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超弩級超重ゴーレム戦艦 ヒューガ  作者: 藤 まもる
第5章 レムノス島開発編
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第47話「魔王様、エクステリアに凝る」

 12月30日。

 エスパーニャ歴5541年、最後の日。

 魔王船では、乗員達のささやかな大晦日年越しパーティが、様々な場所で行なわれた。


 この日のために、備蓄していた酒の大盤振る舞いも行なった。

 大盤振る舞いと言っても、1人につき、ぶどう酒かエールが2杯だけだが、酒が飲めない者を抜いても、約5千人に酒を配ったので、酒の備蓄の内3分の2は、この日に消耗されることになる。


 んまぁ、酒迷宮は見つかってないが、雑貨迷宮や百貨迷宮でも酒は手に入るので、なんとかなるだろう。

 今年は色々あったからなぁ。

 最後ぐらい羽目をはずして騒いでもバチは当たるまい。

 というわけで、俺達も親族を招いて、後宮の中庭に会場を作り、年越しパーティを楽しんだ。



 今回のパーティの目玉料理は魔王魚で、今日の朝に水魔妖精メアヴァイパーは20匹持ってきてくれた。

 どうも村民から年末のパーティのことを聞いたようで、魔王魚を溜めていたらしい。

 10匹はここで料理され、10匹は冒険者、探索者、兵士達に配られた。


 メアヴァイパーは料理も出来るようで、メイド達とともに様々な魔王魚の料理を作り、テーブルに持ってくる。

 ムニエルを食べてみたが、魔王魚のあまりのおいしさに、食べたもの全員が目を見開き驚いた。

 淡白な味ながらも、芳醇でしっとりとした舌触りは、地球でも食べたことの無い絶品の魚だった。

 魔王魚の料理は、あっという間になくなった。


「あー、もう0時まであと1時間しかないよ」


「もうこんな時間になったのね、じゃあ皆ブドウを用意して」


 皆で年越しパーティで騒いでいる中、ソフィアが時計を確認し、パッツィがメイドに指示を出してブドウを持ってこさせる。

 このブドウはヒューガ産で、この日のために倉庫に備蓄しておいた。

 備蓄倉庫は魔法がかかっており、果物を長期保存することができる。


 パッツィ達は、ブドウを12粒ずつ皿に分け、皆に配る。

 魔王船にいる他の人達も、今頃同じ作業をしているだろう。

 俺もブドウ12粒の入った皿を受け取る。


「0時まであと5分」


 パーティ参加者は全員、ブドウの皿を目の前に置いて待機する。


ゴーン


 0時になった。

 拡声魔導伝声管より鐘の音が響く。

 エスパーニャ歴5542年1月1日になった。


「さあ、食べよう!」


 パッツィの合図で全員がブドウを丸ごと1粒食べる。

 皮も種も丸ごとで食べるのが、この行事のしきたりだ。


 30秒が経過して次の鐘が鳴り響く。


ゴーン


 再び皆がブドウを一粒丸ごと食べる。

 30秒ごとに計12回鐘はなるので、その度にブドウを1粒丸ごと食べる。

 ちなみに鐘は司令の間で、キャプテン・キッドが打っている。

 俺も鐘に合わせて、ブドウを全部食べることができた。


 この年越しに、ブドウを鐘に合わせて12粒食べる習慣は、日本で言う年越しそばみたいなものだ。

 レオン王国にいた時は毎年やっていた。


 無事にブドウを全部食べることができたら、その年を幸せに過ごすことが出来ると信じられている。

 ブドウは皮と種がついたものを、丸ごと食べなければならないが、年寄りや幼児には、皮と種を取ったものが供される。


 皆がブドウを食べ終えたのを確認した俺は、立ち上がり新年の挨拶を行なう。


「それでは新年の挨拶を、雨のしずくのような沢山の健康と、太陽の光のような沢山の愛と、海の水のように沢山の幸運が、皆に訪れますように。フェイズ5542! 幸せな5542年へ!」


