第九話 ジグルヘイム
目が覚めると、俺、八木京介はとある広間の中央に立っていた
バザーでもやっているのだろうか、広間は大勢の人々でにぎわっていた。
ふと隣を見ると、そこには朱里も俺と同じようにしていた。
「こ、ここがスタート地点か、しかし人が多いな、俺と朱里以外の3人はどこだ」
俺がそうつぶやくとイヤホンからリンネさんの声が聞こえた。
「どうやらスタート地点は3つに分かれてたみたいなのですよ~、京介君と朱里ちゃん、類君と京子ちゃん、マリアちゃんとそれぞれバラバラになってしまったみたいですぅ」
バラバラになった!?
「そ、それでねーちゃん達やマリアさんの場所は?今俺たちはどこにいるんだ?」
俺はリンネさんにそう問いただす。
「場所はわかんないんですが~京子さん達は何やら朽ち果てた村に出たって言ってました~マリアさんはわかりませぇん」
朽ち果てた村か…しかし場所がわかんないのならそれだけの情報じゃ足りないだろう。
「とにかくまずは情報収集から始めてみよぉ!」
朱里がそういうとその辺の人々に話しかけ始めた。
「魔王を倒す?お前らみたいなガキどもがか?」
広間の端に立っていた兵士に話しかけるとそんなことを言ってきた。
「あぁ、別に冗談じゃないぜ、俺たちは魔王を倒さなきゃならないんだ」
俺がそう答えると兵士は大きな声で笑った。なんだか感じ悪いな…
「ハッハッハ!面白いこと言うなガキ、じゃあ特別に教えてやるよ、今な、国を挙げてとある痣を持つ7人の女を探してるんだ、もうすでに2人捕えてある。なんでもその女を殺すと魔王に弱点が生まれるらしいんだ」
兵士は物騒なことを言う。
「そんな!たかが痣があるだけでその人達を殺すのかよ!」
俺はそう反論すると兵士は俺に怒鳴った。
「じゃあお前はこのまま魔王に屈しろと言うのか!奴と普通に戦っても敵わない、せいぜい奴らの攻撃から国を守るのが精一杯なんだ!…これは…これは奴を倒せるかもしれない唯一の希望なんだよ!ガキの感情論で語るな、7人の犠牲で多くの人たちが救われるなら国はそれを選ばなければならないんだ!」
そういうと兵士はその後一切の情報も与えてくれなかった。
「どうする朱里、とりあえずねーちゃん達探すか?」
俺が朱里に判断を促す、すると突然女の叫び声が聞こえた。
「だ、誰か助けてぇぇぇぇぇ!」
広間に一人の女とそれを追う大勢の兵士が入ってきた。
「誰かその女を捕まえてください!その女の左足には魔王軍の痣があるのです!」
先頭を走っていた兵士がそう叫ぶ。
すると人々は一瞬ざわつくがすぐさま近くにいた男たちが女を捕えた。
「は、はぁ…やっと捕えれた…、どうもご協力ありがとうございます!」
兵士が協力した男どもに敬礼すると人々は彼らに拍手を浴びせた。
「あ、あれってさっきの兵士が言ってたとある痣を持った女の人の一人なのかな…?か、彼女なんの罪もないのに下手したらこれから殺されちゃうの…?」
朱里がそうつぶやく、そうだ、こんなのおかしいだろ!
女はそのまま縄で囚われ兵士たちにどこかえ連れ去られていった。
何とも言えない不快感を覚えながら俺たちは広場を後にした。
「ねぇところで今日はどこで泊まるの?宿代なんて持ってないよ?」
朱里がそんなことを言う、俺は一切考えてなかったため返答に困った。
「あなたたち、宿が無くてお困りなのですか?」
すると突然俺たちに端整な顔立ちの男が近づいてきた。
「あぁいきなりすみません、実は私、この町で宿を経営していますドーマンと申します、私のお願いを聞いてくだされば、あなたたちを無償で止めて差し上げますが…いかがでしょう?」
ドーマンと名乗った男は俺たちにそう提案してきた。
「お願い?なになに!私たちにできることならなんでもするよ!」
朱里がそう返答をする。まぁタダで泊めてくれるんなら多少のことはいいか。
「先ほど広間で囚われた女性を見ましたか?じつは…アニエス…あ、彼女は私の妻なのです、どうか彼女を救っていただけないでしょうか…?も、もちろんあなたたちにすべて押し付けるわけではありません!城への侵入方法はお教えします、脱出の際の手引きも私がやりますから。」
男はさっきの女、アニエスの夫でどうやら彼女を助けてほしいみたいだ。
俺はさっきの理不尽な出来事に不快感を覚えていたこともあり、仕方なく承知した。




