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綾瀬さんと不思議なメール

 「ごめんなさい。今日は一緒に帰れないの」

 校門を出たところでそう言われた。そういえば用事があるって言ってたな。

 「用事があるんだっけ? いいよ、気にしないで」

 そう言ったけど少し残念に思う。何故だか知らないけど綾瀬さんと一緒にいると心が落ち着く。いや、彼女と一緒にいることに対するドキドキ感もあるけれど、その胸の鼓動もとても心地よいものに思える。そんな不思議な感覚に包まれる。

 「そう言ってもらえると助かるわ。それじゃあ急ぐから、じゃあね」

 綾瀬さんがかけていく。さてとそれじゃあゆっくり帰ろうかな。そう思い歩き出そうとした時だった。ポケットの中のスマホが震えた。どうやらメールがきたようだ。誰だろうと思いその場で確認してみる。知らないアドレスからのメールだった。というかアドレスが文字化けしていて判別できないようになっていた。本文のほうもところどころ文字化けしていて読めない。

 「いや、最後のところだけ何とか読めそうだぞ?」

 『asdgfmo2ad34h.678?*,うx@fryhz。keriwfにqkwmr43/-0las3medki82w彼5qyら離れるgw』

 「彼ら離れる? 彼らってだれだろう?」

 というかどう考えても悪戯メールだろこれ。そう思い、この時の僕は深く考えなかった。このメールの本当の意味も知らずに、そしてこの先に起こる最悪の結末を予想しないでいた。



 『ひいくんと千里ちゃんが天文部に入ってくれるなんて嬉しいよー』

 家でのんびりしていると茅野さんからそんなメールが届いた。

 『天文関係はてんでだめだけどよろしくね』

 そう返信する。実際、天文に関しては授業で習った程度の知識しかない。それにもとはといえば綾瀬さんの青春部の代わりになる部活を探してたまたま天文部になっただけだった。なので特に天文への熱い思いがあるわけでもなかった。

 『ひいくんたちが入ってくれるなら久しぶりに天文部らしいことでもしようかなー』

 『天文部らしいことって、やっぱ星でも見るの?』

 『うん、そうだよー。冬の夜空はきれいだよーお星さまがぎらぎらしててすっごいんだから』

 ふむ、どうやら近いうちに観測会を予定しているみたいだ。

 『そうか、なら期待しておくよ』

 『うん! きっと驚くよー』

 そんなメールのやり取りをしているときに思い出す。夕方のあのメール一体なんだったんだろう。そういえば綾瀬さんも不思議な手紙をもらってたっけな。明日綾瀬さんに相談してみようかな。その時に一緒にアドレスとかも聞いてみようかな。



 「変なメール? 見せて」

 次の日の昼休み。今日も綾瀬さんと一緒に中庭で食事を摂っていたときに昨日のメールについて話してみた。

 「これだよ。ほとんど文字化けしてて読めないけどね」

 「うーんと、彼ら離れるってところだけ読めるわね」

 「話を振っておいてなんだけど、こんな悪戯メールが来たんだってだけの話なんだ」

 綾瀬さんが神妙な顔つきになったので慌ててそう言う。

 「そんなことより綾瀬さん。よかったらスマホのアドレス教えてもらえないかな?」

 話を変える意味も込めつつ何気ない風に切り出してみた。しかし内心はドキドキしてやばかった。もしこれで断られたらどうしよう、しばらく立ち直れない気がする。

 「ごめんなさい。私、携帯電話って持ってないのよ」

 予想外の返答に少し驚く。今時と言っていいのかとりあえず高校生で携帯電話を持ってないとは思わなかった。

 「あ、そうなんだ。珍しいね携帯電話持ってないなんて」

 「父が持たせてくれなかったのよ。悪い虫が付いたらどうする! ってわけのわからない理由でね」

 「あはは、そうなんだ……」

 綾瀬さんのお父さんごめんなさい、ここに悪い虫がいます。

 「アドレスは教えられないけど、家の電話番号なら教えられるわ。桐ケ谷君、それでいいかしら?」

 「ああ、うん! もちろんだよ!」

 やったぞ、アドレスは手に入らなかったが電話番号ゲットだ! さっきのドキドキはどこへやら、内心ウキウキで綾瀬さんから聞いた番号をスマホに登録する。

 「これでよしっと。今日の放課後はどうするの? また天文部に行く?」

 「ええ、そうね。その前に桐ケ谷君、これ書いてね」

 一枚の紙を手渡される。その紙には、部活動入部届、と書かれていた。どうやら天文部への入部は決定済みのようだ。

 「わざわざ持ってきてくれたんだ。ありがとう」

 「書いて担任の先生に出せば入部を認めてもらえるはずよ」

 「これで今日から天文部だね、改めてよろしく」

 「よろしく。私のわがままに付き合わせちゃってごめんなさいね」

 「そんなこと気にしなくていいよ。あの手紙の件も含めて綾瀬さんの体に起こっていることを解決するほうが大事だよ」

 本心からそう思っていた。実際、死ねないという不思議な現象の解決にかかわれることに僕は誇りを持っていた。それに僕だけが綾瀬さんの死を認識できるっていうのも気になる。綾瀬さんの件を解決したら僕のことについてもなにかわかるかもしれない。

 「ありがとう桐ケ谷君。そろそろ予鈴の時間ね、戻りましょうか」

 「うん、そうだね」

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