綾瀬さんとの出会い
初投稿です。よろしくお願いします。
ある雪の降る日のことだった。
今思えば学校からの帰り道をその時の気まぐれで変えたことが始まりだったのかもしれない。大通りから外れて路地に入り、「これはいいショートカットかもしれないぞ」と言っていた自分に警告したかった。今すぐ元の道に戻ってまっすぐ家に帰るんだ! と。
ビル建築の工事現場を通りかかったときのことだ。ふと、工事風景を見上げるとそこには影が一つ。見間違えでなければ人間のおそらくは工事関係者ではないであろう一般人の影がそこにあった。
何してるんだろう、と馬鹿みたいに平和ボケした頭で考えていた。これから始まることなんてこれっぽっちも考えないでただただ影を見つめていた。
人影が降ってくる重力をその身に受けて下に向かって降ってきている。
これがゆっくりと僕の前で止まったらとてもドラマチックで感動的な出会いの始まりであり、その後の恥ずかしくも楽しい日常を予感されることであろう。
しかし、人影は止まらない。感動もファンタジー感も奇跡的な出会いの予感もなく落ちていく。
僕の目の前を通り過ぎても人影が止まる気配はなかった。すれ違ったときに目が合った気がしたが、そんな一瞬の奇跡なんてどうでもいいというように、ぐしゃり、と肉のつぶれる音がした。
下を見る。女の子だったものが真っ赤な肉の塊になって転がっている。着ている制服が黒色のおかげか血の赤色は目立っていない。ただただ雪のように白い、あるいは白かった肌がだんだんと血の気を失せていき、血の赤と肌の白できれいなコントラストができているなと思う自分はどこか壊れているのかもしれない。
意識が少し遅れてこれがとてもグロテスクな惨状であることを認識する。認識したとたんに吐き気に襲われる。堪えることも出来ずに嘔吐物が女の子の上に降りかかる。申し訳ないと思う気持ちもあったが今は吐き気のほうが強い。胃の中身が空になるまで吐き続けるしかなかった。
数分後、やっと吐き気が治まり事態を把握しようとした時だった。
「あの、大丈夫ですか?」
声をかけられた。どこから? 声の方向は肉塊の方向と一致している。まさかと思い顔を上げる。
そこにはさっきまで肉塊だったはずの女の子が立っていた。血の跡一つなくまるで今来たかのようにそこにいた。
「え、な……んで?」
それだけを言うのが精いっぱいだった。なぜ死んだはずの女の子が立っているのか、なぜ自分が彼女と会話しているのか、なぜ飛び降り自殺したのか、頭の中の無数の疑問が渦巻いている。
「すみません、説明しても意味はないので。それにどうせすぐに忘れてしまうだろうから」
質問への回答がそれだった。説明の意味がない? すぐ忘れる? 更なる疑問にもう頭はパンク寸前だ。
「それでは私はこれで。えっと、名前は……聞いてないね、まあいいやそれじゃあね、あんまり寄り道ばかりしてると危ないよ?」
そう言い残し彼女は去っていった。すぐに追うべきだった、なのに僕は彼女が見えなくなるまで呆然と立ったままだった。そしてあろうことか彼女の言いつけを守りそのまま家に帰り、いつの間にかあの惨劇を忘れてしまって一日を終えてしまたのであった。




