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第1話

 ここは現実の世界ではない。

 ある存在がこの世界に青年を引き込んだ。

 いや正確には青年たちを、だ。


 青年は確かに家にいたはずだった。

だが、気が付いたときにはこの空間に立っていた。

 青年と同じ境遇らしき人が大勢いる。

 見渡す限りの人、それも老若男女問わず集められていることに驚いた。

 周りで状況が分からないからか、様々な人たちが話し合っているのが聞えて来たる。中には叫んでいる人もいた。

 そんな中、大きな鐘が鳴った。

 思わず周りを見渡すがそれほど大きな鐘は見当たらない。

 それどころかこの場所に建物が見当たらない。

 周りでも同じように見渡している人達がいるが見当たらないようだ。

 先ほどよりも悪い方へ行っているように感じる。

 周りからは不満の声や叫び声、助けを求める声が増えている。

 このままでは爆発してしまうだろう。

 そんな中、もう一度鐘の音が鳴り響き巨大な影が現れた。

 それも音もなく、歩いている様子もなくそいつは突然と現れた。まるで幽霊のように……。

 全ての人を釘付けにして、誰にも声を上げさせない圧倒的存在感がそこにはある。

 それだけの存在感なのにローブを被っているため全く姿が見えない。

 だがさっきの疑問が解けた。

 鐘の音、それはどうもこいつが今手に持っている鐘のような物から鳴っていたようだ。


『……ようこそ。わが世界へ』


 たったの一言、ただそれだけで凍り付いた。

 恐怖からか、混乱からか分からない。

 ただ身体が動かない。


『初めに言っておくがここから帰ることは出来ない』


 とんでもない事を言っているような気がする。



 帰れない?



 ここから?



 家に帰ることが出来ない?



 その言葉を理解したのか、周りから抗議の声が上がる。


「ふざけるな‼」

「俺たちを元の場所に帰せ‼」

「ここはどこなの⁉」


 そんな言葉が所々から聞こえてくる。

 だがそんな言葉にも全く気にした様子もなく続けられる。


『君たちの体は今も家に存在している。だが帰ることが出来ない』



 どういうことか分からない。

 今も自分の家に存在しているが、ここから帰ることが出来ない?

 全くもって意味が分からない。



『ここは夢の世界、現実の君たちは眠って夢を見ている状態だ』



 夢の世界?ここは夢なのか?

ならいつか覚めるのではないだろうか?



『だが覚めることはない。いわゆる精神だけをこの私の世界の招き入れたのだよ』


 愕然とするしかなかった。

 精神だけをこの夢の世界に縛る。

 簡単に出来るように言っているようだがそのような方法が存在するとは聞いたことがない。

 例え存在したとしてもそれが簡単に出来るだろうか?

 出来るはずがない。

 信じられるはずがない。

 もし、もし事実なのだとしたら、

 目の前の存在がそんなことが出来る力を持っているということになってしまう。


『信じるかはは君たちが決めることだ。私は関係ないよ』


 まるで自分には関係が無いように言う。

 確かに信じるかは自分達が決めることだ。

 だからといっていきなりそんな話、たとえ事実だとしても受け入れられるはずがないのだ。

 こちらの事はかまわず続けられる。


『さて、現状は話した。次はこの世界について説明をさせていただくよ。』 


 なぜそのような説明が必要なのか。

 この存在は自分達に何をさせたいのか、全く分からない。


『この世界では死がない。』


 またしてもいきなりとんでもない事を言い出している。



 どういうことだ?

 死がない?



 全く理解が追いつかない。


『正確には死んでも転生されるということだ。例えば餓死したとしても次に目覚めた時には別の人間で生きていることになる』


 何度でも転生されるということなのだろう。

 確かにそうなら死がないと言ってもおかしくはないだろう。

 危険性リスクさえなければの話になるが。


『ただし、転生した場合する前に生活していた記憶は無くなる。そして何度も転生していると現実の記憶が徐々に消えていくことになる。おっと、この会話を忘れることはないがな』


 死に過ぎれば記憶が全て消えることになるだろう。


『だが、少しだけ記憶が残る事はあるだろう』



 少しだけ記憶が残る?



 それはなぜか疑問に思えた。

 これほどの力があるのにそのような失敗を起こすととは思えなかった。

 それに残ってなんになるか分からない。


『あとの事は自分達で確かめることだ。』


 そう言って消えようとする。

 たったそれだけの説明だった。


『もし帰りたいのであれば私を探し出すことだ。もっとも見つけられれば……の話なのだがな。』


 くっくっくっ、と含み笑いを漏らしている。



 こいつが今消えたらどうなるのだろうか?

 追いかけられることができるのだろうか?



 とても役に立つとは思えない情報ばかりだ。

 それはこの先に起きるであろう事を指しているようで不安にしかならなかった。

 この不安はおそらくここにいる全ての人間の感じたことだろう。


『1つヒントを教えよう。私の名はナイトメアとでも呼んでくれ。この世界の神の名ぐらい知っておかなければ何にも始まらないだろう?』


 とてもだがヒントになるとは思えなかった。

 名前だけでこの存在を追えるはずもなかった。

 ただ皮肉にもこの脱出不可能の夢の世界、悪夢を自らの名前として使った。

 それは青年達に対する嘲笑か、または侮蔑か。

 どちらにしても人間達を虫けら程度にしか思っていないのだろう。

 だが奴の言うことが事実だとしたら、その存在は……。

 ナイトメアが神なのか、ただ名乗っているのかは分からない。

 だが確実なのはおそらくこの世界は奴にとって庭のような物なのだろう。

 でなければ神を名乗ったりしないだろうから。



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