第六話 マルス
「ヒャハハハ!まずは一人目の攻略対象を殺してやった!あと6人だぁ、ったくワタルの野郎、このゲームをクリアしようと5人も入って来たっていうのに何が正々堂々勝負してみたいだ。2万年近く生きて頭おかしくなったんじゃねーのあのジジイ」
森の中の大きな湖のほとり。全身を鉄の装備で固めた男はグチをこぼしていた。
「しっかし人間ってのは馬鹿な生き物だなぁ。数年同じ組織にいて少し役に立ったぐらいですぐに信頼しちまう。俺にとったらあんな年月なんてほんの一瞬なのによ。ハハハッ」
男はそんなことを言いながら身にまとっていた鎧を脱ぎ始めた。
「しかしやぁっと素顔のまま暮らせるな、もうケレンって名も名乗ることはねぇだろ。やっぱり俺には恐怖の権化、魔王マルス様ってなが一番似合ってんだ、ヒャハハハ!」
マルスはそう言うと森の中へ消えていった。
「クソッ!こんな武器じゃ本当にダメージ与えてるのがわかんねぇ!」
「もうキリがないじゃない!」
俺と京子は突如現れた巨大な蛇の魔物との戦闘でうすうす感じていた…と言うかどう見ても貧弱な装備の性能に文句を言いながら戦っていた。
こいつの攻撃はワンパターンで攻撃をよけること自体はとても簡単だった。
「まだまだ相手のHPは全然減ってないのですよ~、二人とも頑張って~」
リンネがのんきにそんなことを言っていた。
「と言うかリンネ!相手のライフがわかるの!?」
京子がそんなことを言うと「大雑把にですけどね~、まだ5分の1程度しか減らせてませんよ~」と返事が返ってきた。
「私の武器もうもたない!どうする、いったん引き返す?」
京子がそう提案してくる。正直俺の武器もそろそろ壊れそうだ。
そんな時だった。
どこからともなく無数の弾丸が飛んできて巨大な蛇の魔物に命中した。
弾丸は命中した直後に爆発し魔物は一瞬のうちに討伐された。
「まったく、ろくな装備もしないでこんな魔物とやりあうなんていい度胸だな二人とも」
俺たち二人のもとに聞き覚えのある声が届く。
振り向くとそこに立っていたのはまさにガンマンさながらの衣装に身を包んだ褐色肌の少女、マリア・オブライエンだった。
「マリア!やっぱり無事だったのね!それにしてもすごい武器ね、あんな巨大な魔物を一瞬で倒しちゃうなんて。」
京子の言う通りすごい威力だ、まぁ俺たちの武器が貧弱だったのもあるのだろうけど。
「あぁ、みんなに託された銃だからな」
マリアはそういった。その表情はどこか悲しそうにも見えた。
「ところでマリアはどんなとこからスタートしたの?私なんてボロボロの村からスタートだったんだよ」
京子の問いにマリアは少し考えてから答える。
「どこから…と言われると回答に困るのだが…、しいて言うなら…北の方かな」




