朝、目を覚ますとわたしは美人になった。
朝、わたしは目を覚ました。驚いた。わたしはすごい美人になっている。昨日までの姿とは全く違っていた。
一人暮らしだったので、誰にもその喜びを告げる事が出来なかった。なので、わたしは太陽に向かって挨拶した。すると、太陽は大きく笑って、わたしに手を振った。
だとしたら、恋敵の佳子に見せびらかす以外に他無かった。
佳子はとても可愛かった。だが、性格が悪いことをわたしは知っていた。わたしは佳子が嫌いだった。誰もが佳子の事を嫌っていたが、佳子だけは自分の事を好いているようだった。
わたしが好きだったのは、他でもない。遠藤くんだ。
遠藤くんは寡黙で、わたしの知らない事をたくさん知っていた。遠藤くんはもの知りだった。遠藤くんは誰とも喋らなかったので、遠藤くんが知っている事を実際にはわたしは知らなかった。だが、わたしにも女の直感というものがあった。遠藤くんが何も知らないとしても、わたしは遠藤くんの事を嫌いになったりなんかしない。
大学で、わたしは少し暗かった。何の問題でも無かった。わたしは他の女の子が興味を持っている事に興味が持てないだけで、笑うと少しは明るくなった。服装は地味だったが、清潔感を心がけていた。大学の広場にあるベンチが好きで、講義の合間にそこに腰を下ろし、二秒間だけ目を閉じたりした。わたしだけにしか分からない遊戯のようなもので、その瞬間、すべての人間は消え去った。
とはいえ、わたしは美人になったのだ。アパートから最寄駅に辿り着いて、切符を買った。明大前駅までの切符だった。そこから乗り換えて、下北沢まで行かなければいけなかった。
途中、あの佳子がキャンバスバッグを抱えて乗り込んできた。
思わず、わたしはほくそ笑んでしまった。彼女のすがすがしいまでのあざとさよ。
わたしは佳子のところへと歩いていった。
佳子はきょとんした顔でわたしを見つめていた。目を大きく見開いていて、その仕草は彼女が男たちに向ける眼差しと同じだった。
「何か?」と彼女がいった。
わたしは自分が可奈子であることを告げ「今日から美人になったから」といった。
彼女が笑った。
「可奈子って、あの?」
「そうよ。昨日までの可奈子はいないの。今日からあたしが可奈子よ」