第46話「魔王様、赤面する」
レムノス島で焼いた森を整地していたら12月になったよ。
早いもので、リリアを出航してから、早5ヶ月目に突入。
俺達は一生懸命頑張ってるけど、予定からは2ヶ月ほど遅延している。
遅れはしかたないけど、このペースでは2年後に揃えられる戦力が不足するかも知れない。
まあ懸命にやるしかないな。
今日も俺は、スプリガン60名と森の整地をする。
といっても、徹底的に整地するのは南部だけで、その他は適当だ。
森の南は首都の敷地に入るからね。
11月28日~12月4日までかけて、森の整地は終了。
休みを挟んで12月6日から、首都の壁の建築を開始。
大きさは2千メートル×2千メートル。
首都の人口は3500人となる予定だが、建築速度をあげるため、オール平屋建てだ。
2千メートルの敷地は予想以上に大きい。
開拓村なら100個入る。
リリアの町なら2・5個ほどか。
2階建てや集合住宅を建てたら、1万人は住めるんじゃね。
オール平屋でも5千はいくだろう。
東京なら10万人は間違いなく住めるだろうなぁ。
こりゃアベルの奴、計算と予想が甘かったな。
まあいいや。
修正しているヒマは無い。
俺とスプリガン60名は、猛スピードで外壁を建て始める。
毎日毎日魔力が切れるまで作り続け、6日~11日で外壁工事は終了。
ついでに、首都の北の南に土壁を作って、川まで伸ばして魔獣よけも作った。
スプリガンはかなりのチート人材だった。
工事の進捗がかなり速い。
12日は休日だ。
俺は魔王船に戻り骨休みする。
10時くらいに起きて、メイドに作ってもらった朝食を食べる。
水筒に黒茶も入れてもらった。
それから司令の間でキャプテン・キッドやブレインとしばらく世間話。
ブレインを連れたって第6デッキに向かう。
魔王城の各所は、バトラメイドが固めていた。
受付ではジュマとヌリアが真面目に働いている。
俺は彼女達に挨拶して外に出た。
第6デッキのウェルドックで、マギアランチの確認。
すでに10トン級マギアランチ2艇は完成していた。
造船所では50トン級マギアランチ4艇を造船中だ。
うん。
なかなか萌え要素がある丸っこいカワイイ船に仕上がったな。
マギアランチ内をあれこれ見て回った俺とブレインは、第3デッキから魔王池方面に出た。
魔王池のほとりを歩いて、池の艦首側に到着。
池の艦尾側では、水魔妖精メアヴァイパーが、10人ほどの観客に水芸を披露していた。
手を池のほうにかざし、噴水のように池の水を真上に飛ばしていた。
何やってんだろ、あいつ。
何気なく見てると、メアヴァイパーがいる後ろの庭園道を、白いローブのシルキーが通り過ぎた。
艦尾側の円筒城壁に向かっているようだ。
巡回清掃なんだろうが、あいつは休むことは無いのかね。
俺は池から少し上がった丘のような場所に登る。
ここには朽ち果てたペンションのような建物がいくつかある。
ああ、ここも整備しなくちゃなあ。
とか考えながら、俺は廃屋の影に隠れるように座る。
人目につかないように休憩することにしたのだ。
たまには1人で落ち着きたいこともあるのさ。
いや、1人じゃなかったか。
隣にはブレインがいる。
婚約者達はメイドナイトを連れて迷宮に行ってるようだ。
俺はボーッと海とレムノス島を眺めた。
抜けるような青空に太陽の反射でキラキラ光る海。
カッター艇が2隻、その海で漁をしている。
俺は水筒の黒茶をコップに注いでゆっくり飲む。
黙っているブレインに話しかけた。
「ブレイン。退屈なら魔王城に戻ってもいいぞ。俺はしばらくここにいるから」
「いえ、私は魔王様と一緒にいるだけで楽しいです」
「いやいや、そんな顔で恋する女の子みたいな台詞を言われても」
「ハッ?」
と、2人の男女が目の前に突然現れた。
よく見るとエヴァートンとセレスティーナだ。
2人は何か話し込んでいる。
俺は廃屋の死角にいたので、エヴァートン達は俺達に気付いてないようだった。
「やはりチキータに話すのかい?」
「ええ、やっぱり…… ………… だから、ハッキリしたほうがいいですわ」
「そうだな。でもセレスはそれでいいの?」
「ええ、やっぱり私とチキータは、………… …………。だから平等に愛して下さいませ」
