表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
超弩級超重ゴーレム戦艦 ヒューガ  作者: 藤 まもる
第4章 リリア侵攻脱出編
43/75

第33話「リリア脱出作戦! 迫り来る帝国(前編)」

エスパーニャ暦5541年 8月3日 7時

リリア方面防衛軍 陸軍基地


「北方向。距離、約9千メートル。高度三百メートル。アルコン偵察騎です!!」


 見張りの兵が叫んだ。

 太陽が昇り2時間が経過。

 住民が脱出準備を進める中、リリア上空にアルコン帝国の偵察機が現れたのだ。

 

「小型の艦載騎か。まだ陸上騎は来ていない。領都の方角。いよいよアルコンが動き出したか……」


 望遠鏡を見るマリオ司令が呟く。

 偵察竜騎は、シードラゴン。

 青い竜体に腕と2枚の翼がついている。


 ワイバーンは翼と足のみだが、ドラゴンは小さな腕がついているのが特徴だ。

 偵察騎がみるみるリリアに接近してくる。

 対空陣地から大きな声が響いた。


「対空戦闘。撃ちぃ~かた~始め!」


 ドンッ、ドンドンッ!


 対空陣地に据え付けられた、対空臼砲が次々と発射される。

 この砲撃を受けて、偵察騎は高度を上げて五百メートル近く上昇する。

 とても対空臼砲の攻撃は届かない。


 が、それでいい。

 アルコンにリリア領陸軍の士気が衰えていないことを示す。

 それが今回の行動の狙いだ。


 30分ほど継続して偵察を行なった竜騎は、翼を翻し北に帰る。

 8時、冒険者、探索者が総合ギルドから出て、行動を開始。




 各パーティーの動きは、昨日の打ち合わせどおり。

 冒険者パーティー「暁の斥候」がリリア北街道に、「白銀の射手」はリリア南街道。


 次に出発したのは「紅姫と疾風従者」だ。

 総合ギルドのサブマスター、ロッシと職員数名。

 組み立て式天幕、魔導通信機を積載した、2頭曳き荷車。

 それらを守りながら、一路、雑貨迷宮入り口に向かう。


 その後を追う様に「鋼鉄サークル」「戦歌の誓い」「炎熱の戦斧」が脱出路の警備の為に出発。

 街道に警戒線を張った。


 それから20分後、今度は探索者パーティーが出発。

 まず、魔王船待機組のパーティー3つ。

 「リリア信仰教会 探索会」「迷宮のランセ」「ドラゴン・シーカー」が魔王船に向けて出発。


 続けて、雑貨迷宮内の警備・案内を行なう為、「ガルデル会」「闘牛ギルド 迷宮互助会」「白薔薇乙女」「獣魔探索倶楽部」の4パーティが出発。


 リリアの町、南門にベテランで固めた「迷宮同盟」「魔族倶楽部」「リリア迷宮 主婦の会」「リリア迷宮探索 町内会」が集合。

 脱出民の警護のために待機した。


 最後に「リリア漁業組合 迷宮会」が、リリア漁港にて待機。漁船で先行して脱出する予定だ。




 8月3日 9時。

 リリア脱出作戦がスタートした。 


 持てるだけの荷物を持った避難民200名が、探索者達のガードを受けつつ街道を南下する。

 1組目は、冒険者、探索者の家族。各ギルド関係者の家族。役人の家族で構成される。

 次の脱出は2時間後だ。


 脱出作戦では、2時間おきに200名づつ避難民を魔王船に送り込む予定だ。

 これでおそらく混乱しないだろうが、皆初めての経験なので、予測は難しい。

 後で調整する必要が出ると思われた。


 町の南門では、すでに次の避難民200名の整列が行なわれていた。

 なお、各家庭で持ちきれない食料等は、領軍がすべて接収。

 貸し倉庫へ運んで、後で移送リングで魔王船に移送した後に、避難民に平等に分ける予定だ。





