第四話 痣
「なんでテントが一つしかないのよぉぉぉ!」
俺と京子はアイリーンに今日の就寝場所であるテントに案内されていた…がそこには小さなテントが一つ建てられているだけだった。
「あなたたち夫婦じゃないのですか?お二人で旅をなさっていたと聞いたいるので…。それならテントは一つでいいと思ったのですが…」
アイリーンが申し訳なさそうに言う。
「別に一つで構いませんよ、今からもう一つ建ててもらうのも悪いし、それに俺はこんな女興味ねーし」
京子の視線が痛いが事実だ、俺はリンネさんみたいなのがタイプなんだ。もちろんアイリーンもかなりタイプだ。
「やっぱりダメです!こんな奴と一緒のテントで寝れません!そんなことするくらいなら外で寝た方がましよ!」
京子は俺と同じテントで寝ることを心の底から拒否しているようだった。
「いいじゃねーか、あんまりアイリーンを困らせるな、京子」
「そうですよ~どうせゲームなんだしいいじゃないですかぁ」
リンネさんも俺に賛同する。そうだ、ゲームの中なんだし別にいいだろ一緒のテントで寝るくらい。
「リンネまでそんなことぉ…嫌だって言ってるでしょ!もう男とこういう系のイベントはこりごりなのよぉ!」
京子はここまで言われても拒否し続けた。まったく…なんて頑固なんだ。
「あっそうだぁ!あ…コホン、ではこう言うのはどうでしょう。類さんはこのテントをお使いになって、京子さんは私のテントでお休みいただくのはどうでしょう。」
アイリーンはこれしかない、という表情でいま思いついたのであろう案を話した。
なんてやさしい子なんだ。一瞬年相応の反応が出たのもまた可愛らしい。
わがままばっかり言ってこっちが恥ずかしくなるな。
京子もこの案に納得がいったらしく「それだ!」と言っていた。
テントで1時間ほど体を休めたあと俺はさっきおっさんから作戦会議用のテントを左にずっと行ったところに秘湯があるってことを聞いていたのを思い出しそこへ向かった。
「ここか秘湯ってのは、白い温泉とか初めて見た、まぁゲームだけど。しっかし温泉は疲れが取れるって言うけどゲームの中でも効くのかね、まぁ細かいことはいいかぁ」
そんなことを言いながら俺はその場で装備を外し温泉に浸かった。
「あのぉ…」
すると突然背後から声がし、ビックリして振り向くとそこには岩陰に隠れて顔だけ出しているアイリーンがいた。
「なっ!アイリーンいつの間に入ってたんだ、全然気づかなかった。」
俺がそういうとアイリーンはさっき話してた時より子供っぽく頬を膨らませ答えた。
「類さんがあとから入ってきたんじゃないですか、ここは私の秘密の安息場所だったんですよ、どうやって見つけたんですか」
アイリーンは自分しかここの存在を知らないと思っていたらしい。おっさんが知ってたことは黙っておいてやろう。
「と…とにかく、私はもう出ますから向こう向いててください、絶対見ないでくださいよ!」
俺はアイリーンに言われた通りにすぐに反対方向を向いた。
しかし絶対見ないでって言われて見ないわけがない。
俺はそぉーっとアイリーンの方を見てみる。
するとアイリーンの背中に大きな痣があるのに気づいた。
俺はこの模様を知っている。そうだあの朽ち果てた村で見た旗の模様。
「あ…アイリーン…、その痣…」
俺がそういうとアイリーンはとても悲しそうな声でつぶやいた。
「見ないでくださいって言ったじゃないですか…」
アイリーンはすぐに近くに置いてあった服を着て走り去ってしまった。
「まさかリーダーが魔王と恋に落ちた女どもの内1人の血を引く女だったとはなぁ、通りであの小娘がレジスタンスのリーダーになってから犠牲者が出ねーわけだ。」
秘湯近くの茂みに二人の男が潜んでいた。
「どうします兄貴、俺らアイリーン様の入浴見に来ただけなのにとんでもないこと知っちまいましたよ」
気の弱そうな男がそういうと兄貴と呼ばれた男は決まってんじゃねーかという表情で
「もちろんケレンの旦那やレジスタンスのみんなに教えるぜ、俺らにここのこと教えてくれたのあの人だしなぁ。俺らあの小娘に騙されてたんだ、何が『自分たちだけが助かろうなんて考えは絶対に認めません!』だ、自分のことじゃねーか」
そう言うと男たちはその場を立ち去った。