「その、ありがとうセレス」
あー。
所々聞き取れないが、なんか込み入った感じの話だな。
別に盗み聞きする気はないから、場所を移動しようか。
俺はコップを水筒にかぶせ、音がしないように立ち上がろうとした。
すると突然、エヴァートンの元に赤毛の女が走りこんできた。
チキータだ。
「何よ、また2人で内緒話して! そんなに私が邪魔なら、そう言えばいいじゃない!!」
チキータは涙目で大声を2人にぶつけた。
俺は脱出するタイミングを失った。
超弩級超重ゴーレム戦艦ヒューガ
⇒第5章 レムノス島開発編
「何よ、また2人で内緒話して! そんなに私が邪魔なら、そう言えばいいじゃない!!」
「何言ってるんだチキータ!?」
「そうですわよ。私達は別にやましいことなど」
「近寄らないでよ!」
おいおい。
いきなりなんだよ。
修羅場かよ。
俺向こうに行きたいのになぁ……
チキータは続けて大声で叫ぶ。
「そうやってセレスは、私の悪口をエヴァートンに吹き込んでるんでしょ! エヴァートンもエヴァートンよ!」
「ちょっと待て、チキータ。それは誤解だ。セレスは別にそんなこと言ってないよ。セレスに謝れ!」
「何よぉ、エヴァートンもセレスの肩ばっかり持って! 私なんか嫌いなんでしょ、分かってるわよ!」
「何言ってるチキータ。少し落ち着けよ。なっ」
「放してよ!」
エヴァートンはチキータの腕を掴み、チキータは引き離そうとしている。
ああぁ。
ここは冷静に話し合おうぜ。
て、この状況じゃ無理か。
「エヴァートンはセレスとヨロシクやってればいいのよ。2人とも嫌いよ、大嫌い! こんなパーティーやめてやるから!」
「待てよチキータ!」
パアァァン!
あ痛たぁー。
今のチキータの平手打ちは、綺麗にエヴァートンの頬に入った。
俺は思わず左頬を押さえた。
「ヒック、エヴァートンの馬鹿ぁ!!」
「チキータ!」
「ああ、待ってチキータ!」
チキータは泣きながら走っていった。
エヴァートンも走って追いかける。
セレスティーナは悲しい顔をして、2人を見送る。
これはなぁ。
少し時間を置いたほうがいいと思うよ。
今のチキータの状況じゃ、落ち着いて話し合うことなんか出来ないしね。
それにしても……
俺はてっきりエヴァートンのとこはハーレムだと思ってたが、どっちかと言うと三角関係だよね。これって。
それがついに限界に来て、はじけちゃったかぁ。
まあ俺は部外者だから何も言えないけど、ガンバレな、エヴァートン、セレスティーナ。
このことは誰にも言わないから。
俺は見つからないように、廃屋の影から外に出て歩き出した。
「しかし驚いたな。ブレイン」
「はい。大変驚きました。あそこまで関節に合理的な動きでの平手打ちは見たことがありません。あの赤毛の女は格闘の才能がありますな」
へっ!?
何言ってんだブレイン。
驚くところはそこじゃないだろう。
まあブレインに男女の心の機微を理解しろと言っても無理な話か。
こいつは言葉は喋るが、人間じゃないもんな。
「ところで、さっきのことは誰にも言うなよ。秘密だからな」
「魔王様の命令とあらば、たとえこの体がスライスハムになったとしても、誰にも喋りません」
なんかなぁ。
上手く表現しようとしてるのは分かるんだが。
どこかズレてるよなぁ。
コイツ。
それから俺達は、実家のキューブモダンに向かった。
誰もいないが、俺はここで昼食を摂ることにした。
最近のイレーネとアベルは、レムノス島に出ずっぱりなので、滅多にここには帰ってこない。
俺は台所にあった野菜と干し肉でスープを作り、パンと一緒に食べる。
デザートはヒューガ産のオレンジを食べた。
ブレインにもオレンジを2つやる。
一応食糧は足りてるんだけど、種類が少ないので、食事はワンパターンになりがちだ。
久しぶりにパエリア食いたいな、パエリア。
だが、米の生産量は多くはない。
ここは探索者と兵士たちの活躍に期待だな。
昼飯と休憩が終わった俺は、召喚の間に向かった。
休日なのに、ちっとも休んでない。
まあしょうがない。
ネットや本もないから暇つぶしもできないしね。
召喚の間について、俺は召喚宝典で候補を探す。
求めてる人材は、スプリガンみたいなチート人材ではなく、小回りがきく奴だな。
