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綾瀬さんとの再会

 「桐ケ谷ー、おーい聞いてるかー?」

 「え? ああ、なに?」

 昼休みに昼食を摂っているところに声をかけられる。声の主は友人の高岡康平だ。

 「なにってお前、今度の休みどうするかって話だよ」

 呆れ顔で高岡は話を続けてくれた。休日か、特に予定は入ってなかったはずだ。

 「特に予定は入ってないよ? 遊ぶ?」

 「お、そうか、じゃあ久々に二人で遊ぼうぜ! なんなら女子を誘ってもいいぞ、お前に誘える相手がいるならの話だがな。はっはっは」

 「誘う相手か……、茅野さんとか?」

 「茅野ってお前、あいつと友達だったのかよ。あいつ確かに美人だけど大人しい感じの子だろ? そんな子が男二人と遊ぶと思うか?」

 「うん、ないだろうね。じゃあもう誘う相手はいないかなー」

 「お前の交友関係狭いな! そうだなー……、じゃあ綾瀬さんなんてどうだ?」

 「綾瀬さん?」

 瞬間、ノイズが走る。何か昨日見てはいけないものを見たような気がする。なんだろうこの違和感は。

 「おい桐ケ谷、また惚けてるぞ」

 「ああごめん。で、綾瀬さんって? 高岡の知り合い?」

 「おいまじかお前。隣のクラスの綾瀬さんだぞ、美人で有名じゃないか。おまけに成績優秀、スポーツ万能ときた、同じ学年じゃなくても彼女を知らない男子は滅多にいないぞ?」

 「ここにいるけど」

 「お前は例外だ」

 「まあいいや。で、その綾瀬さんを遊びに誘うの? 聞いてる限りだととても誘える人には思えないけど。高嶺の花って感じの人なんじゃないの」

 「ぐっ……、そうだよ! 誘えねえよ! 例えばの話だって」

 「なら今度の休みは二人悲しく遊ぼうよ。僕は別に女子がいなくてもいいし」

 「そうだな、そうするか。でも桐ケ谷、綾瀬さんを見たことないなら一度見てみたらどうだ? お前の枯れた恋愛脳が目覚めるかもしれないぞ」

 「余計なお世話だ!」

 でも、綾瀬さんか、高岡の言う通り一度見に行ってもいいかもしれないな。放課後にでも行ってみるか。そのあとは高岡ととりとめのない話をして昼休みは過ぎていった。


 

 放課後、帰りの身支度を済ませて隣のクラスに綾瀬さんを見に行くことにした。高岡も誘おうかと思ったがあいつは部活のためかすでに教室を出たあとだった。

 隣のクラスに来てから気づいたが、僕は綾瀬さんの容姿を知らない。まいったなこれじゃあ誰が綾瀬さんかわからないじゃないか。

 「どうするかな……」

 教室を覗くと、まだ数人の男女がそれぞれのグループを作って談笑しているのが見えた。

 「誰かに聞こうにも知り合いなんていないしなー」

 そう思って教室を観察していると、窓際の席に一人だけでいる女子生徒を見つけた。夕日で顔までは見えないが、この際誰でもよかった。彼女に綾瀬さんのことを聞いて、いないようならまた明日高岡を連れて見に来ればいいや、そんな軽い気持ちで声をかけようと近づいていった。

 彼女の目の前まで来てから顔を見て怖気づく。窓際の彼女はすごく美人だった。肩より少し長い癖のないきれいな黒髪、夕日の光ををいっぱいに反射して輝く大きな瞳、薄い桜色の唇、夕日のせいではなく彼女の存在自体が輝いて見えた。

 「あの、なにかな?」

 彼女から声をかけられた。まずい、このままじゃいきなり目の前に来て見つめてくるただの変質者だ!

 「えっと、その、綾瀬さんってまだいますか?」

 焦りからか敬語になってしまった。ああもう、いろいろ恥ずかしい、綾瀬さんの所在なんてどうでもいいから早くこの場から逃げ出してしまいたい。

 「綾瀬は私ですけど、なにか用?」

 まさかの事態である。何気なく話かけた相手が件の綾瀬さんだった。

 「用事……用事かー、ごめん、ただ顔が見たくて来ただけなんだ」

 言った後にまずいと思った。これでは初対面なのに顔を見に来た本当の変質者ではないか! 幸いなのはほかの談笑してるグループに今の発言が聞こえていないのが救いだ。

 「そうなんですか、えっと、それなら存分に見ていってください」

 さすがの彼女も困り顔。当然だ、見知らぬ男から顔を見に来たと言われたのだ。本来ならば不審がられてこの場をあとにされてもおかしくない状況だ。どうしようこの状況。

 瞬間、ノイズが走る。昨日の帰り道、いつもと違う道、ビルの建設現場、少女、落下。

 嫌な汗が噴き出てきた。そうだ、なぜ忘れていた。彼女は、綾瀬さんは昨日、ビルの屋上から落下して死んだはずだ。しかもそのあと起き上がり、僕を心配していたじゃないか!

 「え……、な……んで?」

 昨日と同じ言葉を口にする。

 「昨日君はビルから落ちて死んだはずじゃ」

 いや、この言葉には語弊がある。正確には死んで生き返っただ。

 「あ、君は昨日の……なんで覚えてるんです? いいえ今はそんなことよりも場所を変えましょう」

 僕は彼女の言葉に黙ってうなずき、彼女とともに教室をあとにした。

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