「「「ハッピーニューイヤー!!」」」


「「「乾杯サルー!」」」


 新年の挨拶を終え、皆で酒やお茶を飲む。

 この挨拶は、昔からある言い回しで、どこでも似たような言い方で新年を祝う。


 本来は1月1日~6日までは、飲めや歌えやで騒いで過ごすのだが、物資が浪費できるほどないので、今年のお祝いは3日までとなった。

 しかし休日は6日までとなる。

 来年はちゃんとした年越しにしたいものだ。


 新年の挨拶ではないが、今年は本当に幸運が訪れますように。

 俺は信仰心が薄いが、この時ばかりは神様に真剣にお祈りを捧げた。





    超弩級超重ゴーレム戦艦ヒューガ

   ⇒第5章 レムノス島開発編





 1月1日。

 俺は昼までパッツィの部屋で寝ていた。

 パーティが終わってから、パッツィとイチャイチャして、巨乳を枕に眠ったのだ。

 うーん。

 やはり巨乳枕は寝心地がいい。


 俺はパッツィを起こさないように静かに外に出て、後宮から魔王城に向かった。

 通路には誰もいない。

 皆部屋で寝ているのだろう。


 受付のジュマとヌリアもお休みだが、受付席にはリッチのヴァルターが座っていた。

 俺を見たヴァルターが話しかけてきた。


「魔王様、スプリガンのグスタフより伝言です。魔法短艇マギアランチは全艇完成、一度様子を見に来て欲しいとのことです」


「そうか、もう完成したのか。じゃあ今からウェルドックに行ってみるよ」


 俺は踵を返すと、第6デッキへ向かう。

 ウェルドックに到着すると、桟橋にマギアランチ6艇が停泊しているのを見た。

 艇の上には、グスタフとスプリガン数人がいた。


「やあ、新年おめでとう。年明けなんだから休めば良かったのに」


「ハハ、我々は召喚されたばかりですし、お祝いは来年にします。ところでマギアランチが昨日完成しました、いかがでしょう」


「うん。充分な出来だよ。さすがスプリガンだ」


 俺はグスタフと話しながら、マギアランチを眺めた。

 人員輸送用10トン級マギアランチ2艇は、赤く塗装されている。

 50トン級輸送用2艇、曳船用2艇は、緑に塗装されていた。

 形は全部タグボートに似ている。


 10トン級マギアランチ2艇は、魔王船の側面にクレーンを設置し、そこに釣り上げ設置するつもりだ。

 こうしておけば、わざわざウェルドックを開けなくても、マギアランチを出動させることが出来る。


「魔王様、すでに造船所は整理済みです。次の船の製造準備をしておきましょう」


「フフ、気が早いな。例の奴か、いいけど少しは休めよ」


「我々スプリガンはドワーフの上位種ですからな。物を作る情熱はドワーフより強烈ですよ」


 俺とグスタフは顔を見合わせ、ニヤリと笑う。

 魔王船内のドック造船所は2千トン級だ。

 最大2千800トンまでの船を作ることが出来る。


 俺達はドックに向かい、そこで新たな船体を召喚した。

 たっぷり30分をかけて、満載2千400トンの巨大な鉄の船体が出現した。

 合わせて造船資材も召喚する。


 俺とグスタフはニヤつきながら、船体の確認を行なう。

 出来ているのは船体とブリッジの外側だけで、内部は空洞だ。

 甲板や床、階段、魔導伝声管、部屋、エンジンはこれから取り付ける。


「いよいよこいつの製造だ。しかし今日はここまでにしておこう。せっかくの新年だ。3日までは休め」


「分かりました。では4日より製造を開始します」


 こいつは今までに、この世界になかった新型艦だ。

 完成すれば、魔王海軍の主力艦艇として活躍するだろう。





 俺はグスタフと別れ、実家のキューブモダンで家族水入らずで過ごす。

 夕方にソフィアの実家、木麗ロイヤルハウスを訪ね、ソフィアとデートの約束をする。


「わーい。デートだぁー。随分久しぶりだよね」


「ああ。ソフィアは日頃から頑張ってるからな。ご褒美だよ」


「えへへ。それで明日はどこに行くの?」


「それは考えてある。楽しみにしてくれ」



 新年2日の9時、俺は実家前でソフィアと待ち合わせて、魔王城方面に歩く。

 まずは第6デッキでマギアランチの見学だ。


 ソフィアは最初のデートの時と同じ服、花柄の白いワンピースを着ていた。これは彼女のお気に入りの服らしい。


「うわー。この船可愛いね。船の赤ちゃんみたい」


 丸っこい赤い萌え船を見て、ソフィアは喜んだ。

 それから2人でブリッジに登って、操舵輪を回したりして遊んだ。

 一通り見たので、俺達は第3デッキから、魔王池や魔王山のある魔王船自然区画に向かった。


 魔王池の艦首側ほとりに到着。

 召喚宝典を呼び出す。

 これからこの自然区画に、小規模の娯楽施設を設置するのだ。


 つまり、デートコースを作りながらデートを行なうわけだ。

 ついでに、自然区画の整備も出来て一石二鳥でもある。


 俺はまず、ボロボロの池の桟橋をリセット、新たに新品の桟橋を召喚設置する。 

 そして隣にはボート小屋と、チケット販売小屋を設置した。



■ボート小屋

魔王池レジャー施設。

内部にボート、ペダルボートを格納。

魔王池に浮かべて楽しむことが出来る。


・格納ボート一覧


ペダルボート

アヒルさん1号(2人乗り)