例えば、服や帽子、靴を作れる奴とか、料理が得意な奴とかの軽手工業関連。
下っ端の事務員、文官みたいなのも欲しい。
そんな感じで召喚種族を探していたら、理想的な種族を発見。
それは「獣魔ハムスター族」
おお、ハムスターかぁ。
懐かしいな。
子供の頃飼ったことがあるわ。
分類的には獣魔人族になる。
しかしこの世界には、ハムスター族なんていないぞ。
おそらく俺の記憶からアレンジされたのだろう。
詳細を見る。
●獣魔ハムスター族
体格は小柄。温厚な性格。
種類によって様々な技術を持っている。
ひまわりの種、野菜を好むが、基本的に雑食。
軽産業、軽工業向き
全種の特製 部屋に回し車を設置して、運動させないと精神が不安定になる。
種族スキル 頑丈歯
■ゴールデン種
人間並みの体の大きさ。
体力、腕力に優れ、肉体労働、戦闘に向いている。
■キンクマ種
人間並みの体の大きさ。
知力、教養に優れ、魔法師、文官に向いている。
■ジャンガリアン種
低身長で身が軽い。
単調な作業に強く、細かい手作業が得意。
生活雑貨、回し車を作ることができる。
■ロボロフスキー種
低身長で身が軽い。
針子の能力があり、服や帽子、靴を作るのが得意。
布を作ることもできる。
■パールホワイト種
低身長で身が軽い。
アクセサリーやピアスなど、
装飾品を作るのが得意。
■キャンベル種
低身長で身が軽い。
料理、酒の製造、接客が得意。
味覚が敏感。
いいねー。
さっそく召喚するか。
まずは少量、各種4名ずつで計24名召喚しよう。
召喚ボタンを押すと、5分間魔法陣が光って、ハムスター族が出現した。
あらカワイイ。
小柄で皆ちっちゃいな。
だいたい中1~3ぐらいに見えるが、これで成人らしい。
頭にはハムスター耳が、お尻には小さな尻尾が生えている。
服装は全員オーバーオールだ。
ゴールデン種、キンクマ種は他と比べて大きいが、小柄な体格だ。
身長は160程度、他の種は140~150ぐらいだ。
リーダーができると思われるキンクマ種に、かいと、ターボ、きなこ、エクレアと名前をつける。
名前を沢山書いた羊皮紙を渡し、あとは適当に名前をつけるように命じる。
いちごとかキャラメルとか、いかにもハムスターにつけそうな名前にしておいた。
「では、全員魔王城1階の従者居住区で生活してくれ、まずは回し車の設置だな」
俺は追加で回し車の材料と道具一式を召喚。
ハムスター族と一緒に、魔王城の1階の居住区に向かう。
「ブレイン。しばらくこいつらの世話を頼む。1週間ほどで回し車を設置、魔王城とレムノス島の案内等もだ。終わったら俺に報告してくれ」
「ハッ、了解しました」
一仕事終えた俺は、1人で再び魔王城の外に出て、深魔の森を散歩することにした。
今度こそ1人でぼんやり過ごすのだ。
俺は深魔の森の大木の影に腰を下ろす。
水筒からコップに黒茶を注ぎ、ゆっくりと黒茶を飲む。
すると、
「待てよチキータ!」
俺は思わず黒茶を吐き出しそうになった。
エヴァートンとチキータがこっちに走ってきたのだ。
「あっ」
エヴァートンがチキータの腕を掴んで捕まえた。
おいおい、またかよ。
2人の死角に入っているのか、俺は気付かれていなかった。
「なあチキータ。お前何か色々悩んでいることあるんだろ。だったら聞かせてくれないか?」
「エヴァー……トン」
「そりゃ俺じゃ分かんないかも知れないけど、少しは重荷を軽くすることが出来るかも知れないし」
「うっ…… あぁっ、ヒック、ううぅ……」
チキータは泣き始めた。
エヴァートンは軽く抱きしめてやる。
張り詰めた心が優しさに触れて溶けていく。
「うわああっ。ヒグッ、ヒッ、グスッ、うっ」
チキータはエヴァートンの肩に顔を押し付け、まるで子供のように泣きじゃくった。
しばらくして落ち着いてから、チキータは自分のことを少しずつ話し始める。
「ヒック…… 私にはね。お姉ちゃんがいるの。すごく優秀で、パパもママもお姉ちゃんばっかり褒めるの。うっ…… だから、だから私はいらない子なのよ」
「チキータ……」
「いらないから、政略結婚されられそうになったのよ。いっつもいっつも、私は比較されて……」
「いろいろ、つらかったんだな……」