    超弩級超重ゴーレム戦艦ヒューガ

   ⇒第4章 リリア侵攻脱出編





「へぇー。ここが秘密の通路なのかぁ」


 探索者パーティー「白薔薇乙女」のリーダー、人間族の女剣士イライアが、ボス部屋奥にポッカリ開いた通路を見て驚いていた。


「では、拙僧達は行くぞ」


 魔王船待機組の「リリア信仰教会 探索会」「迷宮のランセ」「ドラゴン・シーカー」は、先に通路の中を進む。


「ほう。これほどのものとは……」


 先頭で通路を進みながら、リリア信仰教会の司祭、マンハリンは呟く。

 「リリア信仰教会 探索会」は、リリア教会の資金稼ぎ、お布施、神聖魔法師セディオス・マギアの育成などを目的とした探索者パーティーだ。

 剣士1名に、神聖魔法師6人という極端な編成だが、そのうち固定なのは、剣士と神聖魔法師3人だ。


 残りの3人の神聖魔法師は見習いで、教育、育成が終わると、皆それぞれ他パーティーや治療院等で活躍することになる。

 マリベルも一時期所属して、探索者の修行を積んでいた。



「これは、凄いなー」


 リリア信仰教会に続いて、5メートル四方の通路を下りながら「迷宮のランセ」リーダーのエヴァートンは嘆願の声を上げる。


「本当ですわね。まさか雑貨迷宮の地下がこんな風になっていたとは、思いもしませんでしたわ」


「魔獣はいないって話だけど、気をつけてよ」


 セレスティーナとチキータも、長大な通路をキョロキョロ見回しながら、先を進む。



 最後尾を進むのは、まだ探索者になって数ヶ月しか経っていないルーキー「ドラゴン・シーカー」だ。

 メンバーは平均15~16歳で、まだ皆、顔に幼さが残っている。

 男2人と女4人のパーティーで、人間族が5人、黒エルフの女1人の構成だ。


「ひょえ~。凄い長い通路だぞ。もう10分は歩いてるのに、まだ通路が続いてる。おっかねぇ~」


 リーダーである剣士シモンは、どんどん地下に降りていく通路を見て不安を感じる。


「もう。相変わらず怖がりなんだから……」


「リーダーのあんたがビビッてどうすんのよ」


 そんなシモンに、幼馴染の戦闘魔法師バトル・マギアエヴァと黒エルフの弓士リンダの突込みが入る。

 しかし、そんな彼らも不安な表情は隠せていなかった。



 コの字に曲がった長い長い通路を30分歩いて、3パーティーはようやく魔王船の入り口に到着。

 警戒しつつ中に入る。

 そこは、後ろの壁以外は何も無い、果てしも無い巨大な空間だった。

 あまりに巨大な空間に全員がポカンとした。



「ほう。ようやく来たか。お前達が先行した探索者パーティーだな?」


「誰だ!?」


 突然前方の暗がりから声がかかった。

 エヴァートンを始め、全員が武器を取る。


 そこには、杖を持った黒ローブを着た骸骨が立っていた。

 横にはスケルトン・ファイターが4体いる。


「デュフフフフ…… 我はリッチのディータ。魔王様の命令で出迎えに来た。避難民はここ、魔王船第4デッキにて受け入れる。6千人ほどいるそうだが、詰めれば全員入れるだろう。魔王様のご慈悲に感謝するのだな」


 その言葉を聞き、全員が驚く。


「むう、リッチか!」


「初めて見ましたわ!」


 とそこへ、エヴァートンが見たことのある人物達が現れた。


「避難作戦、いよいよ始まったのね!」


「おー。エヴァートン君久しぶり」


「あっ、マンハリン様。お久しぶりです」


 その人物達はパッツィ、ソフィア、マリベルだった。





 その頃、リリア避難民1組目が続々と雑貨迷宮に到着。

 階段を降り、迷宮下層へと進んでいた。

 