アヒルさん2号(2人乗り)

アヒルさん3号(4人乗り)

魔王専用 金のガチョウ号(2人乗り)


レジャーボート

遊覧ボート1号(2人乗り)

遊覧ボート2号(2人乗り)



■チケット販売小屋

ボートの管理やボートチケット販売が行なえる。

チケットは魔力で自動製造。



 自然区画の施設は、屋根がすべて、平たく分厚い装甲になっている。

 これらの施設は、魔王船が戦闘状態になると、建物ごと地下に引っ込むのだ。

 この仕掛けにより、たとえ至近距離に爆弾を受けても、建物の損傷は免れる。

 だが自然区画の地下は5メートルしかないので、建物は高さ3メートルまでの平屋に制限される。



 俺はソフィアとボート小屋のボートを引き出す。

 池に浮かべるのはもちろん、魔王専用の金のガチョウ号だ。


 あー。

 なんというかピカピカの派手な飾りのガチョウだな。

 それ以外は、なんてことはない普通のペダルボートだった。


 俺はソフィアと2人で、金のガチョウ号に乗った。

 左右に2対のペダルがあり、真ん中に舵を切るための車のハンドルのようなものがついている。

 ソフィアはペダルのこぎ方が分からないようなので、教えてやる。

 そういや、この世界には自転車が無かったな。


バシャバシャバシャバシャ!


「キャハハハ、何これ凄い面白い~!」


 ソフィアは超ハイテンションで漕ぎまくる。

 俺は地球では、たしか家族と2回しか乗ったことはなかったが、ペダルボートは労力の割りにあまり進まないものだ。

 が、ソフィアは身体強化レベル4で俺は3だ。

 俺達が漕ぐと、これまでにない速度で、金のガチョウ号は池の艦尾側に直進した。


「ちょ~、早く進みすぎだソフィア。右にハンドルを回せ。池の縁にぶつかる!」


「アハハハ! これどうやんの? ああ、右に回すのね」


 俺とソフィアは協力してハンドルを回す。

 ペダルボートは、やはり小回りはきかないな。

 ハンドルは結構重いので、常人なら2人で回す。

 まあ俺達は片手でも回せるがね。


 2人でハンドルを回すと、必然的に俺とソフィアの顔が近づく。

 ソフィアと一瞬目が合う。


チュッ


 ソフィアが俺に口づけをした。

 なんだ?

 今日はえらく積極的だな。

 ちょっと胸の鼓動が早くなったぞ。


「ソール。上手く行ったわ。右に曲がっていくよ」


 ソフィアは何事もなかったように、ペダルを漕ぎ続けた。

 金のガチョウ号は、右旋回して池の艦首側へ向かう。


 池の中心付近を進んでいると、横の水面から泡が出て、水魔妖精メアヴァイパーが顔の上半分だけを出した。

 こちらをチラッと見ると、再びメアヴァイパーは沈んでいく。

 なんだよ。

 

