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綾瀬さんとの放課後

 「ここよ」

 放課後、綾瀬さんに連れられて文化部棟までやってきていた。文化部棟の二階、階段から見て突き当りの部屋の前で綾瀬さんが足を止める。部屋の前のプレートには地学部と書かれていた。

 え、まさかの地学部? 地学ってなに? 山とかに行って地層でも調べるの?

 「綾瀬さん、ここ地学部って書いてあるけど?」

 確認のために聞いてみる。本当に人数が少ないだけで選んだのではないだろうか。

 「そうね。まあ入ってみればわかるわ、桐ケ谷君お先にどうぞ」

 そう言って綾瀬さんは部屋の扉をノックする。どうやら入ってみればわかるらしい。

 「どうぞー」

 部屋の中から女性の声が返ってきた。あれ、この声は。見知った声に少し驚きながらも僕は扉を開けた。扉の先にはやはりというか、僕のよく知っている女子生徒が椅子に座っていた。本を片手にこちらを見ている。

 「やっぱり茅野さんじゃないか」

 「あれ、ひいくん。どうしたの?」

 彼女の名前は茅野京子。親同士が友達だったこともあって、小さいころから遊んでいるいわゆる幼馴染ってやつだ。昔はきょうちゃんと呼んでいたが今は照れもあって苗字で呼んでいる。彼女のほうは二人の時だけひいくんと呼んでくる。

 「ふっふっふ、それはね。この部の見学にきたのよ!」

 あとから入ってきた綾瀬さんが話を進める。そうだ、茅野さんがいることで忘れていたが、見学のためにこの部室にやってきたんだった。

 「あれ、綾瀬さんも一緒なんだ。そういば朝と昼休みも一緒にいたね」

 のんびりした性格のせいか、それとも朝と昼休みの行動から予想していたのだろうか綾瀬さんの登場にも動じないで茅野さんは受け答えする。

 「それは桐ケ谷君も?」

 「そうだよ。でも茅野さんが地学部に入ってるなんて意外だなー。文芸部とかに入ってそうなイメージなのに」

 「地学部は去年までの話なんだー。先輩方が引退したあとは私一人になっちゃたから今は地学の地層観察とか化石発掘なんかはしてないよー」

 「じゃあ今はなんの活動をしてるの? 休部状態って聞いたけど」

 「今は主に天文部として活動しているそうよ。もっとも天体望遠鏡がないから本格的な星の観察はできないみたいだけど」

 綾瀬さんが教えてくれた。どうやら人数以外についてもちゃんと調べていたようだ。

 「天文部かー、ごめん茅野さん。僕、天文についての知識がかなり疎いんだけど……」

 「あー、それなら大丈夫。綾瀬さんが言ったように本格的な星の観察はないから知識がなくても安心だよー。それに今は休部状態だからなにもしてないしねー」

 「それについてなんだけど。茅野さん、私から提案があるんだけどいいかしら?」

 「うん、なーに? あ、自己紹介がまだだったね。わたしは茅野京子っていいます。同じ学年だからさん付けしなくていいよー」

 「そういえばそうだったはね、私の名前は綾瀬千里。えーっとじゃあ茅野ちゃんでどうかしら?」

 「うん、いいよー。じゃあわたしは千里ちゃんって呼んでいいかなー?」

 「ええ、構わないわ」

 互いに自己紹介を済ませたところで鐘がなる。下校時刻を知らせる鐘だ。部活動を行っている生徒は下校時間後も活動しているらしいが部活動に無所属の生徒はほとんどが下校時間になると帰ってしまう。

 「あ、鐘がなっちゃったねー。私はもう少し残ってるけど二人はどうするー?」

 「まだ本題に入ってないけど、私は用事があるから帰らせてもらうわ。桐ケ谷君はどうする?」

 「僕も帰ろうかな、ここにいても茅野さんの邪魔になるだけだしね」

 「ええー、そんなことないよー」

 茅野さんはそういうけれど今はまだ天文部に入っていない状態だ。それなのに部室に長居するのはなんとなく申し訳なく思えてしまう。

 「いや、今日は帰らせてもらうよ。入部についてはまた明日ってことで」

 「そっかー、わかった。じゃあまた明日ねー」

 茅野さんが手を振って見送ってくれる。

 「うん、また明日」

 そう言って僕と綾瀬さんは天文部を後にした。

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