 11時、2組目の200名がリリアを出発。


 13時、3組目がリリアを出発。


「よし、アンカー巻上げ終了、出航!」


 13時。リリア漁港で出発準備を終えた、300トン級遠洋漁船4隻が次々に出港していく。

 針路は北西。パルマ島北を通過して脱出する計画だ。


 軍が予想するアルコン海軍が手薄な針路ではある。

 危険な海域に入る前に、魔王船に回収されるはずだが、果たして上手くいくのか。

 不安を抱えながらも、遠洋漁船4隻はリリアから離れていった。


 15時、避難民4組目。


 17時、避難民5組目。ここで約千名、リリアの住民の半分が避難完了。


「なかなか順調だな」


 朝の偵察以来、アルコンの動きもない。

 マリオ司令も胸を撫で下ろした。



 同じ頃、アルコン軍は、リリア北40キロにあるプリアナに到着。

 プリアナ町長は、白旗を振り降伏。

 プリアナの町は無血占領された。


 すでにプリアナの領兵と住民100名は抵抗を諦め、昨日のうちに内陸部に逃げ出していた。

 町の半分以上の住民は残ることに決めた。


 プリアナに仮設司令部を置いたアルコン軍は今までの情報を検討。

 リリアの領軍残党がまだ抵抗をする姿勢を見せていたため、領都に待機している竜騎部隊に連絡を取り、明日朝のリリア空爆を命令した。





 魔王船内では、第4デッキに次々に避難民がやってくる。

 ギルドや役所関係者は、輸送した荷物を運んだり、仮設トイレを作るのに忙しい。

 マリベルとマルガリータは、奥から順に避難民を誘導していた。


「ここが、第3グループの避難場所です。どうぞ」


「……ふう、やっと案内終わった。……思ったより時間がかかる」


 マルガリータは一息つき、水筒の水を一口飲んで、書類をめくる。

 と、後ろから声がかかった。


「マリベル、マルガリータ!」


 振り向くと2人のよく知る顔があった。

 友達のジュマとヌリアだ。


 マリベルとマルガリータは2週間前にジュマ達と一緒にお茶会をした。

 別に久しぶりというほどでもないが、今思い出すと、恐ろしいほど大昔に思えた。


「良かった、マリベルとマルガリータに会えて!」


「ここが魔王船の中なの? 凄く大きいわね。実際来ても信じられないわ」


 来たばかりのジュマとヌリアはキョロキョロと辺りを見回す。


「うん。本当に魔王船よ。ここに来たからにはもう安心よ」


 マリベル達はしばし会話に興じた。




 ソフィアは、役所が持って来た仮設トイレの資材を運んでいた。

 そこに突然、横から声が飛んできた。


「ソフィア!」


 ソフィアが横を向くと、ピンク色の髪の森エルフが走ってくる。

 領軍の制服を着ているが、顔を見てソフィアは笑みを浮かべた。


「あぁー。カルメーラじゃん。すっごい久しぶりー!」


「ホント久しぶりね。元気だった? 探索者になったって聞いたけど」


「うん。今じゃ剣士としてバリバリ活躍してるよ!」


 ソフィアが闘牛場で掃除の仕事を始めた同時期、カルメーラは領軍採用試験に受かり、しばらく領都の領軍に所属していた。

 訓練期間が終わって、カルメーラは数ヶ月前にリリアに配属されたのだった。

 ソフィアとカルメーラは実に3年ぶりの再会となった。


「それにしても、その制服カッコイイね。カルメーラはちゃんと領軍に入れたんだ。凄いね」


「まあね。私は先にここに来て、物資の警備をすることになったのよ。ところで噂を聞いたんだけど、ソフィア、あなたの彼氏って……」


「ああ、それはね……」


 ソフィアとカルメーラは、日曜学校の時のように、久しぶりの会話を楽しんだ。




 パッツィと弟達は、木材の仕切りを床に配置して、避難場所の区分を行なっていた。

 適当に殴り書きされた配置図をパッツィが見ていると、懐かしい声がかけられた。


「ん、パッツィかにゃ?」


 パッツィの猟師仲間で悪友の、獣魔猫族の娘タマラが声をかけてきたのだ。


「タマラ! 随分と久しぶりね!」


「本当だにゃ。パッツィが探索者を始めてから、ほとんど猟に来なくなったにゃ。ところで…… その左手の指輪は何かにゃ?」


「ぐっ、相変わらず目ざといわね。しかたない。分かってると思うけど、これはエンゲージリングよ」


「にゃ、にゃにい! あのパッツィが婚約! ダイヤモンド指輪にゃ。な、何瞳をキラキラさせてるにゃ。気持ち悪いにゃ!」


「あいかわらず一言多いわね。そうよ、私は将来を約束した素敵な男がいるの。さっさと羨ましがれ!」


「うにゃ~! パッツィだけずるいにゃ! あちきには春が来てないのに、パッツィが真夏のように眩しいにゃ!」