「それにしてもこのボート、これだけ漕いでも、中々加速しないね」


「これはそういうものだよ。水の上を優雅に進む白鳥も、水の下では必死にもがいているもんだ」


「へえ、そうなんだ。でも楽しいね~」


 俺達は30分ほど漕いで、桟橋に戻った。 

 久しぶりに自転車に乗った気分を味わったな。

 俺は池に向かって声をかけた。


「おいメアヴァイパー、出て来い」


「はいはーい」


 俺が呼ぶと、すぐさま池からメアヴァイパーが飛び出し、地面に着地した。


「何か御用ですか? 魔王様」


「うん。お前に新しい仕事を与える。ここは一般に開放するから、ボートとチケットの管理を頼む」


「分かりました。やる事もなくて退屈していたので、丁度良いですわ」


「皆が乗れるようにチケットは30分券のみにしよう。ボートが立ち往生したら、お前なら桟橋に運べるだろ?」


「容易いことです。後はお任せください。デートの続きをお楽しみください」


 ニコニコしながら、メアヴァイパーは応じた。

 後のことをメアヴァイパーに任せ、俺は再び召喚を開始する。

 今度は店舗セットだ。

 花魔妖精の店長と店員が一緒に召喚される。

 俺は飲食関連を3店舗呼び出した。



■41アイスクリームショップ

ソフトクリームを販売する。

チョコ、バニラを販売。

外部から果物を補給することにより、他の種類のアイスも販売可能。

店長 花魔妖精リリー

店員 1名



■クレープショップ サタナキア

クレープを販売する。

チョコクリーム、カスタードクリーム、キャラメルクリームを販売。

外部から果物を補給することにより、他の種類のクレープも販売可能。

店長 花魔妖精デイジー

店員 1名



■カフェ・レスト メフィストフェレス

ウッドデッキを備えた、お洒落な喫茶店。

黒茶、赤茶、白茶、緑茶を販売する。

外部から食材を補給することにより、軽食も販売可能。

座席40。

店長 花魔妖精サンフラワー

店員 4名



「「いらっしゃいませ~」」


 3店舗とも異人館みたいな洒落た建物だ。

 俺とソフィアはソフトクリーム、クレープを食べた。

 しかし41とかパクリ過ぎだな。

 10しか違ってないぞ。


「初めて食べたけど、ソフトクリームもクレープもおいしいね!」


 味は確かなようで、ソフィアも喜んで食べてくれた。

 ただ、ここの食材は魔力で補給されるそうなので、一般にも開放するが、しばらくは配給制にするとしよう。

 次は土産物屋を召喚。



■土産物屋 ペイモン

魔王船のみやげ物を販売する。

商品は魔力による自動補給。

外部から商品を補給することにより、魔王船特産品も販売可能。


商品一覧

700分の1スケール魔王船模型

400分の1スケール魔王城模型

魔王船カレンダー

魔王船タペストリー

魔王タオル

魔王船ポスター

魔王洗顔セット

ミニ悪魔像各種

※各種工芸品、食品、特産品は外部からの仕入れが必要です。


店長 花魔妖精オーキッド

店員 2名



 ここは配給不能なので、レオンの通貨で販売を行なう。

 特産品の開発もいつか行ないたいな。



 カフェ・レストでお茶を飲んで、しばらく休憩。

 次に俺達は、魔王池右舷側のほとりに向かう。

 ここでは子供が遊べるように、小規模な公園を召喚する。



■魔王海浜公園 煉獄の園

こじんまりとした公園。

子供の遊びや休憩にご利用ください。


・園内設備

ベンチ

屋根つきベンチ

ゴミ箱

水飲み場


・庭園遊具

滑り台(大)

2連ブランコ

3連低鉄棒

シーソー

砂場

グローブジャングル

小悪魔型遊具(石像)



 この公園は四方7~10メートル程度だ。

 あまり大きくはない。

 こりゃ典型的な日本の公園スタイルだな。

 懐かしい。

 俺はソフィアにブランコやシーソーの乗り方を教えて、一緒に遊ぶ。


「あはは~! ソール、もっと回してよ」


 最近の日本の公園では見なくなった、回転する球形ジャングルジムにソフィアが乗って、俺が回転させる。

 こいつがグローブジャングルというらしい。

 名前を初めて知った。

 俺はグローブジャングルを思い切り回して、ソフィアの横に飛び乗った。


「ソール、ありがとう」


チュッ


 またソフィアに口づけされた。

 ちょっと照れるなぁ。


 