エヴァートンはチキータの想いをそのまま受け入れた。
よしよし。
聞いててヒヤヒヤしたわ。
最悪なのは、そんなことはたいしたことは無い。
とか、君の親も心配だったんだよ。
とか言い出すことだ。
それは自分の意見であって、相手の感情を無視した発言だ。
そんなのは相手の話を聞いてるとは言わない。
ただ黙って相手に共感するのがベストの反応だろう。
まあ、エヴァートンならそうすると思ったが。
だが、これで話の筋はだいたい見えてきた。
チキータと姉はつねに親に比較されて育ったのだ。
だからチキータは姉にひどい劣等感を持っている。
人は無意識に親との関係を、周りの他人を使って再現しようとする。
だからチキータは、エヴァートンを親の代役として、セレスティーナを姉の代役として、親との関係性を連続再生していたわけだ。
これじゃ、エヴァートンと恋人関係になんかなれないな。
こういうパターンは、もしチキータが頭で理解していたとしても、感情反応はなかなか直らない。
よくある話さ。
地球でもこういう輩は掃いて捨てるほどいる。
たとえば掲示板で、湾曲した嫌味ぽいコメントを残したり、抽象的に「器が小さい」とか言って相手を攻め立てたりとか。
大抵は書き込んでいる本人が、親にいつも言われていることを、匿名のネットで無限再生している。
無意識に、書き込んでいる自分を親の代理に、ネットにいる人達を自分の代理にしているわけだ。
兄弟で色々比較されて心が歪むなんてのは、人格障害の黄金パターンだな。
だが、チキータ。
エヴァートンは君の親じゃないし、セレスティーナは君の姉ではない。
それじゃ自分が追い詰められるだけだ。
だから今の状況なんだろうが。
「わ…… 私はセレスみたいに凄い魔法を使えない。ヒック、だから役に立たないから、エヴァートンに嫌われる…… 分かってる……」
やっぱセレスティーナを姉に見立ててる。
彼女にひどい劣等感を抱いているわけだ。
しかし劣等であるということと、劣等感を持つというのは違うんだよ。
たとえば俺はチキータより遥かに魔力が多く、やれることも多いが、チキータは凄いと思っても、それ以外俺に何も感じてないはずだ。
俺と比べればチキータは「劣等」だが「劣等感」を持ってはいない。
その劣等感は、チキータが子供の時に、親に植え付けられたものだ。
そして姉を連想するセレスティーナで劣等感を無限再生する。
「何言ってるチキータ。俺は君を役に立つ、立たないで好きや嫌いになったりしないよ。仮に君が役に立たなくても、俺は君の事を好きであり続ける」
「えっ…… どうして?」
「ん、好きになるのに理由がいるのか? 俺は君の姿も、君の声も、ちょっとドジな所も、嫌味を言う所も好きなんだけど」
ああ、パパやママに褒めてもらうには理由が必要だったからな。
だがエヴァートンは君の親じゃない。
エヴァートンは君の長所も欠点も、そのまま受け入れてるんだよ。
チキータの考えを思い込みと言うのは簡単だが、感情に何度も刻まれたパターンだからな。
愛してくれていると頭で理解しても、感情はなかなかついて来ない。
18年で築いた性格は、18年かけないと修正はできない。
なぜなら人格とは、1年1年の積み重ねの結果だから。
「だ、だけど私、セレスにも酷い事言ったし、性格も曲がってるから、これを直さないと、エヴァートンとは付き合えないよ」
「だから今の君が好きなのに、なんで変わろうとするの? すぐに変われるの? それって性格だから無理だろ。だったらそのままでいいじゃん」
「でも…… でも……」
「どうしても変わりたいなら、じっくり時間をかければいいだろ。急いで変われ、なんて誰も言ってないよ。それまで俺は待つからさ。一緒にいようよ」
「エヴァートン…… 本当に、いいの?」
「ああ」
チキータの瞳から再び涙が溢れる。
尊敬するぜエヴァートン。
俺でもそこまでハッキリ断言できるか自信が無い。
こういう問題は時間が解決するにしても、異常に時間がかかるからな。
10年、20年単位の時間だ。
それを甘く見て、支えようとして失敗する奴は沢山いる。
だが、エヴァートンとチキータならどうだろう?
俺は上手くいく気がするが、楽観的に過ぎるかな?