 その後もパッツィVSタマラの会話はヒートアップしていった。




 19時。

 リリア避難民5組目。200名が、薄暗くなった道を雑貨迷宮に向かって下る。

 道端には、冒険者が設置した魔獣よけのかがり火が燃えていた。


 雑貨迷宮入り口には天幕が張られ、臨時ギルドが設置されている。

 そこに付近に住んでいる、シーエルフの避難民が400名やって来た。


 村や集落の住民は、一度リリアに集合となっているが、雑貨迷宮付近のシーエルフの漁村2つの避難民は、直接迷宮に来るよう言われていたのだ。

 迷宮前は、一時シーエルフ避難民400名とリリア避難民200名でごった返す。

 サブマスターのロッシは、現状を魔導通信機を使って、リリアにいるホセに伝える。


 ホセとマリオ司令の協議により、7組目の避難は2時間遅らせて実行することになった。

 リリアの町には、ちらほらと外部の村からやって来た避難民も見えるようになってきた。




エスパーニャ暦5541年 8月3日 21時

封印洞窟 魔王船 司令の間


 司令の間の玉座に座った俺は、今、魔王船操典を読みふけっていた。

 暇なのもあるし、できるだけ早く魔王船の能力や全体像を把握したかったからだ。


 一度マリベルが司令の間に来て、現在の避難状況を教えてくれた。

 避難作戦は、順調に進んでいるとのことだ。



 俺が召喚可能な宝典類は「魔王船操典」「魔王船宝典」「召喚宝典」の3つだ。


 「魔王船操典」は、魔王船に関するあらゆる情報が載ったマニュアルだ。

 検索機能と辞典機能もある。


 「魔王船宝典」は、簡単に言うと、魔王船のステータスプレートみたいなものだ。

 現在の乗員の位置や在庫の確認。不足物の確認。

 被害、老朽化情報などなど。

 ヒューガと直結しており、リアルタイムで更新しているようだ。


 「召喚宝典」は、最初に使ったとおり、下僕をリストから召喚することができる。

 他には、外で作られた道具や設備も登録して、いつでもコピー召喚可能だ。



 んまぁ、このように非常に便利な宝典だが、一つ問題がある。

 それは「非常に見にくい」ことだ。


 文字が書いているページは、小さな文字でぎっしり埋め尽くされている。

 せめてもう少し、区分けや段落、改行をつけてもらいたい。


 リアルタイムでの乗員の位置など、開くと点と補足文字で埋め尽くされて、まるでクリスマスツリー状態だ。

 長時間見ていると頭が痛くなってきそうだな。


 ブレインに聞いてみると、表示の修正は不可能なのだそうだ。

 ブレインは、


「ふむ。その宝典の情報は、ヒューガの記憶や感覚器官から抽出されています。我々が見れば分かりやすい表示なのですが、お気に召しませんか?」


 と逆に聞いてきやがった。

 

 そういやそうだった。

 寄生魔獣の特技の一つに「意識の分割」があるのだ。

 複雑な情報には、意識を沢山分割して、同時並行的に処理するのだ。


 その特技を効率よく使う為には、できるだけ情報を一度に大量に見たほうが、寄生魔獣にとってはいいわけだ。

 ブレインやヒューガは、意識が一つしかない状態を経験したことが無いので、人間の認識方法がイマイチ分からない様子だ。

 だから「要点をまとめる」ということが出来ない。


 一気に大量の情報を処理できてしまうので、そもそも「要点とは何か?」ということが理解できないのだ。

 しかし喋る時は、俺の質問に答える形になるので、自然に要点がまとまる。


 今回、寄生魔獣がどんな風に情報を処理しているかが、だいぶ分かってきたので良かったが、これは後で問題になりそうな気がする。

 まあ今はいい。

 今は脱出のことだけ考えよう。

 キャプテン・キッドのほうで動きがあった。


「キャプテン・キッド様。現在のヒューガの状況。魔力浸透率62パーセント。コア表面温度112度です」


「コアを隔離して閉鎖、冷却せよ。海水注水を開始」


「閉鎖完了。コアに海水注水を開始!」


「キャプテン・キッド様。魔王城修復完了。第4デッキ修復完了。空調、及び魔導ランプ使用可能です」


「魔王城と第4デッキの空調、魔導ランプを起動」


「起動完了!」


 すると司令の間の壁や天井にある魔導ランプが光り輝いた。

 薄暗かった司令の間が、瞬く間に明るくなった。

 魔法の光なので、蛍光灯というより、白熱電球に近い色だな。


 天井からも機械音が聞こえて、ダクトから新鮮な空気がどんどん送られる。

 俺はダクト前に立ってみた。


 おおー。

 ひんやりして涼しい。

 これクーラーか?