 公園で遊んだ俺達は、石畳の庭園道に出ると、ソフィアと話しながら細かい設備を召喚していった。

 ゴミ捨て場、石のベンチ、公衆トイレ、埋め込み式魔導ライト、魔導灯などなど。

 これで魔王池周辺の施設整備は終わった。


 次に俺達は、深魔の森方面の整備を行なう。

 ここには、庭園道付近に店舗3つだけを召喚した。



■魔王船温泉 ティアマト

ヒューガから作られるミネラルたっぷりのお湯に浸かれます。

男湯、女湯あり。

温泉効能 美肌、疲労回復 関節痛 腰痛

店長 花魔妖精フロックス

店員 2名



■喫茶 ミノタウルス

小型の喫茶店。

黒茶、赤茶、白茶、緑茶を販売する。

外部から食材を補給することにより、他飲料も販売可能。

座席15

店長 花魔妖精クレマティス

店員 1名



■バル インキュバス

お洒落な立ち飲み酒場。

エールのみ1日50杯販売。

外部から食材を補給することにより、他飲料、おつまみも販売可能。

店長 花魔妖精ダンデライオン

店員 1名



 俺達はまず温泉に入り、バルにて冷えたエールを飲む。

 「バル」って言うのは、英語でいう「バー」だね。

 スペイン語では「バル」という。


 それから喫茶ミノタウルスで、お茶を飲んで休憩。

 庭園道付近に、石ベンチやゴミ箱を設置して、深魔の森方面の整備は終了。

 すでに夕方は過ぎ、太陽は完全に沈んでしまった。


 昨日沢山食べたせいなのか、今日は昼のクレープとアイスだけで1日持ってしまった。

 俺はソフィアと腕を組んで、魔導灯が照らす明かりの中を、魔王城8階の魔王の間に戻った。

 魔王の間の食堂で、昨日の残り物で夕食をとる。


 今日から3日間は祝日扱いなので、メイドはいない。

 そして俺とソフィアは部屋に入った。


 ここは俺が普段生活している部屋で、ベッド、ローテーブルとソファ、本棚があるだけのシンプルな部屋だ。

 俺達は横並びでソファに座る。



「ソール、今日は色々楽しかったね」


「ああ、しかしペダルボートは肝が少し冷えたぞ」


「フフッ、あの温泉凄かった。あんな大きなお風呂初めて」


「風呂上りの冷えたエールは美味かったなぁ、俺あんまエール飲まないんだけど」


「…………」


「…………」


 しばし無言。

 ソフィアは息を「ハァ」と吐いて、いきなり俺に抱きついた。

 潤ませた瞳で、俺を見る。


「ごめん。なんかあたし、色々限界だ」


「ソフィア……」


「結婚までは、と思ってたけど、あたし自分の気持ちを抑えられないよ。ソールが好き過ぎてつらいの」


 ソフィアの考えは、俺には意外だった。

 リリアにいた頃、そういう雰囲気になったことはあるけど、なんか怖がってる感じがしたので深くは進展しなかったのだ。


「あたしから言っていいのか分からないけど、ソール……」


「待て、ここからは俺が言おう」


 俺は人差し指をソフィアの唇に立て、ニコリと笑って言葉を繋ぐ。


「ソフィア。君の黒い瞳は闇夜に輝く星雲のよう。そのクリーム色の髪は、ゴールドトパーズの花。俺はその香りを感じながら、君に言葉にできなかった想いを抱えてきたよ。君を守りたい。君とひとつになりたい。天空の星屑の姫よ、どうか俺の気持ちを受け取って欲しい」


 俺はエヴァートンの台詞をベンチマーキングした言葉を伝える。

 ソフィアは頬を赤らめ、少し笑顔を浮かべて答えた。


「はい…… こんなあたしで良ければ」


チュッ


 最初は優しいキス。

 それからキスはどんどん激しくなり、舌を絡めあい、俺達は貪るように愛を確かめあう。


 ソフィアは俺に手をかけ服を脱がせる。

 俺もソフィアのワンピースを脱がせる。

 下着姿になったソフィアをお姫様抱っこでベッドに運び、隠されていた何もかもを俺は剥ぎ取った。


 唇を這わせる俺に、反応するソフィアの肌。

 上気した美しいソフィアの顔に、期待と興奮に満ちた黒い瞳が俺を見る。


「ああっ」


 俺はソフィアの小さな2つの丘の間に顔を埋める。

 そして頂点を口で転がした。


 ソフィアの体はビクンと反応し、徐々に切ない声を上げ始めた。

 それから俺は……



■以下、スペイン語でお楽しみください■



ギシッ


「ソフィア、ウサ・ラ・ボカ?」


「シ、シー……」



「ソフィア。ムイ・ビエン」


「ん、んふぅ…… むっ。んぷっ…… あっ、ああん、ソール」


「フフフ、ソフィア、エスタス・ウメダ」


「アイ・ケ・ベルグゥエンサ!」




「ソフィア、テ・キエロ。プエド・メテールラ?」


「ヤ・ダ……」


「シー」



「んああぁ! ソール。ソール。メ・エンカンタス!」



ギシッ ギシッ ギシッ



「ソフィア。アイ・ケ・リコ」


「あっ、あっ、ああっ!」


「ぐっ!」



ハア ハア ハア ハア


ギシッ



「ソール…… メ・ブエルベス・ロカ…… テ・ア・グスタード?」



「メ・ア・グスタード。ソフィア、テ・アモ……」


チュッ



    第47話 「魔王様、エクステリアに凝る」

   ⇒第48話 「魔王様、貿易計画を立てる」



リクエストがあったのでやってみました。

これでスペイン語ネタは最後とします。

詳しい内容は、活動報告に「第47話でのスペイン語参考資料」投稿しましたので、何を話しているか知りたい方は、そちらをご覧ください。



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