第十二話 魔王
「な…ま、マリア…?」
扉を開けると目の前にマリアがいた。
な、なんでマリアが二人いるんだ…!?
「お、お前何もんだよ!」
俺は扉の外にいるマリア?に問いただす。
「なにを言っているんだ、私はマリア・オブライエンだ、昨日会ったばかりなのにもう忘れたのか」
マリアがやや不満げな表情で言う。
「誰と話してるの…ってマリア!?あなたそこに!」
京子が中にいるマリアを指さす。
「京子…お前までそんなこと…なっ!?私がもう一人!?そ、そいつは私の偽物だ!」
館のそとにいるマリアがそう訴えかける。
すると先ほどまで一緒だったマリアが以外にもあっさりと偽物だと認める。
「すまなかったね、あんな貧弱な武器で上級の敵に挑むからつい助けたくなっちゃってね」
先ほどまでマリアの姿があった場所にはいつの間にか青年が立っていた。
「僕の名前はワタル。この世界の魔王だよ、いや、元魔王と言ったほうがいいかな」
青年はそう語りだした。
「お、おまえがワタル…おまえを倒せばこのゲームは終わるのか…!?」
マリアが言いながら手に持っていた銃を構える。
「それは無理だよ、このゲームのクリア条件はもう僕の討伐からマルスの討伐に変更したんだ。だから奴を倒さなければクリアはできない。それに僕は君たちの手助けがしたいんだ。僕はもうそろそろこの世界から解放されたいんだよ」
ワタルと名乗った青年がそう答える。
「そ、そんなの信じるわけないでしょ!」
京子の言う通りだ、確かにいままで俺たちを騙して旅してきた奴の言うことを易々と信じるわけにはいかない。
「困ったな…なら」
ワタルは両手をパンッと合わせる。
すると俺たちは館から突然どこかの広場へ飛ばされた。
「あ~ここ京介君達がいた広場ですよ~」
リンネさんがそういう。
「これで信じてもらえたかな。僕は正直マルスのことを良く思ってないんだ、今彼はこのゲームの恋愛要素を排除しようとしてるからね」
ワタルがそう説明する。
「恋愛要素の排除ってどういうこと?」
京子がワタルに対しそう質問をする。
「ほら…だってこのゲームは恋愛アクションRPGでしょ?魔王軍の痣がある7人の女ってのは僕の攻略対象のことなんだよ、マルスによるとその7人を殺すとどうやらこのゲームがクリアできなくなるみたいなんだ」
「ちょっ、ちょっと待て!いったいマルスってのは何者なんだよ!」
そうだ、マルスが普通の敵キャラならこのゲームのクリア条件なんて知らないはずだ。
「マルスはこのゲーム自体の意志だよ、現実では今『creator』がまた事件を起こしてるんだろ?それで君たちみたいなのがゲームの中に入りクリアすることによってゲームを終わらせる。マルスはそれを阻止するために生まれてきた存在なんだ」
「な、なるほど…あ、ところであの盗まれた宝石は何だったんだ?」
俺が宝石のことに触れるとワタルは決まりの悪そうな顔をしていた。
「あ…あれはいつか僕を倒すために現れるであろう勇者のために作った秘宝の失敗作さ…本物はそこの彼女が持っている」
どうやらあれは偽物だったらしい。
ん…?
「じゃあもしかしてあれじゃマルスを倒せなかったのか!?」
「そういうことになるね」
な!?なんていい加減なやつなんだ…
「もう…あの宝石のことは忘れてよ…それより早く仲間助けなくていいの?どうやらマルスはこの町の外に潜んでるみたいだよ」
そ、そうだ、まずはあの二人を助けなきゃいけない…しかしどうやって…
そうだ!
「オイ、ワタルお前の力で…」
いつの間にかワタルの姿はそこにはなかった。