 電車の弱冷房くらいだな。

 

 城内の湿気がどんどんなくなっていくのが分かる。

 すげー。

 ファンタジー世界でこんな文明的な経験ができるとは。

 マリベル達も今頃驚いているだろう。


 キャプテン・キッドは振り返り、俺に報告した。


「魔王様。出航準備、順調に進行中です。出航可能まで、残り約36時間です」





 23時より再びリリア住民の避難が再開された。

 23時、7組目200名が出発。


 翌8月4日、1時。8組目出発。

 3時。9組目出発。

 

 朝5時。

 太陽が登り始める頃、リリア住民最後の避難民、10組目が出発。

 これで、リリアの町の全住民2千名とシーエルフ400名の避難が終了した。


 残る避難民は、周辺の村や集落の約3600名。

 果たして、全員無事に脱出できるか。





エスパーニャ暦5541年 8月4日 7時

リリア方面防衛軍 陸軍基地


「北方向。距離、約8千メートル。高度五百メートル。アルコン騎!! 急降下攻撃騎6、爆撃騎6」


「来たか……」


「急降下攻撃騎3、爆撃騎3こちらに来ます。もう半分はリリアに向かっている模様!」


 マリオ司令は、望遠鏡で竜騎を確認する。

 爆撃騎は、赤い2枚翼のコードロン種というドラゴンだ。

 腹に時限式魔導爆弾、竜爆弾を装備している。


 急降下攻撃騎は、青色4枚翼のシードラゴン、アルセナル種だ。

 前翼の2枚は逆ガル型の特徴的な竜騎で、突入時には後方の翼2枚を展開してダイブ・ブレーキをかける。

 腹には、鉄甲炸裂弾を装備している。


「対空戦闘、用ー意!」


 領兵の絶叫が対空陣地に響く。


「急降下攻撃騎3、投弾体勢! 目標は海軍基地の模様!」


 アルセナル種は急降下を開始。

 後方2枚翼を展開、ダイブ・ブレーキをかけながら、独特の飛翔音を起こしつつ、キリのように突っ込んでくる。

 対空陣地は、陸軍基地付近にしかないので、攻撃を見ているしかない。


 急降下攻撃騎は3発の鉄甲炸裂弾を投下。

 目標は海軍基地の竜巣ドームだ。

 1発はドームを外れ、至近距離での爆発に止まったが、2発が竜巣ドームに命中。

 ドーム内部に突入した鉄甲炸裂弾が爆発し、ドームが半分吹き飛び、火災が発生した。


 だが領軍は落ち着いていた。

 すでにドーム内部にいた偵察騎10騎、ドラゴンドライバー12名は、付近の森に退避済みだ。

 今度は爆撃騎3騎が、陸軍基地に向かう。


 爆撃騎は高度600から竜爆弾3発を投下。

 1発は兵舎に命中。

 2発目は、食堂の至近距離に落ち、3発目は対空陣地に命中し、爆発して対空臼砲2門がひっくり返る。


 爆撃騎の攻撃はこれで終わらない。

 高度を100に落として、再び陸軍基地に向かってくる。

 爆撃騎はドラゴン。

 ブレス攻撃を行なうつもりだ。

 小型種は、日に2発のブレスを撃てる。

 陸上用の竜騎なら日に3発は撃つことが可能だ。


「対空戦闘! 撃ち~方~始め!」


 ようやく領軍が反撃を開始。

 爆撃騎に向け対空臼砲を打ちまくる。

 20連装対空投射機2基も攻撃を開始した。

 対空投射機は、風魔法で槍を空中に連続で打ち出す。

 

 だが、爆撃騎は高速で移動、加えて対空兵器の数も少ないので、当たることはなかった。

 爆撃騎は計6発のブレスを撃つ。


 1発は再び兵舎に命中、火災を発生させる。

 2発は通信所に直撃、瞬く間に大火災が発生する。

 しかし、基地員と魔導通信機は、指揮所地下の退避壕に移動させているため、通信は継続できる。


 1発は食堂に命中。火災発生。

 2発は対空陣地に命中。

 対空投射機1基と対空臼砲1門が火に包まれた。


 攻撃を終えた竜騎は次々に翼を翻し帰投していく。

 領軍基地は大きな被害を受けたものの、運良く領兵4名の軽傷で済んだ。


 その直後、もう一方のアルコン攻撃騎3、爆撃騎3がリリアに襲い掛かった。




    第33話 「リリア脱出作戦! 迫り来る帝国(前編)」

   ⇒第34話 「リリア脱出作戦! 迫り来る帝国(後編)」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