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ダンジョンの見る夢

こちらを更新して行こうと思います……

 生きとし生けるものには全て始まりがあり、終わりもある。この世で唯一の平等と言っても良いだろう。それはダンジョンとて例外では無い。



 ■ ■ ■ ■



 昼下がりの何時もの酒場、サイラスは荷物を纏める。今日も向かう先はダンジョンであるが、探索では無い。


「あ、サイラス」


「おう、シャリアか」


 そう声をかけるのはシャリア。若手の女冒険者である。荷造りするサイラスを見てシャリアは同行しようと考えたが、ある事に気付いた。


「……? なんか変わった道具ね」


「ああ、これはダンジョンの寿命の測定器だ」


 サイラスが準備していたのは、ダンジョンの寿命を測定する道具。というのもサイラスの今日の目的は、とあるダンジョンの寿命を図る事だ。


「迷宮管理局から依頼されてな」


「へー……」


 迷宮管理局とは、大陸に発生しているダンジョンの調査、研究、管理を行っている機関である。サイラスはその特異な体質の為、度々関わる事があった。


「凄いね。そんなところから依頼を受けるなんて……」


「どうだかな……さて行くかな」


「あ。わ、わたしもついて行って良い?」


「良いが……別に探索しに行くわけでは無いぞ?」


「う、うん。でもダンジョン調査 (をするサイラス)に興味があって」


「そうか。変わったやつだな」


 物は良いようである。シャリアは密かにガッツポーズをした。二人きりになれるなら割と何でも良いのだ。


 ーーだが、シャリアは意外な体験をする事になる。



 ■ ■ ■ ■




「着いたぞ」

 

 サイラスとシャリアが辿り着いたのは、とある森の中にあるダンジョン。


「……こんな所にダンジョンがあったんだ」


 シャリアは呟く。冒険者であるから大陸内のダンジョンは大体把握しているつもりであったが……この場所は知らなかった。


「古いダンジョンだからなぁ」


 サイラスの言う通り、このダンジョンはかなり古い。発生した記録が残って無いくらいには。


「……なんか、ボロボロね」


 ダンジョンの入り口には大抵冒険者が使う、仮設休憩所があるが……ここのは倒壊していた。ダンジョン名を表す看板なども風化して読めない。


「よし、行くか」


「う、うん」


 二人はダンジョン内部を進む。シャリアはモンスターを警戒して、構えながら進むが何故かサイラスは全く無警戒だ。


「あ、シャリア。ここのダンジョンにはモンスターは出てこないぞ」


「え?」


 モンスターが出てこない? シャリアは言葉の意味が分からなかった。モンスターが出てこないダンジョンなど聞いた事がない。そもそもそれでは只の洞窟ではないか?


 疑問に思うシャリアであったが、サイラスが続けて解答を話す。


「もう、このダンジョンにはモンスターを生み出す魔素が殆ど残ってないんだ」


「え……」


 魔素、というのは言わばダンジョンがダンジョンとして活動する為のエネルギーである。冒険者の命。魔法から魔素を吸収し、それをエネルギーとしてモンスターや罠。宝を精製する。


 つまりこれが枯渇するという事はダンジョンとしての程を保てなくなるという事だ。


 今回、サイラスが来たのは、魔素の残留の調査である。


「魔素が完全になくなったらどうなるの?」


「それが、ダンジョンとしての寿命と言われてるな」


 完全に魔素がなくなったダンジョンは消滅する。


 二人は進み続け、とある広間に出た。サイラスはそこに荷を下ろすと器具の設置を開始する。


「よし、魔素を測るからちょっと待っていてくれ」


「分かったわ」

 

 同行したとは言えシャリアにやる事は無い。モンスターも出てこないのであれば、護衛も必要ないのである。


 手持ち無沙汰になりシャリアは辺りを歩き回る。ダンジョン上層の広場。大抵こう言う広間は、冒険者達のベースキャンプとして使われる。


 商人達も店を開き、宝の買取。物品の販売などを行い賑やかになるものだ。……ここもかつてはそうだったのだろうか。がらんどうになった広間をシャリアは見渡す。なんか寂しい。なんとも形容できないが……シャリアは寂しい気持ちに襲われた。


 ーーそんな時である。


「俺が一番乗りか!」


 広場に声が響いた。そちらを見るとーー冒険者だろうか? 一人の男が立っていた。


「だ、誰?!」


 シャリア身構える。すると次の瞬間男は消えーー。何処から現れたのか5、6人の集団が二人の近くに現れた。


「っ!」


 シャリアは再び身構える。だが、現れた人々はこちらを意に介して居らず。


「この広間をベースキャンプにするか」


「それが良いわね。商会としても進出したいわ」


「中々良いダンジョンだ」


 まるで二人がいないかの様に会話をする。話している内容も意味が分からない。


「さ、サイラス。これは……」


 シャリアの問いにサイラスは考え込む。再び集団は消えーー次の瞬間、広場内に沢山の人々が現れた。


「な、なんなの?」


 辺りに喧騒が響く。冒険者達が歩き回り、商人達が店を開く。がらんどうだった広間に突如ベースキャンプが現れたのだ。


 シャリアは混乱するがーーある事に気付いた。冒険者達の装備が見たことない物だった。……古い。皆装備しているのは、今は使われてない古い型の物だ。それも本にしか乗ってない昔の。


 ーーそれを見て、サイラスは気づく。


「……これは、昔のこの場所だ。賑わっていた時の」


 見ている限りそうとしか考えられない。景色は次々と変わる。人々は増え続け……やがて減り始めた。テントが一つ無くなり、また一つ。商人達もいなくなる。


 そしてやがてゼロになりーー辺りは光に包まれた。


「っ!?」


 サイラスとシャリアの目の前が真っ白になる。何も見えない。やがて視界が戻りーー気付いたら外に居た。


「……えっ。ええ?!」


 荷物も全て投げ出され、2人は外に居た。そして入り口が消滅して居たのだ。跡形もない。


「い、一体何なの?」


「……丁度、ダンジョンの終わりだったのか」


「ええ?」


 サイラスも今回の様な事は初めてだ。最後に見せた物は何だったのだろうか。ダンジョンには分からない事の方が多い。サイラスが知る限り、今の様な現象に関する報告はされていない。


 だが、何となくサイラスは一つの考えが浮かんだ。


「今のは死に際の夢かもな。今迄のかダンジョンの記憶なんだろう」


「記憶……」


 人間も死の間際には今迄の人生を見ると言うが……奇妙な物だとサイラスは思う。


「まるで人間みたいだな」


 サイラスはそうポツリと呟いた。


 

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