「俺だって君に謝らなければならないことがある。俺はセレスとチキータが本気で好きなんだ。でも2人同時に付き合うのはどうなのか、と思ってね。だから君に内緒で彼女に相談してた。本当はチキータにも相談すべきだった。ごめん。謝るよ」
「そう、だったの……」
「セレスは言ったよ、自分とチキータを平等に愛してくれるなら、2人同時でも私はかまわないって。だから、だから凄く勝手だとは思うけど、チキータも俺に付き合って欲しいんだよ」
「セレスがそんなことを…… わ、私のことも、セレスと同じくらいに…… 愛してくれる?」
「ああ、命にかけて。俺はセレスとチキータを、同じぐらい愛することを誓う!」
3P宣言キター!!!
やった。
これでついに名実ともにエヴァートンハーレムの誕生だ!
エヴァートンは、チキータの肩を抱き寄せ、こう言った。
「チキータ。君の緑の目は、草原の深緑。その赤い髪は、草原に咲く一輪の薔薇。その薔薇は繊細で、手折ればすぐに枯れてしまう。ならば俺は風となって君を包み、すべての害悪から君を守る疾風となろう! 赤き薔薇の姫よ、どうか私の誓いのキスを受け取ってほしい」
「は…… はい。エヴァートン……」
チキータは泣き笑いながら、エヴァートンの想いを受け入れる。
2人はしばし見つめて、誓いのキスを交わした。
そして舌を絡めて、より深く愛を確認する。
お、おう。
ちょっとそのキスの仕方やらしいなぁ。
それにしても、チキータの緑目と赤髪に口説き文句を重ねてくるとは。
上手いなぁ、前から考えてたのかなぁ。
俺は心のパクリメモ帳に、さっきの誓いの文句を書き込んだ。
と、少し遠くの木の陰に金髪の美少女を発見。
セレスティーナだ。
彼女は涙を流しながら、2人を見て、うんうんと頷いていた。
あー。
いやなんだ。
別に俺は覗き見しようと思ったわけじゃないんだからね。
お前らが勝手にこっち来るのが悪いんだからな。
俺は水筒をしまい、ルーン魔法「影移動」で、こっそりその場を脱出した。
誰もいない実家のキューブモダンで、俺は一息つく。
なぜだか俺の顔面は火照っていた。
俺のハーレムも、他人から見たらあんな風に見えるんだろうか。
俺が今までやって来たことが、急に恥ずかしくなってきた。
しぼった濡れタオルで、俺は火照った顔をゴシゴシ拭いた。
さて、気を取り直して13日。
工事が完了した首都敷地内に、上水道 下水道 汚水処理施設を設置する工事を開始。
地面に計画に沿ってひたすら主線の溝を掘る。
溝を掘ったら、次は汚水処理施設だ。
浄化池を3つと、川への水路を作る。
構造は単純で、最初の浄化池から順に汚水を溜め、浄化の魔法をかけていく。
一定の水位に達すると、川に浄化された水が流れる仕掛けになっている。
これで7割ほどの水の浄化ができる。
と、この施設の設計図を書いたドワーフが言っていた。
水周り工事の俺の担当分は15日に終了。
後の雨水排水溝、石畳の道路、住宅建設、浄水・汚水の分線引き込みは、スプリガン60名に任せる。
俺は16日より、首都南東にある海岸に100トン級造船所を作る。
100トン級造船所では、最大180トンクラスまでの船を造船できる。
聞いたときはドッグ式造船所だと思ったが、そうではなく、引き揚げ船台方式なのだそう。
レールの上で船を作り、後ろ向きに海に放り込む方式だな。
映画とかで進水式とか派手にやるやつだ。
シードワーフが設計図を作り、俺はそのとおり建設していく。
敷地を整地して、木の大きなレール2本をシードワーフ監督の元設置した。
海側にやや斜めに設置し、船を海に送りやすくする。
引き揚げ船台なので、本来は大型魔導モーターを使用し、船を引き揚げるウインチを設置しなければいけないが、モーターがないのでほっておく。
造船計画では、最初はカッター艇を製造、こなれてから1トン級漁船を量産する。
時間を置かずに大量生産して、どんどん放り込むので、どうせ船を引き揚げるヒマはないだろう。
16日~22日で100トン級造船所は完成。
次は造船所の付帯設備、倉庫、事務所、居住区、桟橋を建築。
俺とシーエルフ、シードワーフの工事により、12月29日に付帯設備は完成。
こうしてエスパーニャ歴5541年は終わる。
今年後半はあっという間に終わってしまったなぁ。
第46話 「魔王様、赤面する」
⇒第47話 「魔王様、エクステリアに凝る」




