔でこちらを見つめているが、それを尻目に立ち去る。
「ところで銀貨15枚ってどれぐらいの額なんだろ。」
「ぜんっぜんわからん。」
「市場を見る限りは銅貨が一枚100円ぐらいなんだろうけど銀貨をはパッと見て細かくはわからないね。」
「多分1000円ぐらいだと思うがな。体感的に。」
「15000円で純金を売ったことになるね。」
「日本からするととてつもなく安く売ってるが、電子回路もないし装飾品としてしか使えない上富裕層辺りしか集めようとは思わないだろうから売り手は限られるだろうしそんなものだろう。世界に一つだけのものでも誰も欲しくないのなら価値はない。」
「どれぐらいもつかな?」
「1週間は大丈夫だと思う。」
「じゃあお金を稼ぐ方法を考えなきゃね。」
「それで冒険者になろうって話だっただろ。」
「あはは。そうだったそうだった。てへぺろ」
「誤魔化してもダメだぞ。」
「わかってるって。そろそろ行こうよ。」
「そうだな。」
いつもと変わらないギルド
冒険者が依頼を受けに来て、報酬をもらう。
魔物が増えたから依頼を届けに来る人が来る。
今日もまた新しく冒険者になろうとする若者が来た
「すいませ〜ん冒険者になりたいんですけども。」
受付で誰かが呼んでいる
「今行きます!」
駆けつけると2人の若い男女が待っていた 15歳を少し超えた辺りだろうか
男の方は明るい緑色の髪、女の方は美しい銀髪をしていて、
顎までの長さの男に対して腰まで届くほどである。
2人とも美形であり、更に女の方は眩しく見えるほどである
「お待たせしました。ご要件を伺います。」
「俺たち冒険者になりに来ました。」
「承知しました。お二人方は戦いの心得はありますか?」
「はい。かなり修行してきています。」
「魔法もある程度は使えます。」
「分かりました。種族はヒューマンでよろしいでしょうか?」
「はいお願いします。」
「名前をお聞かせください。」
「俺がラグ、こっちがリア」
「ラグさんとリアさんですね。分かりました。職業はどう登録なさいますか?」
「職業?」
「戦士や魔法使い、騎士等、他の冒険者の方がお二人方をどういう立ち位置で冒険者をやるのかを知るためのものです。ただそこまで深く考える必要は無いですよ?後から変えることも可能ですし。」
「どうする?」
「どういう依頼をこなすかとかも考慮すべきかもね。」
「そうだな。勇者とかそういう上を目指していくスタイルか、自分のやれることをやるスタイルとかかな。」
「最近魔物が増えてるって言ってたね。」
「はい、最近魔物が活性化してきていて、町と町を繋ぐ街道にも現れることが多くなってきています。」
「じゃあそういうのを専門に狩るのもいいかもね。」
「それならば、【掃除屋】なんてどうだ?高ランク帯になってきたら誰も見向きもしないような雑魚を専門に狩るっていう。」
「いいねそれ。町周辺をお掃除しちゃうぞ♪」
「じゃあ、【掃除屋】でお願いします。」
「【掃除屋】…ですか、随分変わったチョイスをしますね…。分かりました。それで登録をいたします。これに魔力を通して頂けますか?」
「分かりました。」
「はい、これが登録票となります。身分証明にもなりますので無くしたり売ったりしないでくださいね?特に売っちゃったりしたら後で絶対にバレますので。」
「ん?」
男の方が一瞬戸惑いの表情を見せたので説明する。
「こちらは本人の魔力を流したことでようやく発現するものとなっています。」
「おおっ」
「今Eの文字が表示されていますが、これは段階をあらわしています。E、D、C、B、A、Sの順に並んでおり、上になるほど困難な依頼を受けられることになります。その代わり多額の報酬を得られるという能力に合わせたものです。」
「よくあるやつだな。」
「だね。」
よくあるやつとはどういうことだろうか
「これで登録は以上です。何か質問はありますか?」
「いえ、特にはありません。」
「了解しました。引退した人が初心者の方を対象に実践練習を教えているので不安があるなら受けた方がいいですよ。」
「分かりました、ありがとうございました。」
2人は受付から離れた。
「冒険者になれたわけだけどもこれからどうする?」
「まずは情報だよね。地図すら持ってないんだから。」
「だな。」
賑やかな雰囲気。よく親しんだ空気だ。
依頼料をもっと寄越せとごねる者、ただひたすらに金を求めて模索する者。冒険というとのに心を弾ませる者。
「これで冒険者になったのは何回目だ?」
「確か43回目だと思うよ。」
「そんなにやってるのか…プロの冒険者ならぬ冒険者のプロって所か。冒険者のことなら任せろ的な。」
「ギルドの受付もやれそうだね。」
「接客業だけは絶対にやりたくないな。やらなければいけない時を除いて。」
「ま、とりあえず1つ依頼受けてみようよ、練習も兼ねて。」
「そうだな。【掃除屋】として魔物はおそうじしないとな。」




